【プレイバック】強豪アメリカを下し、なでしこジャパンが2011年W杯を制す。日本女子サッカーのレジェンド澤穂希は大会MVPと得点王に

開催国ドイツとの準々決勝は延長戦に決勝弾

2011年夏、澤穂希や宮間あやなどを含むサッカー女子日本代表は新たな歴史をつくった。「なでしこジャパン」の愛称で親しまれるチームは、世界制覇を達成。強豪アメリカとの決勝で繰り広げられた死闘は、今でも女子サッカー史において語り継がれている。2011年、ドイツで行われた女子ワールドカップにおけるなでしこジャパンの戦いぶりを振り返る。

W杯で5大会中2回の優勝を誇るアメリカを下し、なでしこジャパンは世界の頂点に立った
W杯で5大会中2回の優勝を誇るアメリカを下し、なでしこジャパンは世界の頂点に立ったW杯で5大会中2回の優勝を誇るアメリカを下し、なでしこジャパンは世界の頂点に立った

日本の優勝オッズは15.0倍。下馬評は高くなかった

国際サッカー連盟(以下FIFA)による2011年女子ワールドカップ(以下W杯)は、2011年6月26日から7月17日にかけてドイツの9都市で行われた。

第6回目の女子W杯となった世界大会は、開催国のドイツに、各大陸の予選を勝ち抜いた15カ国を加えた合計16カ国が出場。4チームずつ4つのグループに分かれて、決勝トーナメント進出を争った。

優勝候補にはアメリカを推す声が多かった。大会開催時のFIFAランキングでは堂々の1位に君臨し、過去5大会で2度の優勝を誇る世界トップレベルの強豪だ。開催国のドイツも過去に2度W杯を制した実績を持ち、サッカー大国ブラジルも初の世界一の座を狙っていた。

組み合わせ抽選会の時点でFIFAランキング5位だった日本は、アメリカ、ドイツ、ブラジルと並びシード国の一角を担った。もっとも、イギリスのブックメーカー「ラドブロークス」による日本の優勝オッズは、W杯開幕時で15.0倍。世界的に見て上位に位置する国の一つではあったものの、優勝候補とは言い難く、下馬評は決して高いわけではなかった。

最終成績は、優勝が日本、準優勝がアメリカ、3位がスウェーデン、4位がフランスだった。注目は銅メダルを獲得したスウェーデン。グループリーグではアメリカを2−1で破り、グループCを首位突破した。準決勝で日本に1−3で敗れたが、フランスとの3位決定戦を制して表彰台に上がった。

準々決勝のドイツ戦は延長戦に突入。途中出場の丸山桂里奈(奥)が108分に値千金の決勝ゴールを決めた
準々決勝のドイツ戦は延長戦に突入。途中出場の丸山桂里奈(奥)が108分に値千金の決勝ゴールを決めた準々決勝のドイツ戦は延長戦に突入。途中出場の丸山桂里奈(奥)が108分に値千金の決勝ゴールを決めた

2度のリードを許しながら決勝でアメリカを下す

なでしこジャパンの優勝までの足跡を振り返ってみよう。

グループリーグでは、ニュージーランド、メキシコ、イングランドと同じグループBに振り分けられた。

初戦の相手はニュージーランド。高さとパワーを特長とするチームとは、2008年の北京五輪のグループリーグ初戦でも対戦している。2点を先行され、終盤に辛くもドローに持ち込んだ、日本にとっては苦い記憶のあるチームだった。それでも、ドイツW杯では開始6分に永里優季のゴールで先制。直後に追いつかれたものの、68分の宮間あやの決勝点で逃げ切り、日本は白星スタートを切った。

メキシコとの2戦目は、大黒柱である澤穂希のハットトリックもあって4−0の快勝。大会前、佐々木則夫監督は「メキシコは、守備はそれほど強くないですが、攻撃になるとものおじしないで仕掛けてくるので、冷静な対応が必要」と分析。攻守において指揮官がイメージしたとおりの落ち着いた試合展開に持ち込めた。

