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【アスリートの原点】寺田明日香:元陸上選手の母のDNAを受け継ぎ、10代から他を圧倒。高校時代はインターハイの100Mハードルで3連覇

6年ぶりに陸上競技へ復帰し、東京五輪ファイナリストを目指す

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

100メートルハードルで日本陸上競技選手権大会3連覇、結婚、出産、7人制ラグビーへの転向、そして6年ぶりの陸上復帰後に100mハードルで日本記録更新。寺田明日香の半生は密度が濃い。元陸上選手の母に支えられ、そして現在は自分が母として陸上競技に打ち込む背中を娘に見せる。一回りも二回りもタフになってトラックへ戻ってきた「ママさんハードラー」の原点を紹介する。

社会人2年目の2009年8月には、ベルリンで行われた世界陸上の100mハードルに出場した

最初のコーチ、元陸上選手の母の方針は「アドバイスしないこと」

1990年1月14日に北海道札幌市で生まれた寺田明日香は、オリンピックイヤーに30歳の節目を迎えた。

陸上選手だった母の影響で、陸上と出会ったのは小学4年生の時。その前年の小学3年次に両親が離婚し、環境の変化もあった。寺田と妹は母方の実家に引き取られ、それまで専業主婦だった母親は仕事を掛け持ちして働くようになったという。

当時の寺田は、水泳やソフトテニスなどさまざまな習い事に通っていた。経済的負担も小さくない中、そのまま続けさせてくれた母親には心から感謝していると振り返ったことがある。

168センチの長身を誇る寺田は、幼いころから背が高かった。リーチが長く、運動会でも足が速かったことから、母と祖母の勧めで地元の陸上競技大会に出場した。最初のコーチはそのまま母が務め、毎晩のように公園で2人きりのトレーニングに励んだ。

当時の母の指導はかなり厳しかったが、小学5年次から地元の陸上クラブに所属すると、一切母は口を出さなくなった。寺田が大人になってから母は「クラブに入ったからにはお任せする。余計なことは言わない」と明かしたという。この適度な距離感のおかげで、寺田は過度なプレッシャーを感じることなく、クラブでの練習に集中できた。そして小学5、6年次には全国小学生陸上競技交流大会の100mで2位に輝くこととなる。

2011年10月のアジア競技大会では13秒29のタイムで、5位入賞を果たした(右端)

史上最年少で日本選手権の100mハードルの頂点に

順調にその才能を開花させると、北海道恵庭北高等学校の陸上部で種目転向を図る。本格的にハードル走に取り組み始め、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)では女子100mハードルで史上初の3連覇。さらに高校3年次には100m、4×100mリレーと合わせて3冠という偉業を成し遂げた。

高校卒業後も快進撃は止まらない。社会人1年目の2008年、史上最年少で日本陸上競技選手権大会の100mハードルの頂点に立つと、翌2019年、19歳の時には13秒05という日本ジュニア記録を打ち立てて日本選手権で2連覇。その後は世界選手権代表の座も勝ち取り、日本選手権3連覇を成し遂げ、順風満帆な競技生活が続いていくかに見えた。

しかし、その後は度重なるケガに加え、摂食障害にも悩まされ、思うような記録を出せなくなってしまう。心身ともにバランスを崩し、さらなる飛躍を嘱望されながら、2013年に23歳で陸上競技からの引退を決断する。「ピークは19歳の時」という自身の思いも周囲から声も、完全に払拭できなかった。

結婚、早稲田大学への入学、出産、そして7人制ラグビーへの転向。陸上競技から離れた彼女にはさまざまな転機が訪れたが、東京でのオリンピック開催が決まったことが、陸上競技への情熱に再び火をつけた。

そして「母親としてオリンピックに挑戦する姿を見せたい」と、2018年12月にハードル種目への復帰を決意する。 6年ぶりの復帰ながら、2019年9月の競技会で12秒97の日本記録を出して周囲を驚かせた。日本女子の100mハードルでは19年ぶりの記録更新で、初の12秒台だった。

「東京でファイナリストになりたい」。山あり谷ありの人生を歩んできた寺田明日香は、愛娘の応援を原動力に19歳の時の自分を超える。

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