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フィギュアスケート全日本選手権レビュー:紀平が4回転回避も初優勝! 宇野はフリーで逆転し4連覇

絶対王者の羽生結弦は4年ぶりの優勝を逃し、宇野を称える

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

第88回フィギュアスケート全日本選手権大会が、12月19日から22日まで国立代々木競技場第一体育館で行われた。男子では絶対王者の羽生結弦、そして4連覇を狙う宇野昌磨、女子では初制覇をめざす紀平梨花、4度の優勝経験を持つ宮原知子と、名実ともに日本最高峰の選手たちが頂点を競った。氷上で繰り広げられた、激しくも美しい熱戦を振り返ろう。

紀平梨花は合計スコアで229.20点をたたき出し、初優勝を果たした

男女計60選手+5組が日本一をめざした大会

フィギュアスケート全日本選手権大会は、日本フィギュアスケート連盟が主催する、フィギュアスケートの日本一を決める舞台だ。各地区の予選を勝ち抜いた選手と、予選免除者の計60選手+5組が出場した。

12月19日に先陣を切って行われたのは、女子ショートプログラム(以下SP)と、男女のペアがジャンプやリフトを交えながらダイナミックに踊るペア競技のSPだ。紀平梨花が73.98点で首位発進。2位には70.11点で宮原知子、3位には69.95点で坂本花織、以下樋口新葉(わかば)、山下真瑚、本田真凜と続いた。1組しか出場しなかったペアでは三浦璃来(りく)&木原龍一組が、53.95点をマークした。

20日の男子SPでは、4大会ぶりの出場となった羽生結弦が圧倒的な実力を見せた。国際大会ではないため非公認記録ではあるものの、世界最高得点となる110.72点でトップに立つ。4連覇を狙う宇野昌磨が105.71点で2位、ジュニアグランプリファイナルで日本選手4人目の優勝を果たした佐藤駿が82.68点で3位と好発進した。

ジャンプやリフトがなく、2人が寄り添って優雅に舞うアイスダンスのリズムダンスでは、私生活でも夫婦として手を取り合う小松原美里&ティム・コレト組が息ぴったりの演技を見せ、首位に立った。

21日はついに女子の日本一が決定した。SPで首位につけた紀平は、この日のフリーでもトリプルアクセル2本を成功させるなど、安定した演技を披露し、155.22点を獲得。合計スコアを229.20点に伸ばし、2位の樋口に22点以上の大差をつけて見事初優勝を果たした。

左から銀メダルの樋口新葉、金メダルの紀平梨花、銅メダルの川畑和愛。樋口と紀平は2020年3月の世界選手権に出場する

2年間表彰台に立てていなかった樋口は、大きなミスなく演技を終えて、SPの4位からランクアップを見せ、準優勝となった。3位に食い込んだのは17歳の新星、川畑和愛(ともえ)。SPの7位から大逆転を見せ「すごくびっくりしている。実感がない」と話した。

ペアの三浦&木原組は合計点を170.11点に積み上げ、優勝を果たしている。

最終日の21日は、男子フリーで波乱が巻き起こった。SPで2位だった宇野が4回転ジャンプを3回成功。ミスのない完璧な演技を貫き、フリーで1位となる184.86点をマークし、合計得点を290.57点として逆転優勝の4連覇を達成した。羽生は得意のジャンプの着氷が乱れたり、トリプルアクセルでも転倒したりするなど不調が目立った。得点は172.05点にとどまり、最終スコアは282.77点で2位に終わった。3位には16歳の鍵山優真が入った。SPでは7位だったものの、フリーでは2位となる180.58点を記録し、一気に順位を上げた。アイスダンスのフリーダンスでは小松原&コレト組が連覇を達成した。

男子で優勝を果たしたのは宇野昌磨(中央)。羽生結弦(左端)は銀メダルに終わった。16歳の鍵山優真(右端)が3位に食い込んだ

紀平が歓喜の初優勝、宇野はSP2位からの逆転V

今大会で「新女王」となった紀平梨花は、“女子4回転時代”に果敢に挑んでいる。

イタリアで12月上旬に行われたグランプリファイナルでは失敗して転倒したため、今大会で「何があっても4回転サルコーを入れるつもり」と意気込んでいたが、結局今大会のフリーでは跳ばない判断を下した。その背景には当日の午前練習での不調があったようだ。トリプルアクセルでも失敗してしまった紀平は、自身のコンディションを冷静に判断したうえで、「アクセルに練習の時間をかけて、トリプルアクセルからの連続ジャンプを入れようと」決断。より確実性を高める選択をした。

大会が続き、疲労も溜まって、彼女の胸の内は正直なところ不安でいっぱいだったという。しかしそんな時に支えとなったのは、ファンからの手紙。「感謝を感じた大会だった」と振り返った。「不安のなか、あの演技ができたのは本当にびっくりしたし、うれしい気持ち」と初の日本一を喜んだが、まだまだ歩みを止めるつもりはない。次に見据えるのは2020年3月に行われる世界選手権の表彰台だ。「4回転を頑張らないといけないという気持ちがある」と、新たな目標を自らに課し、前を向いた。

宇野昌磨にとっては、初めて“絶対王者”の羽生結弦に勝った記念すべき一日となった。

宇野はフリーで4回転フリップ、4回転トーループなどを見事に跳び、スピンとステップでもいずれも最高評価のレベル4を獲得。これまで羽生が欠場した大会で優勝したことは3度あったが、ともに出場した大会で羽生を上回ったのは初めてだった。「スケート人生の大きな目標として羽生選手に一度でいいから勝ってみたかった」と話し、羽生も「昌磨が(不調にあえぐ状況から)戻ってきてくれて正直にうれしい」と勝者を称えた。

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世界選手権には宇野、羽生、田中、紀平、新葉、宮原が出場

今大会は2020年3月にカナダで行われる世界選手権の代表選考会も兼ねていた。優勝者は自動的に世界選手権代表に内定し、2枠目は今大会の2、3位、もしくはGPファイナル上位2名、国際スケート連盟が定める世界ランク上位3名から総合的に判断。3枠目はここで漏れた選手や今季の世界ランク、国際スケート連盟公認の合計得点で判断すると定められていたため、表彰台争いはさらに熾烈を極めた。

フィギュアスケートは冬季五輪の実施競技であり、次回のオリンピックの舞台は2022年の北京大会となる。オリンピック出場権を獲得するには、開催前年の世界選手権の結果が重視されるため、代表選考に直接影響するのは2021年の世界選手権の結果となるが、選手たちにとってはいいイメージをつかんでおくためにも、2020年大会から世界選手権の雰囲気に触れておきたいところだろう。

大会終了後には男子の宇野、羽生、そして田中刑事、女子の紀平、樋口、そして宮原が世界選手権の代表選手に選ばれたことが発表された。ペアでは三浦&木原、アイスダンスでは小松原&ティム・コレトが出場する。ジュニア世代の鍵山、そして女子総合6位となった坂本は宇野、羽生、紀平、樋口らとともに、2020年2月に韓国で開催される四大陸選手権に派遣される。

2020年明け早々から注目の大会が立て続けに行われるフィギュアスケート界。海外勢との熾烈な争いからも目が離せない。