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【アスリートの原点】羽生結弦:ぜんそくを治すために始めたスケート。東日本大震災被災経験が芯の強さに

幼少期から容姿端麗で、4歳のときに姉が通うスケート教室へ

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

オリンピックで2大会連続金メダルを獲得し、長い手足と端正な顔立ちから「銀盤の貴公子」との呼び声の高い羽生結弦(はにゅう・ゆづる)。今でこそ絶対王者の称号を手にした彼だが、幼少期はぜんそくに悩まされ、16歳で経験した東日本大震災発生時には競技を続行するか否かの壁にぶつかっていた。

小学4年生の時にノービスの全国大会で初優勝を遂げて以降、数多くのタイトルを手にしてきた

姉に負けじとジャンプやスピンに挑戦

世界トップレベルに君臨する銀盤の貴公子は、1994年12月7日に宮城県で生まれた。父親は中学校の教員で、母親は専業主婦、そして4歳年上の姉がいる。

羽生結弦(はにゅう・ゆづる)は幼少期から容姿端麗で、女の子に間違えられることもあったという。同時に野球をやっていた父の影響からボール遊びが大好きで、明るく元気な少年に育った。

フィギュアスケートとの出合いは4歳の時。スケート教室に通っていた姉の練習についていったのがきっかけだったが、羽生には大きな目的があった。それは、生まれつき抱えていた「ぜんそく」を克服することだった。スケートは屋内スポーツであり、氷の上ではほこりを吸い込むリスクも少ないことから、ぜんそくの治療に向いていた。

羽生少年の成長を促したのは、持ち前の負けず嫌いな性格だった。姉をまねて果敢にジャンプやスピンに挑戦し、何度転んでも起き上がる芯の強さを備えていた。小学4年生の時に、ジュニアより下のノービスの全国大会で初優勝を遂げると、中学1年次には、ノービスの選手にもかかわらず、全日本ジュニア選手権で3位入賞を果たした。

フィギュアスケートで大成する予兆をのぞかせていた一方で、両親は息子がスケートだけの人間にならないよう、口酸っぱく説いてきたという。羽生少年は見事に文武を両立し、学校では優れた成績を維持していた。

東日本大震災の翌年、2012年春には世界選手権で銅メダルを獲得(右端)。世界初挑戦ながらしっかり結果を残した

東日本大震災発生を機に心に変化が

シニアデビューを果たしてほどなく、当時16歳の羽生にとって、人生を揺るがす大きな出来事があった。

2011年3月11日の東日本大震災だ。震災発生時にアイスリンク仙台で練習を行っていた羽生は大きな揺れを感じると、スケート靴を履いたまま屋外へ飛び出した。仙台市内の自宅も被害を受けたため、家族4人で4日間、避難所生活を強いられた。

羽生が通っていたアイスリンク仙台は、氷が解けて水浸しになり、練習できない状態になってしまった。震災から10日がたって、羽生は使用可能なリンクを転々とする生活を始める。しかし、練習時間をもらっても、なかなか気持ちが乗らなかったという。自分はスケートを続けていいのか──。

2012年11月、地元の宮城で行われたNHK杯国際フィギュアスケート競技大会では見事金メダルを手にしてみせた

悩む羽生の背中を押したのは、同じ東北高校に在学する野球部の選手たちだった。彼らは避難所でボランティア活動に励みながら、選抜高等学校野球大会に出場した。震災から約2週間後に行われた初戦で0−7の敗退を喫したが、被災地の人々に勇気を与える彼らの姿に羽生も力をもらった。

その後も余震の影響が出るたびに精神面が揺らぐことはあった。それでも、高橋大輔や荒川静香らとともにチャリティーショーに出演するなど、スケートを通じた復興支援に積極的に参加した。

「自分にできることはスケートだけ。スケートを通して少しでも多くの人に勇気を与えられればいい」

競技を続けられるありがたみを知っていることこそ、羽生を支える軸であり、芯の強さとなっている。

震災を乗り越えて夢を実現させた羽生結弦

羽生結弦は2011年に日本を襲った津波と震災のもたらした悲劇を乗り越え、オリンピック連覇を成し遂げた。

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