ロンドン五輪ではエリザベス女王が空を舞った
1984年ロサンゼルス五輪の開会式では、参加国の国旗のコレオグラフィーがスタンドを埋め尽くした
1984年ロサンゼルス五輪の開会式では、参加国の国旗のコレオグラフィーがスタンドを埋め尽くした1984年ロサンゼルス五輪の開会式では、参加国の国旗のコレオグラフィーがスタンドを埋め尽くした

アスリートたちがスタジアムに集結し、聖火の点灯が行われる開会式。近年は華美にショーアップされ、演出内容や聖火の最終ランナーといった出演者も注目を集めている。20時開始となる2020年東京五輪の開会式を前に、オリンピックの歴史を見事に紡いできた印象的な10の開会式をピックアップした。

2004年アテネ五輪では水面に放たれた炎が大きな五輪マークを描き出す演出が行われた
2004年アテネ五輪では水面に放たれた炎が大きな五輪マークを描き出す演出が行われた2004年アテネ五輪では水面に放たれた炎が大きな五輪マークを描き出す演出が行われた

聖火の点灯は1928年の五輪から

近代オリンピックは1896年にギリシャのアテネで第1回大会が行われた。当時はまだ『オリンピック憲章』がなかったため、開会式で何をするかを規定した細かい実施要項はなかったが、ファンファーレとともに選手や役員が入場し、ギリシャ国王の開会宣言とともに祝砲が放たれ、ハトが飛び立つという演出が行われた。

一方、オリンピックの象徴であり、古代オリンピックの時にも灯されていた聖火は第1回アテネ五輪ではまだ存在していない。聖火は1928年アムステルダム五輪から導入されている。初めて聖火リレーが行われたのは1936年ベルリン五輪だ。

現在は開催地がある国の国旗掲揚と国歌斉唱、国家元首による開会宣言、オリンピック賛歌の合唱とオリンピック旗の掲揚などが行われるのが通例となっている。近年のオリンピックでは開催地のプレゼンテーションを兼ねたさまざまなパフォーマンスのなかにこれらの要素が盛り込まれるとともに、選手の入場行進が披露され、ハイライトとして聖火の点灯が行われる。第1回大会から実施されていたハトが飛び立つ演出は、近年は動物愛護などの観点から実物のハトを使用するのではなく、映像やパフォーマンス、模型などで象徴的に表現されるようになった。

聖火の点灯は1928年にスタート。1996年アトランタ五輪ではモハメド・アリが聖火リレーの最終ランナーを務めた
聖火の点灯は1928年にスタート。1996年アトランタ五輪ではモハメド・アリが聖火リレーの最終ランナーを務めた聖火の点灯は1928年にスタート。1996年アトランタ五輪ではモハメド・アリが聖火リレーの最終ランナーを務めた

過去には「世界の坂本龍一」も参加

ここからはオリンピックの歴史を彩った10の開会式を紹介する。IOCオリンピック公式チャンネル日本語版編集部が厳選した個性豊かなセレモニーを知れば、2020年7月24日に行われる東京五輪の開会式がどのような演出で行われるのか、胸が高鳴るはずだ。

1964年東京五輪

天皇・皇后両陛下らが臨席するなかで行われた開会式。色とりどりの風船が舞い上がり、航空自衛隊の曲技飛行隊「ブルーインパルス」が晴れ渡った空にカラースモークで五輪を描く。1945年8月6日、原爆投下当日に広島県三次市で生まれた陸上選手の坂井義則が聖火の最終ランナーを務めた。

1968年メキシコシティー五輪

コロンブスの大西洋横断と同じ航路をたどって大西洋を渡った聖火の最終ランナーを務めたのは、陸上競技でこの大会に参加するエンリケタ・バシリオ(メキシコ)。近代オリンピック初の女性最終ランナーとなった。純白のユニフォームに身を包んだバシリオは聖火を手にトラックを疾走すると、バックスタンドにしつらえられた階段を一気に駆け上がり、聖火を灯した。

1984年ロサンゼルス五輪

参加国の国旗がスタンドを埋め尽くしたコレオグラフィーも見事だったが、世界中の衝撃を与えたのは、ロケットベルトを装着した男性による空中遊泳。翼やプロペラを使わず、背中に装着したジェット噴射装置を駆使して生身の人間が飛行する様子は、まさに近未来をイメージさせるものだった。

1992年バルセロナ五輪

パラリンピックのアーチェリー選手アントニオ・レボージョ(スペイン)が聖火の灯った矢を放って聖火台に点火させたシーンは、歴代開会式の名シーンの一つに数えられている。世界三大テノールの一人であるホセ・カレーラス(スペイン)が音楽監督を務め、後半には坂本龍一が自ら作曲した楽曲でオーケストラを指揮するなど、芸術性の高い開会式となった。

