フィギュアスケートレビュー:四大陸選手権で日本勢が2冠。紀平梨花が史上初の大会連覇、羽生結弦は男子初の「スーパースラム」達成!

ユースオリンピック金メダリストの鍵山優真は銅メダル
四大陸選手権を制したのは男女ともに日本人。紀平梨花(左)が大会連覇、羽生結弦(右)はショートプログラムで世界最高得点をたたき出した
四大陸選手権を制したのは男女ともに日本人。紀平梨花(左)が大会連覇、羽生結弦(右)はショートプログラムで世界最高得点をたたき出した四大陸選手権を制したのは男女ともに日本人。紀平梨花(左)が大会連覇、羽生結弦(右)はショートプログラムで世界最高得点をたたき出した

韓国で2月6日から9日まで行われたISU(国際スケート連盟)四大陸フィギュアスケート選手権。男子、女子のシングル、ペア、そしてアイスダンス競技が行われ、シングルでは日本人選手が男女ともに表彰台の頂点に立った。羽生のライバルとして対決が熱望されていたネイサン・チェンは学業を優先するため欠場したものの、世界のトップスケーターたちが連日美しい舞を披露した、華やかな大会の結果を振り返ろう。

樋口新葉はSPとフリーの両方で自己ベストを更新。4位入賞を果たしている
樋口新葉はSPとフリーの両方で自己ベストを更新。4位入賞を果たしている樋口新葉はSPとフリーの両方で自己ベストを更新。4位入賞を果たしている

紀平梨花が驚異のリカバリーで史上初の大会連覇

四大陸フィギュアスケート選手権とは、ヨーロッパを除くアフリカ、アジア、アメリカ、オセアニアの選手たちが集結する大会だ。2020年の今回は韓国・ソウルの木洞アイスリンクで行われた。

日本からは男子シングルに3年ぶりの出場となった絶対王者の羽生結弦、ユース冬季オリンピックで金メダルを獲得したばかりの鍵山優真、そして2019年12月の全日本フィギュアスケート選手権で6位入賞を果たした友野一希が出場。女子シングルには大会連覇を狙う紀平梨花、全日本選手権2位の樋口新葉(わかば)、2018年の四大陸選手権を制している坂本花織が参戦した。ペアでは三浦璃来(りく)&木原龍一、アイスダンスでは小松原美里&ティム・コレト、深瀬理香子&張睿中(ちょう えいちゅう)の3組が参加している

2月6日に行われた女子ショートプログラム(以下SP)では、17歳の紀平が81.18点で首位発進。2位には75.93点のアメリカ代表ブレイディ・テネルが入り、坂本が73.07点で4位、樋口は自己ベストを更新する72.95点で5位につけた。

8日のフリーでは紀平が冒頭のトリプルアクセルでミスをしながらも、3回転サルコーを決めるなど見事に立て直して151.16点をマーク。SPとの合計点を232.34点に伸ばし、2位に9点以上の差をつけて男女通じて初となる四大陸選手権連覇を果たした。2位は地元韓国のユ・ヨン、3位はテネル、樋口はフリーでも134.51点と自己ベストを記録し4位、坂本は後半にミスが重なり5位に終わった。

羽生結弦は圧巻の演技を見せ、四大陸選手権初制覇を手繰り寄せた/時事
羽生結弦は圧巻の演技を見せ、四大陸選手権初制覇を手繰り寄せた/時事羽生結弦は圧巻の演技を見せ、四大陸選手権初制覇を手繰り寄せた/時事

羽生結弦はSPで世界最高得点を挙げ、男子初のスーパースラム達成

一方、7日の男子SPでは、羽生が圧巻の演技を見せる。SP、フリーともに平昌五輪でオリンピック2連覇を達成した時の楽曲に戻すと、鮮やかなジャンプを決め続け「SP世界最高得点」となる111.82点を記録した。シニアの主要国際大会デビューを飾った16歳の鍵山はSPの自己ベストを大きく超える91.61点で5位、友野は88.22点で7位と、日本勢が好発進を見せた。

9日のフリー、羽生は着氷の乱れた場面があったものの、ジャンプで他を圧倒。フリーで187.60点を記録し、合計299.42点で羽生は四大陸選手権初制覇を果たした。これにより、世界ジュニア選手権、ジュニアグランプリファイナル、オリンピック、世界選手権、グランプリファイナル、四大陸選手権のすべてで優勝する「スーパースラム」を達成。男子としては史上初の偉業を達成し、新たな伝説を打ち立ててみせた。2位にはアメリカのジェイソン・ブラウン、3位にはシニアの国際大会初参戦の鍵山が堂々入賞。友野は7位に入った。

ペアでは三浦&木原組が8位、アイスダンスでは小松原&コレト組が11位、深瀬&張組が13位で大会を終えた。

シニアの国際大会初参戦の鍵山優真は、まだ16歳ながら3位という好成績を収めている
シニアの国際大会初参戦の鍵山優真は、まだ16歳ながら3位という好成績を収めているシニアの国際大会初参戦の鍵山優真は、まだ16歳ながら3位という好成績を収めている

