サッカー女子ワールドカップ・フランス大会開幕まであとわずか!"なでしこジャパン"の現在地...プレースタイルと注目選手は?

6月7日に開幕するサッカー女子ワールドカップまで、あと1か月を切った。フランス開催の今大会は、6月7日の開幕から7月7日の決勝までの一ヶ月間、24カ国の代表チームによって熱い戦いを繰り広げられることになる。2大会ぶりの優勝を目指す"なでしこジャパン"(サッカー女子日本代表チームの愛称)は、本大会に向けてどのような仕上がりになっているのだろうか?本大会に向けたなでしこジャパンの現在地、そして注目選手をチェックしていきたい。

【サッカー女子W杯フランス大会】なでしこジャパンの試合日程・結果、対戦相手、放送予定

なでしこジャパンは2大会ぶりの優勝を目指す
なでしこジャパンは2大会ぶりの優勝を目指すなでしこジャパンは2大会ぶりの優勝を目指す

なでしこジャパンの現在地、女子サッカー強豪国とその背景

”なでしこジャパン”の愛称で親しまれるサッカー日本女子代表は、2011年のドイツ大会でW杯初優勝を果たすと、続く2015年のカナダ大会でも準優勝に輝き、”女子サッカー強豪国”のひとつとしての地位を確立した。とりわけ、2011年のドイツ大会では、東北大震災で暗く沈んだ日本国内に一点の光を灯し、その団結心で人々を勇気づけた。

現在のFIFA(国際サッカー連盟)の国際ランキングを見てみると、日本は世界7位につけている。首位のアメリカは、これまでも”女子サッカー大国”として名を馳せてきた。その後ろには、ドイツ、イングランド、フランス、カナダ、そしてオーストラリアが日本よりも上位に位置している。

女子サッカー世界ランキングTop10

1位 アメリカ(2101ポイント)
2位 ドイツ(2072ポイント)
3位 イングランド(2049ポイント)
4位 フランス(2043ポイント)
5位 カナダ(2006ポイント)
6位 オーストラリア(2003ポイント)
7位 日本(1991ポイント)
8位 オランダ(1967ポイント)
9位 スウェーデン(1962ポイント)
10位 ブラジル(1944ポイント) (3月29日発表時点)

男子サッカーの世界7位は、クリスティアーノ・ロナウドを擁するポルトガル代表。その上には、世界1位ベルギー、フランス、ブラジル、イングランド、クロアチア、そしてウルグアイの順に並ぶ。こうしてみると、日本女子代表が世界的に強豪国と呼ばれることも理解できる。南米や南欧の存在感が目立つ男子サッカーと比べて、女子サッカーでは北米や北欧、そしてオセアニアの存在感を放っている。スポーツに対する社会的、そして経済的インフラが整っていることも女子サッカーの躍進には欠かせないことが見て取れる。

国際的に有名なところで言うと、例えば、アメリカでは大学間で戦われる「カレッジスポーツ」が有名で、男女各プロスポーツへの登竜門となっている。フランスでは、国立サッカー育成機関の「クレールフォンテーヌ国立サッカー養成所」で、男女の隔たりなくプロサッカー選手になるための教育を受けられる。ドイツでは、各地域のトップクラブと提携した公立の「エリートシューレ」と呼ばれるスポーツ学校で教育を受けることが可能となっている。

日本でも、部活動はもとより、日テレ・ベレーザのように男子サッカークラブの姉妹クラブとして長く活動を続けてきたチームもある。近年では『なでしこリーグ』の名称のもと、リーグ運営の整備も続けられ、育成機関も広く定着してきた。さらに、「JFAアカデミー」のように、日本サッカー協会が主導でサッカー選手を養成する道も存在する。このように、男女ともに同じ制度のもとで未来のサッカー選手たちを育てられる環境の有無が、女子サッカーの世界的な躍進の鍵となっている。

また、イングランド女子代表では名門マンチェスター・ユナイテッドで一時代を築いたフィル・ネヴィルが監督を努めている。また、フランス女子代表のコリーヌ・ディアクル監督も、女性ながら同国の男子2部所属クラブで監督を務め、同リーグ内でも非常に高い評価を集めた。このように、指導者の男女間の垣根も崩れ始めており、女子サッカーそのもののレベルもますます上がり続けている。

前回大会の決勝で日本を破り、優勝を果たしたアメリカ
前回大会の決勝で日本を破り、優勝を果たしたアメリカ前回大会の決勝で日本を破り、優勝を果たしたアメリカ

なでしこジャパンのプレースタイルは?

