【アスリートの原点】土井杏南:ロンドン五輪には16歳の若さで出場。「消えた天才」は東京五輪へ向けた復活を期す

高校1年生で全国3冠を達成した天才スプリンター

中学生にして 「天才少女」として注目を浴びるようになった土井杏南(どい・あんな)。彼女の躍進はとどまらず、高校2年次には戦後最年少記録でロンドン五輪に出場した。武器であるスタート時のスピードには、幼少期に習った空手や国立科学センターで積んだトレーニングが影響している。

16歳の時にロンドン五輪の舞台に立った。女子4×100mリレー予選第1組に第1走者として出場
16歳の時にロンドン五輪の舞台に立った。女子4×100mリレー予選第1組に第1走者として出場16歳の時にロンドン五輪の舞台に立った。女子4×100mリレー予選第1組に第1走者として出場

16歳351日でロンドン五輪に出場した天才少女

土井杏南(どい・あんな)の名前が世間を騒がせたのは、2012年6月に行われた日本陸上競技選手権大会だった。

土井は女子100メートル走で日本記録保持者の福島千里に次ぐ2位に入り、4×100メートルリレーの日本女子代表メンバーに選出される。2012年、日本陸上では戦後最年少記録となる16歳351日の若さでロンドン五輪に出場した。突如として現れたニューヒロインは、日本中の期待を背負うこととなった。

もっとも、陸上界において彼女が頭角を現したのはもっと早く、中学時代には「天才少女」として陸上関係者やメディアの間で知れわたっていた。朝霞第一中学校の陸上部に所属していた土井は、中学2年次に出場した全日本中学校陸上競技選手権大会の100メートルで11秒89の好タイムをマークして優勝を果たす。翌年の同大会では11秒61の中学新記録を樹立し、同種目の連覇を達成した。

スポーツの名門、埼玉栄高等学校に進学後も彼女の躍進は止まらなかった。高校1年で全国高等学校総合体育大会、日本ジュニア・ユース陸上競技選手権大会、国民体育大会の100メートル走で3冠を達成。そして2年次、前述のとおり五輪代表権を手にしてみせた。

予選で1走を担ったロンドン五輪の4×100mリレーは、日本女子にとって1964年東京五輪以来48年ぶりの出場だった
予選で1走を担ったロンドン五輪の4×100mリレーは、日本女子にとって1964年東京五輪以来48年ぶりの出場だった予選で1走を担ったロンドン五輪の4×100mリレーは、日本女子にとって1964年東京五輪以来48年ぶりの出場だった

空手で培った体幹の強さが武器に

1995年8月24日に東京都で生まれた土井が陸上競技に興味を持ったのは小学4年生の時。5、6年生が出場する全国小学生陸上競技交流大会を偶然テレビで見て、もともと走るのが得意だった彼女は「自分も出てみたい」と触発された。すぐに父親に相談し、小学5年生から陸上クラブに通い始めた。

すると、黙々と努力を積み重ねることを得意とする彼女の才能は瞬く間に開花した。6年次には全国大会で決勝に進出。しかし、決勝のレースではわずか0.02秒差で優勝を逃したことが、「もう負けたくない」と彼女の闘志を燃やした。

全国的に脚光を浴びることとなった中学時代は、毎年顧問が変わったこともあり、中学生ながらに練習メニューを自主的に考えて取り組んだ。進学先の埼玉栄高は、練習環境が整っているだけでなく、顧問の清田浩伸監督が個人の意志を尊重する指導スタンスをとってくれたこともあり、彼女の成長速度は一層、加速していった。

土井が走る時、姿勢が崩れない要因が大きく2つある。一つは、小学生時代、陸上を始める前に空手を習っており、体幹が鍛えられていたこと。もう一つは、高校入学後、オフ期間を利用して東京の国立スポーツ科学センター(以下JISS)でトレーニングを積んだこと。JISSではお尻の周りなど、ランニングで使用する筋肉群の補強運動に取り組み、武器であるスタート時のスピードに磨きがかかった。

ロンドン五輪後は度重なるけがに苦しみ、リオデジャネイロ五輪の出場を逃すと、「消えた天才」とも呼ばれた。

しかし今、土井は消えるどころか、あらためて存在感を見せつけている。2019年4月の織田幹雄記念国際陸上競技大会では11秒64で3位。同年6月の布勢スプリントでは4年ぶりとなる11秒5台を記録し、同月の日本陸上競技選手権大会で11秒72のタイムで2位の成績を残した。9月の全日本実業団対抗陸上競技選手権では11秒74で久々の優勝を果たしている。

東京五輪を目前に控えた今、「消えた天才」は再び輝きを取り戻そうとしている。完全復活に向けて、土井杏奈はさらに加速していく。

2019年6月の日本選手権は準決勝を11秒60でトップ通過。ロンドン五輪以来となるオリンピック出場に向け、加速を上げている
2019年6月の日本選手権は準決勝を11秒60でトップ通過。ロンドン五輪以来となるオリンピック出場に向け、加速を上げている2019年6月の日本選手権は準決勝を11秒60でトップ通過。ロンドン五輪以来となるオリンピック出場に向け、加速を上げている

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