1996年アトランタ五輪

エンターテインメント大国アメリカが、近代オリンピック100周年を多いに盛り上げた。大物演出家のドン・ミッシャー(アメリカ)がプロデューサーを務め、映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズ(アメリカ)がテーマ曲を作曲。聖火の最終ランナーは、元プロボクサーで1960年ローマ五輪金メダリストでもあるモハメド・アリ(アメリカ)が務めた。パーキンソン病を患っていたが、震える手で聖火を灯す姿は感動を呼んだ。

2012年ロンドン五輪では、エリザベス女王がパラシュートで会場に降下する演出が会場を沸かせた
2012年ロンドン五輪では、エリザベス女王がパラシュートで会場に降下する演出が会場を沸かせた2012年ロンドン五輪では、エリザベス女王がパラシュートで会場に降下する演出が会場を沸かせた

ロンドン五輪ではMr.ビーンも登場

2000年シドニー五輪

韓国と北朝鮮が統一旗の下で合同入場を行い、インドネシアから独立したばかりの東ティモールの選手も参加。パフォーマンスにはオーストラリア大陸とその周辺の先住民であるアボリジニが登場するなど、人種や民族の相互理解や融和がアピールされた。アボリジニ出身のキャシー・フリーマン(オーストラリア)が聖火の最終ランナーを務め、ブーメランを模したトーチで聖火への点灯を行った。

2004年アテネ五輪

開会式ではフィールド部分の芝生が取り除かれ、水を溜めてエーゲ海を表現。水面に放たれた炎が大きな五輪マークを描き出し、全知全能の神ゼウスが司った神話の時代から現代に至るまでのギリシャ史をテーマにした壮大なパフォーマンスが披露された。エーゲ海をつくった水はわずか数分で排水されたため、選手の入場行進は問題なく華やかに行われている。

2008年北京五輪

中国の歴史やそのなかで生まれたさまざまな発明を紹介するパフォーマンスが壮大なスケールで行われた。孔子の弟子に扮した3000人が『論語』の一節を唱え、巨大な活版印刷の活字郡が一糸乱れぬ動きを見せる様子は圧巻だった。花火による巨人の足跡や9歳の少女タレントが歌う姿も話題となった。

2012年ロンドン五輪

映画や舞台のワンシーンがつなぎ合わされていくかのようにイギリスの歴史が次々に紹介され、デービッド・ベッカムやローワン・アトキンソン(ともにイングランド)扮するMr.ビーンといった有名人も登場。エリザベス女王が、イギリス映画が誇る名スパイのジェームズ・ボンドとともにヘリコプターからダイブし、パラシュートで会場に降下する演出も目を引いた。もちろんスカイダイビングは演出の一つで、エリザベス女王もボンドもスタントマンが演じていた。

2016年リオデジャネイロ五輪

選手入場で大きな話題を呼んだのは、トンガの旗手を務めたテコンドー代表のピタ・タウファトファ。腰に民族衣装をまとい、鍛え抜かれた上半身をココナッツオイルで黒光りさせた姿がSNS上で話題となった。また、史上初めて「難民選手団」が結成され、10名の選手団が姿を現すと大きな歓声が沸き起こった。

北京五輪では3000人が『論語』の一節を唱えた。開会式は自国の歴史や文化をアピールする場にもなっている
北京五輪では3000人が『論語』の一節を唱えた。開会式は自国の歴史や文化をアピールする場にもなっている北京五輪では3000人が『論語』の一節を唱えた。開会式は自国の歴史や文化をアピールする場にもなっている

2020年の開会式は20時スタート

1964年東京五輪の開会式は10月10日に行われた。前日は台風接近の影響で雨となり、荒天による中止も想定されるほどだったが、当日は抜けるような青空で、式は無事に行われた。

2020年東京五輪の開会式は7月24日に行われる。近年、この時期は猛暑が続いていることもあり、20時開始、23時終了というスケジュールになっている。どのような内容になるかは現在検討中だが、日本の伝統や文化、そして現在の姿を紹介するものになるだろう。また、夜間に映える照明や映像、花火を駆使したパフォーマンスが行われる可能性が高い。

聖火の最終ランナーが誰になるかも楽しみなポイントの一つだ。過去の大会を見ると、開催地がある国の有名アスリートが務めることが多いが、演出との相乗効果を狙った人選になる可能性もある。

1964年の東京五輪ではオリンピックの模様が初めてカラーでテレビ中継され、世界初の衛星生中継にも成功した。映像や放送の技術は大幅に進歩しており、次の東京五輪が開催される2020年に向けて、日本の総務省は高精細度である4K・8K放送の普及をめざしている。

2016年リオデジャネイロ五輪では大会史上初めて「難民選手団」が結成され、開会式を盛り上げた
2016年リオデジャネイロ五輪では大会史上初めて「難民選手団」が結成され、開会式を盛り上げた2016年リオデジャネイロ五輪では大会史上初めて「難民選手団」が結成され、開会式を盛り上げた

楽しめましたか?いいねまたは友達とシェアしよう!