鍵山優真とSP&フリーの両方で自己ベストを更新

ローザンヌ冬季ユースオリンピックで逆転優勝を果たし、見事に金メダリストとなった鍵山は四大陸選手権でもその才能を遺憾なく発揮した。間違いなく現在大ブレイク中といえるだろう。

鍵山は「点数、順位はほとんど気にならなくて、自分がどれだけ戦えるかを知りたかった。このメンバーで参加できたことが本当に楽しくて」と謙虚に語りながらも、初のシニアの国際大会とは思えないほど堂々とした演技を披露し表彰台に立った。終盤のスタミナ切れという課題は残したものの、SP、フリーともに自己ベストを更新する最高の滑りを見せた。3月にエストニアで開催される世界ジュニアフィギュアスケート選手権には、優勝候補としてのプレッシャーが重くのしかかる状態で臨むことになる。それでも、今大会で深めた自信が背中を押してくれそうだ。

全日本選手権で初優勝を果たしたばかりの紀平梨花は、2位に9点以上の差をつけて大会連覇を達成
全日本選手権で初優勝を果たしたばかりの紀平梨花は、2位に9点以上の差をつけて大会連覇を達成全日本選手権で初優勝を果たしたばかりの紀平梨花は、2位に9点以上の差をつけて大会連覇を達成

連覇の紀平、自己ベスト更新の樋口は女子ロシア勢の戦いに向け自信を得る

シニア1年目ながら昨シーズンのグランプリシリーズを完全制覇した紀平梨花だが、ここまでロシア勢相手に苦戦を強いられてきた。2019年の世界選手権ではアリーナ・ザギトワ、エフゲニア・メドベージェワらにおされ4位。2019-20年シーズンのGPシリーズでは、"女子4回転世代"のアリョーナ・コストルナヤ、アンナ・シェルバコワ、アレクサンドラ・トルソワのロシア勢が席巻し、カナダ杯、NHK杯では2位に甘んじた。

しかし、全日本選手権は初優勝と好調をキープした状態で今大会に臨んだ。SPで代名詞となる鮮やかなトリプルアクセルや難易度の高い連続ジャンプを決めた紀平は、フリーで4回転を回避したものの、コンビネーションジャンプを見事成功させた。直前に滑走した韓国のユ・ヨンが完璧な演技を見せ、プレッシャーがのしかかったのか、序盤にはトリプルアクセルが1回転半となったが、ロシア勢との戦いを経た現在、すぐに持ち直すメンタルの強さも見せつけ、成長を感じさせた。試合後には「いい経験になった」と安堵の笑顔を見せていた。

2019年12月、3年ぶりに全日本選手権の表彰台に上がるなど、調子が上向いていた樋口も、会心の演技を見せた。

樋口はSPで自己ベストを更新し喜びをあらわにすると、フリーではトリプルアクセルに果敢に挑戦し、転倒したものの回転が認められた。昨夏には同アクセルの練習で左足を痛めるアクシデントもあったが、あきらめず地道に取り組んだことが結果に結びついた。「やっと試合で挑戦できて、回り切ってこけたので次につながる」と自信をつけたようだ。フリーでも自己ベストを更新する演技を見せ、まだまだ伸びしろが十分にあることをアピールしてみせた。

2020年の世界選手権はカナダで3月16日に開幕 男子は宇野、羽生、チェンの三つどもえに注目

カナダのモントリオールで行われる世界選手権に出場するのは、男子が全日本選手権優勝の宇野昌磨、そして2位の羽生、4位の田中刑事、女子は全日本選手権優勝の紀平、2位の樋口、4位の宮原知子、ペアは三浦璃来&木原龍一、アイスダンスは小松原 美里&ティム・コレトとなっている。

中でも十分な練習期間を経て、戦いに挑む宇野の演技には期待がかかる。宇野は年明けから練習拠点をスイスに移したことを理由に、新しい環境に慣れることを優先して四大陸選手権を辞退。「世界選手権に向けてジャンプの精度とプログラムの完成度を高めていきたい」と、現在は3月に照準を合わせて練習を重ねている。世界選手権2連覇中のネイサン・チェンと羽生結弦と繰り広げられる三つどもえの戦いに、世界中の熱視線が注がれる。

宇野昌磨は3月の世界選手権に照準を合わせ、四大陸選手権の出場は回避。世界選手権ではネイサン・チェンと羽生結弦と熱戦を繰り広げるはず
宇野昌磨は3月の世界選手権に照準を合わせ、四大陸選手権の出場は回避。世界選手権ではネイサン・チェンと羽生結弦と熱戦を繰り広げるはず宇野昌磨は3月の世界選手権に照準を合わせ、四大陸選手権の出場は回避。世界選手権ではネイサン・チェンと羽生結弦と熱戦を繰り広げるはず

女子代表の樋口にとっては、2シーズンぶりとなる世界選手権の舞台。「弱気にならないような練習を積み重ねて、次はちゃんとトリプルアクセルを跳べるようにしたい」と意気込んでいる。宮原も2月7日のババリアン・オープンで優勝するなど、好調をキープ。「すべての力を振り絞る」と覚悟を持って挑むつもりだ。

世界選手権は3月16日から22日までカナダのモントリオールで行われる(本戦は18日から開幕)。

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