グループ第3戦のイングランド戦は、15分と66分に失点を喫して0−2の敗戦を喫した。対戦前、指揮官は「一人ひとりのフットボーラーとしてのポテンシャルがすごく高くて、質が高い」とイングランドを大いに警戒していたものの、この大会唯一の黒星をつけられてしまう。

この結果、日本はグループCを2位で通過することになり、準々決勝ではグループAを1位で突破してきたドイツと対戦することになった。開催国ドイツとの一戦は延長戦にもつれ込む激戦の様相を呈した。一進一退の攻防が続くなか、途中出場の丸山桂里奈が108分にゴールをこじ開ける。1−0でベスト4に駒を進めた。

続く準決勝のスウェーデン戦では、川澄奈穂美が躍動した。19分、64分に得点を挙げ、3−1の逆転勝利に大きく貢献した。エースの澤も60分にゴールを挙げている。

決勝のアメリカ戦は文字どおり死闘となった。69分と104分に2度のリードを許したものの、宮間と澤のゴールで同点に追いつく。延長戦を終えて迎えたPK戦、アメリカは最初の3人がゴールネットを揺らすことができず、なでしこジャパンが世界一の称号を手に入れた。延長後半終了3分前、宮間のCKを右足アウトサイドで合わせた澤のボレーシュートによる同点弾は、世界制覇への執念を感じさせるゴールだった。

司令塔の宮間あや(左)は攻守に存在感を見せつけた。決勝のアメリカ戦では81分に同点弾を決めている
司令塔の宮間あや(左)は攻守に存在感を見せつけた。決勝のアメリカ戦では81分に同点弾を決めている司令塔の宮間あや(左)は攻守に存在感を見せつけた。決勝のアメリカ戦では81分に同点弾を決めている

「得点王もMVPも、みんながいたから取れた」

この大会、澤の存在感は圧巻だった。大会MVPと得点王のダブル受賞という偉業も、彼女の活躍ぶりを大いに物語っている。決勝終了後、日本のキャプテンは、メディアの前で次のように話した。

「頂点をめざしてやってきたので、優勝はうれしい。得点王もMVPも、みんながいたから取れた。アメリカに対してゴールが取れたこと、あそこ(試合終了直前の117分)で同点ゴールができたのがすごくうれしい。みんなが最後まで走り続けた結果があの点だったと思う。本当にみんなに感謝している」

背番号10の澤とともにチームの中軸を担ったのが宮間だった。抜群のサッカーセンスと左右両足から繰り出す正確なキックを武器に、日本の攻撃をけん引した。もっとも、希代の司令塔は、世界一に輝いた直後でも浮かれた様子はなかった。

「本当に『あの国はいい』と言われるには、PK戦になる前に決着をつけないといけない。ラッキーなところがあったので、(優勝しても)その悔しさがあった。でも、あれだけ声が聞こえなくても、(ピッチ上で)みんなが考えることは一緒だと感じたし、みんながいい融合をした。チームの成長もあるが、自分たちのほうが運を引きこむ力や積み上げてきたものなど、すべてがいい形で出たかと思う」

次代を担う選手たちも貴重な経験を積んだ。熊谷紗希が「優勝はしたが、自分にとってはまだ通過点。次につながる大会になった」と語れば、岩渕真奈は「先輩方は勝負強いし、自分も見習わないと、と思う。これからもっと努力して、この舞台を経験させてもらったので、責任を持ってやっていきたい」と将来に向けてコメントを残している。

なでしこジャパンの世界制覇から8年が経った。それでも、あのドイツでの記録と記憶は、色あせることなく語り継がれていくだろう。ドイツでの記録と記憶が、なでしこジャパンのさらなる躍進を後押ししていく。

澤穂希(左)は通算5ゴールを挙げて大会MVPと得点王に。佐々木則夫監督(右)は就任から4年を待たずチームをW杯優勝に導いた
澤穂希(左)は通算5ゴールを挙げて大会MVPと得点王に。佐々木則夫監督(右)は就任から4年を待たずチームをW杯優勝に導いた澤穂希(左)は通算5ゴールを挙げて大会MVPと得点王に。佐々木則夫監督(右)は就任から4年を待たずチームをW杯優勝に導いた

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