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アプリで自宅から「声援」を送り、「投げ銭」で好きなクラブを応援【スポーツのデジタル化】

リモート応援向けのさまざまなアプリが開発、クラブや球団の経営にも影響

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

新型コロナウイルス感染対策を取り入れた新しい生活様式の推奨とともに、スポーツ界は少しずつ光を取り戻しつつある。しかし、観客を動員しての試合開催には感染リスクが懸念される。そこで注目を集めているのが、「リモート応援」と称される新たな観戦スタイルだ。

無観客や入場制限がある試合でスタジアムを「人型段ボールパネル」で埋めるアイデアは世界中で採用されている。パネルの設置料金がクラブの財源になっている

ヤマハが「声」を届けるアプリを開発

Jリーグのジュビロ磐田のスポンサーであるヤマハ株式会社は、リモート応援システム「Remote Cheerer powered by SoundUD」を開発した。これは、スマートフォンなどの専用アプリで視聴者が「歓声」や「拍手」のボタンを押すと、自分の声や拍手音が、実際に試合を行われている競技場のスピーカーから出る仕組みで、ファンやサポーターが遠隔地からスタジアムにリアルタイムで声援を届けることができる。

Jリーグ再開に先立ち、6月13日に行われた磐田とアスルクラロ沼津の練習試合において実証実験が行われると、視聴者やピッチに立った選手らに十分な臨場感を与え、7月4日の再開後のJリーグにおいて複数のクラブが導入している。同システムは当初、子育てや入院などでスタジアムに来場できない人や、海外などの遠方に住む人でも「声」を現場に届けることを目的に開発されたものだが、応援歌を歌うことなど従来の応援スタイルにさまざまな制限が課されている「ウィズ・コロナ」時代において、応援に欠かせないツールになりつつある。

例年より約3カ月遅れて6月19日に開幕したプロ野球でも、無観客試合を盛り上げるさまざまな工夫が施されている。東京ドームで行われた読売ジャイアンツvs阪神タイガースの一戦では、バックネット裏に大型のLEDパネルが設置され、まるで観客がスタンドに座っているかのような映像が映し出された。また、過去に収録された応援の音声も同時に流すことによって、殺風景な無観客試合を一変させた。

こうした映像を用いた「観客動員」は欧州でも活発的で、スペインのリーガ・エスパニョーラでは、無人のスタンドに観客のバーチャル映像と音声が合成され、有観客試合のように見せかけたうえでテレビ放映された例もある。オンライン会議システムの「Zoom」を活用するケースが多い。

オンライン会議システムの「Zoom」などを活用し、ファンの姿をスタジアムに映し出すケースも増えてきた

「投げ銭」が活発化、10万円を投じたサポーターも

無観客や観客人数に制限を設けての試合開催が続くことは、プロ野球球団やJリーグクラブの経営に大きな影響をもたらしている。

入場料やスタジアムにおける飲食やグッズ収入などが激減しているなか、収入源確保のため知恵を絞るJリーグで活発化しているのが、オンラインでの「投げ銭」制度の導入だ。「投げ銭」機能のついたアプリはさまざま開発されており、スポーツニュースや動画が楽しめる「Player!」、スポーツコミュニティープラットフォーム「Engate」、会員制交流サイト「pring」などが挙げられる。動画配信サイトとして最も有名な「YouTube」にも、ライブ配信中にスーパーチャット(投げ銭)を行う機能がある。

新型コロナウイルスの感染拡大により、スポーツ観戦の方法も多様化してきた。東京五輪での応援スタイルも幅が広がりそうだ

鹿島アントラーズは5月16日にはすでに、YouTubeのJリーグ公式チャンネルとNHK BS-1で鹿島の過去の試合が配信放送されるのに合わせ、現役選手やチームOBが「Player!」でトークイベントを実施している。6月13日には、浦和レッズがFC町田ゼルビアとの練習試合を「YouTube Live」で生配信し、「Player!」にてチームOBによるトークイベントも同時開催。すると、一人で10万円を投じたサポーターが登場し、話題を集めた。浦和は新型コロナウイルスの影響により、今年度は約10億円の赤字となる見通しであることを立花洋一社長が明かしており、6月からグッズやオンライン交流会などを「リターン」とした「クラウドファンディング」を実施し、目標額の1億円を超えた金額を集めている。

こうした「投げ銭」イベントは公式戦再開後も積極的に実施されており、「pring」は7月27日時点で浦和、大分トリニータ、川崎フロンターレ、愛媛FC、ギラヴァンツ北九州、東京ヴェルディなど9つのJリーグクラブが導入している。「投げ銭」を行った人に対してはデジタルフォトやスマートフォン壁紙のプレゼントなどを用意し、いずれのクラブも長期継続利用を視野に入れている。

オープンスペースで、感染リスクを減らしながらスポーツを楽しむケースも増えてきた

バーチャル始球式など新たなスポーツ文化が誕生

ドイツのプロサッカーリーグ、ブンデスリーガでボルシアMGが先陣を切って導入し、話題を集めた「人型段ボールパネル」は、Jリーグやプロ野球でも無観客試合において多くのクラブや球団が実施した。

制限付きの有観客試合が可能となって以降も、人と人の間の空席を埋めるべく、大宮アルディージャや清水エスパルス、湘南ベルマーレなどは段ボールのフォトパネルの掲出を継続している。これならば、50パーセント以下の収容率であっても満席に見せかけ、ホームの威圧感を醸し出すことが可能だ。ボルシアMGを筆頭に、各クラブはパネル1体ごとに数千円の設置料金を定めており、財源確保の一策としても実施している。

その他にも、野球では著名人によるバーチャル始球式を実施したり、スタジアムグルメを自宅で味わってもらうようドライブスルーで提供したりなどさまざまなアイデアが捻出されている。新型コロナの影響でスポーツ観戦の形態は様変わりしたが、IT技術やデジタル技術を軸にした新たな観戦スタイルがウィズ・コロナ時代のスポーツ文化として定着していくことだろう。