【アスリートの原点】喜友名諒:金メダルに最も近い男のルーツは「空手発祥の地」沖縄。劉衛流の第一人者と出会い才能が開花

新競技の空手の「形」で世界選手権を3連覇中

東京五輪の新競技・空手の日本代表に内定し、金メダルが期待されているのが男子「形(かた)」の喜友名諒(きゆな・りょう)だ。架空の相手に対して、技の正確さや力強さなどを競うこの種目で、全日本空手道選手権で8連覇、世界空手道選手権で3連覇と、圧倒的な力を見せ王座に君臨する。競技を始めたきっかけ、そして師匠との出会いとは──。

全日本空手道選手権で8連覇中。すでに東京五輪出場を内定させている
全日本空手道選手権で8連覇中。すでに東京五輪出場を内定させている全日本空手道選手権で8連覇中。すでに東京五輪出場を内定させている

沖縄では空手を習うことが自然な流れだった

空手という競技は、かつて独立国だった琉球王国が発祥の地、ルーツのひとつとされている。その沖縄で1990年7月12日に生まれたのが、喜友名諒だ。

運動会で空手の演武があるほど深く根づく沖縄では、習い事としてこの競技を選ぶのは自然なことだった。喜友名も「友だちが習っているから僕も」と両親に頼み込み、5歳の時に空手との出合いを果たす。

沖縄東中学校に進学すると、空手部に所属してその才能を開花させていく。2年次には、全国中学生選手県大会で優勝、団体戦でも頂点に立った。そして翌年、3年次に運命的な出会いが訪れた。1984、86年、88年と世界空手道選手権の「形(かた)」で3連覇を果たし、沖縄の伝統空手の一つだった劉衛(りゅうえい)流を世界にアピールしたパイオニア的存在である、佐久本嗣男(つぐお)氏の指導を受けることとなったのだ。現在も師事する佐久本氏の道場で、トップレベルの選手たちの演技を目の当たりにした喜友名は大きな衝撃と刺激を受けた。

喜友名の演技の大きな特長は、「貫手(ぬきて)」という指先を真っすぐ伸ばし相手の急所を突く技だ。防御と攻撃を一体化させた細かい足の動きも持ち味とする。それらを可能にする筋肉、驚異の身体能力を師匠も絶賛。佐久本氏は「下半身が強いから、あれだけ上体が振れる。見ていてほれぼれする下半身」と話すが、当然、その裏には日々の地道なトレーニングがある。

2019年9月には空手プレミアリーグ東京大会で優勝(左から2人目)。世界屈指の実力を持つ
2019年9月には空手プレミアリーグ東京大会で優勝(左から2人目)。世界屈指の実力を持つ2019年9月には空手プレミアリーグ東京大会で優勝(左から2人目)。世界屈指の実力を持つ

大学入学以降、全国大会で表彰台の常連に

高校はボクシングの世界チャンピオン・具志堅用高氏を輩出したスポーツの強豪校、興南高等学校に進学した。3年次には得意の「形」でなく、相手と実際に対戦する「組手」でも全国高等学校総合体育大会(インターハイ)の沖縄県代表に選ばれるなど、その能力を遺憾なく発揮していった。

沖縄国際大学に入学後、2011年には3年生で全日本学生空手道選手権で優勝、全日本選手権で準優勝と一気に名を上げた。2012年からは国際大会でも活躍し、数々の外国人選手と戦って経験を積んできた。

実は空手は柔道に比べ、護身術としての普及に伴い、世界的な競技人口が多い。それだけに頂点に立つのは非常に困難だとされている。しかし喜友名は今や、世界中の空手愛好家からも「レジェンド」として知られる存在だ。力強い眼力で目を見開いて気合を込める姿から「KABUKI」というニックネームもつけられている。

今でも沖縄で練習を続ける喜友名にとって、東京五輪は故郷にオリンピックのメダルをもたらす絶好の機会と言っていい。2019年2月に永眠した母の紀江さんに吉報を届けたい思いも強いだろう。

「僕たちは普段の生活、練習から沖縄の風土を感じている。自分たちが空手というスポーツの本家だという強い気持ちがある」。空手界の「生けるレジェンド」は、最高の舞台で自分のルーツを誇り高く世界にアピールする。

2019年の空手プレミアリーグ東京大会では団体戦も制覇(右から2人目)。目を見開いて気合を込める姿から「KABUKI」という異名をとる
2019年の空手プレミアリーグ東京大会では団体戦も制覇(右から2人目)。目を見開いて気合を込める姿から「KABUKI」という異名をとる2019年の空手プレミアリーグ東京大会では団体戦も制覇(右から2人目)。目を見開いて気合を込める姿から「KABUKI」という異名をとる

選手プロフィール

喜友名諒(きゆな・りょう)

空手家 種目:形

生年月日:1990年7月12日

出身地:沖縄県沖縄市

身長/体重:170センチ/78キロ

所属:劉衛流龍鳳会(りゅうえいりゅうりゅうほうかい)

オリンピックの経験:なし

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