セーリング女子:日本女子は若手が台頭、江の島開催を生かせるか

セーリングの競技会場となる江の島。
セーリングの競技会場となる江の島。セーリングの競技会場となる江の島。

大海原でレースを繰り広げるセーリング。その勝敗を決するのは、選手の体力や技術のみならず、波や風などの大自然と、いかに一体となれるかだ。開催国枠を得て、女子は7人が出場できることになった日本だが、世界の強豪国の壁は依然として高い。しかし、ここのところ若手選手が実力をつけてきており、地元開催という地の利を生かした活躍も期待できる状況になってきた。

自然と一体になり楽しむスポーツ

セーリングは帆に受けた風の力で水上を滑走する速さを競うスポーツだ。海面に設置されたマークと呼ばれるブイを決められた回数と順序で回りながら、フィニッシュラインまでの着順とペナルティーを点数化する。種目は使用する艇(ヨット)の種類によって決まり、1~2人で乗り込む。予選はこのレースを10〜12回行い、合計点数の低い10艇が出場する「メダルレース」と呼ばれる最終レースで勝敗を決する。

オリンピックにおける歴史は古く、1990年の第2回パリ五輪から実施されている。1996年アトランタ五輪までは「ヨット」の呼称だったが、2000年シドニー五輪から競技名が「セーリング」となった。

コースは、通常、大きな三角形を描くため、ヨットは3方向からの風を受けながら、フィニッシュラインに到達する。選手は体の位置や向きを変えることで、艇全体のバランスを取る。向かい風や横風の場合は、艇をジグザグに進ませることで、風を推進力に変える。コース取りで、無駄にふくらむことなく曲がれるかが、腕の見せどころとなる。また、スタートダッシュで、頭ひとつ抜き出ることができるかどうかで、レースの優位性が変わってくるため、マークへの一番乗りをめぐってしのぎを削ることになる。最初からクライマックスになるといっても過言ではない。

ほかのヨットとの位置関係やコース取り、コース全体を俯瞰する視点を交えながら船を進めるためには、戦略と戦術のみならず、自由自在に艇を操ることができる強靱な肉体が前提となる。これがセーリングの醍醐味であり、見る側を楽しませてくれる魅力でもあるだろう。


2人乗りで行われる49er級。
2人乗りで行われる49er級。2人乗りで行われる49er級。

船種によって別れるセーリングの種目

東京五輪で実施されるのは、男女共通の2種目(計4種目)と男子のみの3種目、女子のみの2種目、男女混合1種目。女子の種目は以下のとおりとなる。

RS:X級(1人乗り)

「アール・エス・エックス級」と呼ばれ、全長2.86m、全幅0.93m、重量15.5kgのウインドサーフィンボードを用いる。

レーザーラジアル級(1人乗り)

全長4.23m、幅1.37mという男子のレーザー級の艇体を使い、2本つなぎのマストの下部セクションを短くして、セール面を80%削減の5.7㎡にしたヨットで行われる。

470級(2人乗り)

艇の全長が4.7mであることから、日本では「ヨンナナマル級」と呼ばれる。舵・主帆を操るスキッパーと、前帆を操るクルーの2人が乗り込む。乗員2人合わせて約130kgが適正体重とされ、小柄な選手が活躍しやすいため、日本選手には相性がよいとされる。

49er級(2人乗り)

「フォーティーナイナー級」と呼ばれ、全長4.99m、幅2.90mのヨットを使用する。スキッパー、クルーともにトラピーズ(ロープ)で体を支え、艇外に乗り出してバランスを取りながら船を操る。

フォイリングナクラ17級

男女ペアで行う「ナクラ17級」は、2016年リオデジャネイロ五輪から新艇種として採用されたが、このヨットに「フォイル」と呼ばれる水中翼がついた「フォイリングナクラ17級」が、2020年東京五輪で初めて行われる。海面から浮き上がって疾走するため、水の抵抗を受けにくく、最高スピードは時速50kmと従来のヨットの2倍近い速さになるという。ヨット先進国のアメリカなどのレースでは、すでに導入されているが、まだ、まもないため、船の操舵技術に大きな差がないため、日本にもメダル獲得のチャンスがあると言われている。

女子は今までの大会で銀メダル1個

日本女子は1996年アトランタ五輪470級に出場した重由美子と木下アリーシアのペアが銀メダルを獲得している。

重選手は小学生でヨットを始め、高校時代は国体、インターハイで活躍。470級選手として世界を目指し、国内トップレベルの選手となった。デンマーク生まれの木下選手をスカウトし、1992年バルセロナ五輪に出場して5位入賞。1996年アトランタ五輪で再挑戦し、銀メダルを獲得した。さらに2000年シドニー五輪にも出場して8位となった。その後、若手の指導・育成に取り組んできたが、2018年12月に亡くなった。

吉田(左)・吉岡(右)ペアは2018年世界選手権で初制覇を果たした。
吉田(左)・吉岡(右)ペアは2018年世界選手権で初制覇を果たした。吉田(左)・吉岡(右)ペアは2018年世界選手権で初制覇を果たした。

注目は土居、吉田・吉岡の3選手

日本代表には、男子5、女子4、混合1の全10種目で1つずつ開催国枠を与えられた。女子は最大7選手が出場できる。

注目選手は2012年ロンドン五輪、2016年リオデジャネイロ五輪と連続出場したレーザーラジアル級の土居愛実だ。東京五輪の競技会場は、土居が子どものころから慣れ親しんだ地元、江の島だけに、大きなアドバンテージとなりそうだ。2017年世界選手権で銅メダル、2018年アジア大会で金メダルに輝くなど、メキメキと実力をつけてきている。ロンドン五輪31位、リオデジャネイロ五輪20位、地元の大声援という追い風を受け、3度目の正直で金メダルを狙っている。

また、470級の吉田愛・吉岡美帆が2018年は大活躍。デンマークで開催された世界選手権で初優勝を果たし、アジア大会で金メダルを獲得。セーリングワールドカップシリーズ江の島大会でも銀メダルを獲得し、東京五輪に向けて弾みをつけた。吉田は北京、ロンドン、リオデジャネイロ五輪と3大会出場の経験を持つ。2013年から吉岡とペアを組み、挑んだリオデジャネイロ五輪での成績は5位。470級での金メダル獲得に大きな期待が寄せられている。

圧倒的な強さを誇る海外勢に迫ることができるか

ヨットレース発祥の地だけあって、イギリスの強さは際立っており、これまでの大会で金メダルを最も多く獲得している。次いで、世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」で最多優勝を誇るアメリカが強い。このほか、ノルウェーやスペイン、フランスなどのヨーロッパ諸国に加え、オーストラリアとニュージーランドが台頭し、日本はこうした国々の後塵を拝してきた。しかし、2020年東京五輪を見据えて、国際大会が日本で開催されている。会場となる江の島ヨットハーバーには、視察や練習をする海外選手も増えている。セーリングは自然を相手にするスポーツ。選手の技量だけでなく、風や波の状態にも大きく左右される。地元の大声援を追い風に、地の利を生かした戦い方で、ぜひメダルを獲得して欲しい。

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