【アスリートの原点】鈴木亜由子:マラソンの東京五輪切符をつかんだ才色兼備のランナーは中学時代まで「バスケのほうが好き」だった

バスケ部に所属しながら、「中学最強ランナー」と称される

鈴木亜由子は2019年9月に行われたマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で2位に入り、東京五輪の女子マラソン日本代表に内定した。トラック種目でリオデジャネイロ五輪に出場している鈴木の強さは、ケガを乗り越え、愚直に努力を重ねることができるメンタル面だ。

もともとは 5000M、10000Mを主戦場としていた。2015年の世界陸上競技選手権大会では5000Mで9位の成績
もともとは 5000M、10000Mを主戦場としていた。2015年の世界陸上競技選手権大会では5000Mで9位の成績もともとは 5000M、10000Mを主戦場としていた。2015年の世界陸上競技選手権大会では5000Mで9位の成績

中学時代の夢は「体育の先生」

座右の銘は「得意淡然 失意泰然」。うまくいっている時は淡々と、うまくいかない時はゆったりと、という生き方を胸に刻む。

鈴木亜由子は旧帝大出身の才色兼備ランナーとして人気を集めている。2019年、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で東京五輪女子マラソン代表に内定して脚光を浴びるようになったが、陸上を始めたばかりのころは、自身が陸上一本で生活する姿を想像することができなかった。

1991年10月8日に愛知県豊橋市で生まれた鈴木は、小学校から中学校にかけて豊橋陸上クラブという地元のクラブに入って競技に取り組んでいた。同時に小学校時代はミニバスケットボールも経験。中学時代は学校に陸上部がなかったためバスケットボール部に入部した。

2つの競技を並行しながら出場した第32回全日本中学陸上競技選手権で、鈴木は800メートルと1500メートルを圧倒的な速さで制して頭角を現す。中学時代のベストタイムは800メートルが2分8秒、1500メートルで4分24秒。3000メートルでは中学歴代2位の9分10秒をたたき出し、「中学最強ランナー」との呼び声もあがった。

全国中学校体育大会で3度の優勝を果たしても、「陸上よりバスケのほうが好きです。将来の夢は体育の先生」と答えていた鈴木。中学卒業時には多くの強豪校からスカウトが押し寄せたが、鈴木は地元の進学校、時習館高等学校に入学し、自分のペースで記録に挑戦する道を選んだ。

リオデジャネイロ五輪を経験。10000Mはケガで欠場し、5000Mは予選敗退に終わった
リオデジャネイロ五輪を経験。10000Mはケガで欠場し、5000Mは予選敗退に終わったリオデジャネイロ五輪を経験。10000Mはケガで欠場し、5000Mは予選敗退に終わった

高校時代は2度の疲労骨折でケガに泣く

鈴木が本格的に陸上を始めるきっかけとなったのは、3歳年上の小林祐梨子との出会いだった。

小林は兵庫県の強豪、須磨学園高等学校で活躍しており、高校生にして女子1500メートルの日本新記録を樹立した注目選手だった。全国都道府県対抗女子駅伝競走大会で初対面し、アドバイスも受けた鈴木は、小林を目標に陸上に本腰を入れるようになった。

だが、鈴木の高校生活は苦難の連続だった。疲労骨折を2度経験し、2度の手術を受けた。特に2度目は自分の腰の骨を移植する大かかりなものだった。身長150センチあまりの小柄な体格を思い切り使う豪快なフォームはもろ刃の剣だった。自身の持ち味である一方、体がついてこられなかった。高校3年次のインターハイ女子3000メートル走では8位に入ったものの、タイムは9分20秒24と、中学時代のベストタイムよりも遅かった。

「高校で大きな故障もしていたので、大学ではしっかり復活したい」という思いから、大学も陸上界では名門とは言えない名古屋大学に進学した。部員が集まって練習するのは週に3回だけ。しかし、複数校との合同練習で、さらに女子の国内トップ選手より少しレベルの高い男子選手との練習を通して、毎回のトレーニングの質を高めることができ、自立心も培われた。

ケガにも負けず、愚直に自分自身と向き合い、努力を続けることができる鈴木のメンタルの強さは、まさに長距離ランナー向き。現在は日本郵政グループ女子陸上部の合宿所「小金井寮」での生活を軸に、オリンピックに備える。「得意淡然 失意泰然」の精神で、東京五輪の先頭をめざす。

選手プロフィール

  • 鈴木亜由子(すずき・あゆこ)
  • 陸上競技選手 5000メートル、1万メートル、マラソン
  • 生年月日:1991年10月8日
  • 出身地:愛知県豊橋市
  • 身長/体重:154センチ/38キロ
  • 出身校:豊城中(愛知)→時習館高(愛知)→名古屋大学
  • 所属:日本郵政グループ
  • オリンピックの経験:リオデジャネイロ五輪(5000メートル、1万メートル)

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