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バドミントン女子ダブルス:世界最高レベルの東京五輪代表争いはフクヒロ&ナガマツが有力、リオ五輪金のタカマツはペア解消で離脱【代表内定物語】

コロナ禍による東京五輪の1年延期で髙橋礼華が現役引退を発表

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

日本のオリンピック史上屈指のハイレベルな代表争いが繰り広げられていたバドミントン女子ダブルスだが、東京五輪の1年延期を受け、リオデジャネイロ五輪金メダルの髙橋礼華が現役を引退し、松友美佐紀とのペアを解消。新型コロナの影響により思わぬ決着を迎えることとなった。

福島由紀(右)と廣田彩花(左)の「フクヒロ」ペア。全英オープンを制したことで東京五輪行きをほぼ確定させた

女子ダブルスは世界ランク10位以内に日本勢が5組

バドミントンの東京五輪代表選考は、対象の国際大会での成績によって獲得したポイントによって争われている。

選考レースがスタートした2019年4月末時点で、最もハイレベルな争いが予想されていたのが、女子ダブルス種目だ。2018年12月20日付のBWF(世界バドミントン連盟)世界ランキングでは、上位10組のうち5組を日本勢が占める中、東京五輪日本代表の座は2組にしか与えられない(各国・地域の出場上限が2)。誰が勝つか分からない、そしてどのペアが出場権を獲得したとしても十分に世界と渡り合える、最高峰の戦いが繰り広げられることとなった。

中でも“3強”として注目を集める3組がいた。

まずはリオデジャネイロ五輪で日本バドミントン初の金メダルを獲得した髙橋礼華と松友美佐紀の「タカマツ」ペア。2人は聖ウルスラ学院英智高校時代の先輩と後輩で、当時の田所光男監督からは「“余りもの”だったからペアにした」と冗談めかして明かされたという逸話がある。その後、13年と長きにわたってペアを組み、世界の頂点まで上り詰めた。

インドネシアオープン2019の決勝は日本勢同士の対戦。高橋礼華(左から2人目)と松友美佐紀(左端)の「タカマツ」ペアが「フクヒロ」ペア(右の2人)に敗れる結果となった

直近の世界選手権で2連覇を果たしているのは、永原和可那と松本麻佑の「ナガマツ」ペアだ。永原が170センチ、松本が177センチと日本勢の中で際立つ長身コンビは同学年でともに北海道出身。高校卒業後の2014年、原田利雄監督(当時)に招かれる形で北都銀行に入社し、ペアを結成した。初出場だった2018年の世界バドミントン選手権で初優勝を飾ると、2019年の同大会で日本勢初の連覇という偉業を達成した。

そして2019年4月の代表選考開始時点で世界ランクの1位に君臨していたのが、福島由紀と廣田彩花の「フクヒロ」ペアだ。2017年に日本A代表入りを果たしたフクヒロペアは、世界選手権で2017年から3年連続決勝進出と安定した成績を収めている。廣田がルネサス(2014年に再春館製薬所へバドミントン部を譲渡)に入社した2013年にペアを結成した2人だが、実は成績が伸び悩んだことで2016年に一度ペアを解消した時期がある。それぞれ、ほかの選手とプレーしたことでコミュニケーションの大切さや互いの生かし方を学び、再びコンビを結成して飛躍した。

永原和可那(右)と松本麻佑(左)の「ナガマツ」ペアはともに170CMを超える長身。初出場だった2018年の世界バドミントン選手権で初優勝を果たしている

全英オープンで日本勢対決を制したフクヒロがリード

女子ダブルスでメダル獲得の気配が急速に高まったのは、2008年の北京五輪からだ。「オグシオ」の名称で人気を博した小椋久美子と潮田玲子ペアがベスト8に進出。また、末綱聡子(すえつな・さとこ)と前田美順(みゆき)の「スエマエ」ペアはメダル獲得まであと一歩に迫る4位入賞と健闘した。すると、4年後のロンドン五輪では、藤井瑞希と垣岩令佳(かきいわ・れいか)の「フジカキ」ペアが初の決勝進出を果たして銀メダルを獲得。そして2016年、リオデジャネイロ五輪でついに日本バドミントン界の悲願だった金メダルをタカマツペアが手にした。

タカマツペアの快挙を契機に、その後の4年間で多くのペアが「東京五輪での金メダル」を現実的な目標に定め、着々と力を伸ばしてきた。

東京五輪の代表争いをリードしてきたのはフクヒロペアだ。ポイントレースで最も格付けの高い世界選手権のタイトルこそナガマツペアに奪われたものの、同大会での準優勝と年間ツアー上位8組(各国上限2組)が出場するワールドツアーファイナルズへの出場、そして2020年3月に行われた全英OPでの優勝でポイントを稼ぎ、代表権をほぼ手中に収めた状況と言える。中でも東京五輪の前哨戦と位置づけられていた全英OPでは、準決勝でタカマツペアとの日本勢対決を制し、ライバルを突き放した。世界選手権での3年連続準優勝により「シルバーコレクター」の印象も強まっていたフクヒロペアにとっては、汚名を返上するビッグタイトル獲得となった。

リオデジャネイロ五輪金メダリストのタカマツペアは、高橋(右)の現役引退により東京五輪出場の夢を諦めた。一方の松友(左)は現役続行を表明している

コロナ禍で東京五輪が延期、代表選考も中断に

一方、リオデジャネイロ五輪金メダリストのタカマツペアは全英OPでフクヒロペアに敗れたことで、オリンピック出場はほぼ絶望的なものとなった。

ハイレベルな国内の争い屈した格好となったが、タカマツペアがここまで日本の女子ダブルスを牽引してきた功績は十分に称えられるべきだ。そもそもリオデジャネイロ五輪後、彼女たちは4年後を目指すか否かで揺れていた。髙橋は2020年に30歳になることを踏まえ、コンディション面に不安をのぞかせ、一度は競技続行の決断を保留にしていた。

その後、再びオリンピックの頂点を2人で目指すことを決心し、鍛錬を重ねてきたが、体力維持の難しさに加え、髙橋は太もものケガにも苦しみ、思うように結果を残せない中で他ペアの台頭を許した。それでも崖っぷちに追い込まれた選考レースの全英OP準々決勝で世界ランク1位の中国ペアを撃破した姿には、彼女たちの意地が見えた。

2020年3月に行われた全英OP後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、代表選考は一時中断し、東京五輪も1年延期が発表された。BWFは東京五輪の出場権について、2019年4月末から2020年4月末までとしていたポイント争いの期間に2021年1月から5月の17週間を追加した。期間はまだ残っているものの、暫定ポイント数によりフクヒロペアとナガマツペアがほぼ確実と見られている。

そして2020年8月18日、思わぬ形で3組のサバイバルレースに終止符が打たれた。髙橋が気持ちと身体の維持の難しさを理由に現役引退を発表。これによりタカマツペアのオリンピック連覇の夢はついえたが、会見で2人は「悔いはない」と口をそろえた。4年間ともに切磋琢磨し続けてきたからこそ、フクヒロペアとナガマツペアの強さはよく理解している。両ペアに思いを託し、タカマツペアはそれぞれの道を歩むこととなった。