【アスリートの原点】相澤晃:「マラソン王国」福島県で生まれ育ち、東京五輪銅メダリスト円谷幸吉の意志を継ぐ

同郷のライバル阿部弘輝と「円谷ランナーズ」で切磋琢磨
東洋大時代は学生最強ランナーとして名を馳せた相澤晃
東洋大時代は学生最強ランナーとして名を馳せた相澤晃東洋大時代は学生最強ランナーとして名を馳せた相澤晃

相澤晃は2020年の箱根駅伝でエース区間の2区を走り、 「不滅の記録」と称されてきたメグボ・ジョブ・モグス(山梨学院大学)の区間記録を更新した。「学生最強ランナー」は今春、東洋大学を卒業して旭化成陸上部で競技を続ける。東京マラソンの出場を回避したのは目標を果たすため。めざすは1万メートルでの東京五輪出場だ。

地元クラブの「円谷ランナーズ」で陸上を始める

相澤晃は1997年7月18日に福島県須賀川市で生まれた。福島県は大八木弘明(駒澤大学監督)、酒井俊幸(東洋大学監督)、今井正人、柏原竜二ら多くの長距離ランナーや指導者を生んだ「マラソン王国」として知られている。

地元の須賀川市は、1964年の東京五輪男子マラソン銅メダリスト円谷幸吉(つぶらや・こうきち)の出身地でもある。彼の名を冠した「円谷ランナーズスポーツ少年団」という陸上クラブに相澤は小学生のころに入部し、本格的に陸上競技に取り組んだ。

須賀川市には「円谷幸吉メモリアルマラソン大会」や「円谷幸吉メモリアルホール」があり、円谷は地元の人々にとって知らない人はいない英雄だ。「円谷ランナーズ」は「第二の円谷」の発掘を目的として発足したクラブで、相澤は「楽しんで走れば自分の力を最大限に出せること」を学んだ。

相澤少年がめきめきと力をつけていく背景には、中学時代に出会ったチームメイト、阿部弘輝の存在がある。今春より住友電工所属となる阿部と一緒に通った長沼中学校には陸上部がなかったため、2人とも野球部に所属しながら「円谷ランナーズ」で陸上競技に励み、しのぎを削りあった。相澤は中学3年次の全国中学校体育大会で、3000メートル走で10位入賞の成績を残している。

相澤が生まれ育った須賀川市は円谷幸吉(右端)の出身地。1964年の東京五輪マラソンで銅メダルを獲得した英雄の存在もあり、陸上競技が盛んだ
相澤が生まれ育った須賀川市は円谷幸吉(右端)の出身地。1964年の東京五輪マラソンで銅メダルを獲得した英雄の存在もあり、陸上競技が盛んだ相澤が生まれ育った須賀川市は円谷幸吉(右端)の出身地。1964年の東京五輪マラソンで銅メダルを獲得した英雄の存在もあり、陸上競技が盛んだ

中距離ランナーのようなメニューが強さの土台

中学卒業後は、阿部とともに地元にある学校法人石川高等学校へ進学した。「ガクセキ」という名でも知られる長距離の名門校だ。

「ガクセキ」時代の恩師の松田和宏氏は、かつて中央大学の箱根駅伝総合優勝に貢献にした経歴を持つ。彼のもとで取り組んだ独特のトレーニングが、相澤の強さの土台となっている。

学法石川高校のトレーニングはロードを走ることはほぼなく、駅伝の大会前でもトラックでのスピード練習ばかりだった。たとえば1000メートル×5本のインターバル走を「2分40秒」という速いペースで実施したり、400メートル×2本を全力で走るだけの日があったりと、まるで中距離ランナーのようなメニューだ。「スピードや神経系の力は若いうちにしかつかない」と考える松田監督は、教え子が高校卒業後に大きく成長するよう先を見据えた育成方針を取っている。

高校時代の相澤は、ケガで3年間のうち半分近くを棒に振り、全国高等学校総合体育大会、通称インターハイにも出場することができなかった。それでも高校3年次には5000メートルで13分台と全国トップレベルのタイムをマークし、阿部、1学年下の遠藤日向(現・住友電工)とともに高校陸上界注目トリオとして名を馳せた。

松田監督の狙いどおり、相澤は大学進学後、持久系のトレーニングに注力して飛躍を遂げた。ユニバーシアード大会のハーフマラソン金メダルや箱根駅伝での大会MVP受賞など輝かしい功績を残す。「学生最強ランナー」と呼ばれるまでになった男は今、地元の英雄、円谷幸吉が輝いた東京五輪の舞台に向かって走っている。

選手プロフィール

相澤 晃(あいざわ・あきら)

中距離走者/長距離走者

生年月日:1997年7月18日

出身地:福島県須賀川市

身長/体重:178センチ/62キロ

所属:東洋大学(2020年4月から旭化成陸上部)

オリンピックの経験:なし

ツイッター:相澤 晃 (@RunningSukagawa)

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