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梶原悠未は母と二人三脚で金メダルへの道を歩む──自転車競技の世界女王の原点は水泳にあった【アスリートの原点】

小学生時代は全国レベルの水泳少女として活躍

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

梶原悠未(かじはら・ゆうみ)は、2020年2月から3月に行われたUCI(国際自転車競技連合)トラック世界選手権の女子オムニアムで、日本人女子として初の金メダルを獲得。その後、Tokyo 2020(東京五輪)の出場内定も手にした。オリンピックの開催延期が決まったものの「強化するための時間ができた」と笑顔で前を向く梶原の原動力は、苦難をともに乗り越えてきた母の存在だった。

梶原(先頭)が参戦するオムニアムは一日のうちに異なるタイプの4レースを行って順位を決める自転車競技。瞬発的なスピードを求められるものもあれば、持久力で競うものもあり、総合力が求められる

中3で味わった挫折がターニングポイントに

梶原悠未は埼玉県和光市出身、1997年4月10日生まれの自転車トラックレーサーだ。

現在は筑波大学大学院に所属する梶原。彼女の得意としている種目が、オムニアムだ。1日のうちに異なる4種類のレースを行い、ポイントで順位を決める種目で、一瞬のスピードを求められる場合もあれば、持久力が試される局面もあるなど、総合力が求められる。日本人女子として初めてマイヨ・アルカンシエル(世界王者ジャージ)をまとう梶原だが、自転車競技との出会いは遅い。それは筑波大学附属坂戸高校に入学した後のことだった。

自転車競技に出会う前、梶原は1歳で始めた競泳に打ち込んでいた。小学4年次には全国大会に出場できる実力をつけ、北島康介が北京五輪で見せた圧巻の泳ぎに魅了されてからは、母・有里さんと親子そろって「オリンピック出場」という夢を抱き始めた。しかし中学3年次の関東大会は2位に終わり、全国大会出場の夢は断たれた。「競泳でオリンピックは目指せない」と思い知らされた気がした彼女は、何日も泣き続けたという。そんな悠未に母が掛けた言葉は、意外なものだった。

「何か重要なことを神様が伝えているんじゃないのかな?」

この言葉は、競泳一筋だった悠未の運命を大きく変えるキッカケになった。

2020年2月、ドイツで行われたトラック世界選手権で優勝。日本女子自転車史上初の世界女王として東京五輪に挑む

自転車競技開始からわずか10カ月で全国制覇

高校進学。自転車競技との出会いに、梶原は心を動かされた。中学時代、駅伝メンバーに選ばれた経験から陸上部も考えたが、顧問の安達昌宏先生の意欲的な指導に興味をもち、自転車部を選択する。最初のうちはシューズをペダルに固定して漕ぐという基本動作にも四苦八苦したが、0.1秒を争う水の世界と違い、レースの仕方次第では一気に5秒前後もタイムが縮まる自転車レースの世界へ、次第に魅了される。すると幼いころに培われた負けず嫌いな性格、そして持ち前のストイックさで、頭角を現す。

競技開始からわずか2カ月後には全国高等学校総合体育大会(インターハイ)出場を決める。10カ月後の全国選抜大会では、出場した3種目全てで頂点に立った。さらに翌2015年のジュニアアジア選手権ではロード、トラックなどで5冠を達成する。

梶原のもとには、全日本大学対抗選手権自転車競技大会(インカレ)で実績を残している大学からの誘いが来るようになる。しかし、彼女が選んだのは、自転車競技の強豪ではない筑波大学だった。「世界一を目指すための環境を自分で作れると思ったから」と、その理由を語る。

自らトレーニングメニューを考える悠未を支えるのは、母の存在だ。国内のレースには全て帯同し、マネジメント業務も担当しながら、練習ではオートバイで並走する。同じ夢に向かって歩む2人の絆は、さらに強固となっていく。

選手プロフィール

  • 梶原悠未(かじはら・ゆうみ)
  • 自転車トラックレース選手
  • 生年月日:1997年4月10日
  • 身長/体重:155センチ/56キロ
  • 血液型:O型
  • 出身校→和光山中(埼玉)→筑波大坂戸高(埼玉)→筑波大(茨城)
  • 所属:筑波大学大学院
  • オリンピックの経験:なし
  • Twitter(ツイッター):梶原 悠未 KAJIHARA YUMI(@Yumi_Kajihara)
  • Instagram(インスタグラム):梶原 悠未 KAJIHARA YUMI(@yumi_kajihara)

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