今度は、ピッチ上に目を向けてみたい。世界の強豪国のなかで、「なでしこジャパン」のプレーの特徴はどのような点にあるのだろう?なでしこジャパン直近の試合となった4月9日のドイツ代表戦後、ドイツ代表の選手達に、日本に苦しめられた点を尋ねた。

ドイツ代表で10番を背負い、世界屈指のアタッカーの一人であるジェニファー・マロジャン(リヨン)は、「日本は、優れたパスサッカーができ、ボールを奪うのがとても難しい。とても速くボールを動かせるし、創造的でとてもすばしっこい。これは対戦相手をイライラさせるわ。ボールを追って走らされるのは、しんどいからね。彼女たちは、それをクレバーに行えるの」とピッチ後方での攻撃の組み立てや中盤でのパス回しを日本の長所と見ていることを説明した。

ドイツ代表の主将で、エースストライカーでもあるアレクサンドラ・ポップ(ヴォルフスブルク)も、「日本がおそろしくボールを速く動かせることを知っていた」と試合後に振り返った。しかし、彼女はその対策も見つけたようだった。「高い位置から攻撃的なプレッシングを仕掛けたときに、日本が苦しんでいたのに気がづいた。そうしてやり方を変えてからは、自分たちのペースの試合になった」と明かした。

欧州3連覇中の強豪クラブ、オリンピック・リヨンで主力を務める熊谷紗希
欧州3連覇中の強豪クラブ、オリンピック・リヨンで主力を務める熊谷紗希欧州3連覇中の強豪クラブ、オリンピック・リヨンで主力を務める熊谷紗希

日本の主将、熊谷紗希は、欧州遠征での2連戦(フランス戦、ドイツ戦)を終えて、自分たちの弱点も正確に理解していた。「(対戦相手が)サイドを使いながら、スピードとパワーで崩して、最後は中でゴールを決める。この形は自分たちが一番苦手としているところ。もっと練習して、相手に対応できるやり方を見つけていかないといけない」と海外の選手たちに比べ、体格面で圧倒的に劣る点を解決すべく、工夫を重ねているようだった。

女子サッカー強豪国であるなでしこジャパンの強さや特徴は、すでに世界的にも広く知られている。そのため、各国も日本の研究・分析を重ねて対抗策を練ってくる。なでしこジャパンが、その難しさにどのように向き合っていくのかが、まもなく開幕する女子W杯の見どころのひとつとなる。

なでしこジャパンの注目選手は?

現在のなでしこジャパンの中心選手は、ディフェンダーで主将を務める熊谷紗希だろう。所属先であるフランスのリヨンは、現在欧州女子チャンピオンズリーグ3連覇中、国内リーグでも10連覇中と現在の欧州女子サッカーシーンにおいて圧倒的な強さを誇っている。そのクラブで定位置を確保し、”世界選抜”とも呼ばれるチームの中でもボランチで主軸として活躍しており、国際的にも大きな知名度を誇るのが熊谷。イギリスの放送局『BBC』が選出する2019年の最優秀選手候補5人にノミネートされている。

ベテラン鮫島彩の存在も欠かせない。日本は、リオ五輪の出場を逃した後に、高倉麻子監督のもと世代交代を進めてきた。これまでU-17W杯優勝など、日本女子代表の下部年代で数々の成功を収めてきた高倉監督は、まさにその役割にふさわしい存在と言える。

若手選手が多く加入してくるなか、鮫島はディフェンスを安定させる役割を果たす貴重な存在。スピードがあり、サイドバックもセンターバックでもプレーできるユーティリティも魅力だ。フランスや米国でもプレーをしたことがあり、豊富な国際経験はW杯の舞台でも必ず日本の役に立つはずだ。

攻撃陣では、新しい世代の長谷川唯の活躍が目立つ。現在なでしこリーグ4連覇中の名門クラブ、日テレ・ベレーザで攻撃を牽引するテクニシャンだ。技術の高さのみならず、クレバーな位置取りで常に相手の先手を取り、中盤でゲームメークをすることもあれば、相手ゴール前では豊富なアイディアからチャンスを演出する。W杯本大会でも、彼女を経由したゴールシーンがたびたび見られるはずだ。

2011年のW杯優勝を経験した選手と、アンダーカテゴリーで数々の成功を収めてきた選手たちが融合することが期待されているなでしこジャパン。成熟と新鮮さのバランスが取れたチームになることで、躍進を狙う。

(取材・文/鈴木達朗)

  • マドリードで女子サッカー史上最多の観客を動員

    マドリードで女子サッカー史上最多の観客を動員

楽しめましたか?お友達にシェアしよう!