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プロ野球やJリーグはPCR検査導入で試合再開へ。ファンの観戦術にも変化【コロナ禍でのアスリートたち】

バーチャル始球式や段ボールパネル設置など工夫を凝らす

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

新型コロナウイルスの影響でさまざまなビッグイベントが、軒並み中止や延期を余儀なくされているスポーツ界。苦難にあってどうしているのか注目が集まるなか、各リーグやクラブが知恵を絞り、コロナ禍を乗り越えるべく工夫を凝らした取り組みを行っている。6月19日のプロ野球開幕を皮切りに、日本のスポーツ界も再び動き出した。

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NPBとJリーグが合同で対策連絡会議を設置

日本で早い時期から大きな動きを見せたのは、国内の2大プロスポーツであるプロ野球とサッカーのJリーグだ。

公式戦の開催が見送られると、3月3日に日本野球機構(NPB)とJリーグは合同で「新型コロナウイルス対策連絡会議」を設置。専門家の助言を受けながら感染防止対策を共有し、段階的な制限を設けて試合開催に至った。プロ野球は6月19日より開幕。無観客ではあったものの、3カ月遅れのスタートを盛り上げるべく、さまざまな催しが用意された。

東北楽天イーグルスの本拠地である楽天生命パーク宮城では、オリックス戦のライブビューイングを実施。約110人のファンが、グループごとに1.5メートル以上の距離を保ちながら、大声での応援や観客同士のハイタッチを控えた中で試合映像を観て楽しんだ。同様のライブビューイングはマツダスタジアムでも行われ、こちらでは横浜DeNAベイスターズvs広島東洋カープの一戦が配信された。同スタジアムのスタンドは3万3千人の収容が可能だが、感染防止のため、抽選で当たった約800人のみが来場し、マスクの着用も義務づけられた。

福岡PayPayドームでは、一風変わったイベントが行われた。福岡ソフトバンクホークスvs千葉ロッテマリーンズ戦の始球式に、ラグビー元日本代表の福岡堅樹(けんき)が「バーチャル」で参加。紺色のスーツ姿で大型スクリーンに登場した福岡は、エアーでの投球動作を終えると、「スポーツの力で日本を盛り上げましょう!」とコメントした。

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リーグは2週間に一度のPCR検査を12月まで継続

プロ野球やJリーグが公式戦開催へ踏み切った背景には、チームの選手やスタッフ、審判員らへの感染を調べるPCR検査の実施がある。

プロ野球は開幕前に12球団の1軍選手らにPCR検査を実施。全員の陰性を確認し、国内主要スポーツの先陣を切って開幕した。Jリーグは検査センターを設立し、民間の検査機関と連携して12月のシーズン終了まで2週間に一度、最大で約3600の検体をチェックする。検査の結果、陰性だった人のみが試合への登録が可能になる。

選手同士の接触機会が多いサッカーは、外出自粛期間中から各クラブが工夫を凝らして選手のコンディション維持に努めてきた。セレッソ大阪は緊急事態宣言下、オンラインミーティングアプリZoomを使い、コーチ陣が見守るなかで選手全員が同時刻に自宅でフィジカルメニューをこなし、さらには映像を駆使したクイズ形式の戦術トレーニングも行った。

5月15日、J1で最初に全体練習を再開したサガン鳥栖は、高橋義希や小林祐三をはじめとする選手たちがクラブハウスを使用せず、屋外に設置された仮設テントで着替えた。選手同士の接触を伴う練習を避けるため、長所である球際の強化を封印し、パス交換を中心に攻撃の時間を長くする戦術に転換した。

Jリーガーで初めて新型コロナウイルスへの感染を公表した酒井高徳が所属するヴィッセル神戸は、練習開始まで選手たちは駐車場に待機、練習着の洗濯は各自が自宅でするなどの感染予防策を実施した。7月4日のJリーグ再開前にはアンドレス・イニエスタがオンライン取材に応じ、「自分だけでなく世界的にも、スポーツ界でも難しかった時期だけれど、できる限り最高の状態で試合に挑めるように頑張ってきた。精いっぱいやり切り、多くの人に喜びを伝えたい」とコメント。イニエスタは4月にはスペインの故郷アルバセテに医療用のマスクを寄付している。

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欧州では「ドライブスルー型」など新たな観戦スタイルも

大相撲も7月場所の無観客開催をめざして「無観客開催運営プロジェクトチーム」を発足。陸上や体操、スポーツクライミングなども延期となっていた主要大会が開催に向けて動き出し、スポーツ界は光を取り戻しつつある。東京都では7月2日から連続で新型コロナウイルスの感染者が100人を超えており、当面は無観客や、収容人数を制限しての開催が現実的だ。6月23日にはテニス選手で、アドリアン・ツアーの開催者の一人でもあるノバク・ジョコビッチが新型コロナウイルスに感染したことを発表。まだまだ楽観できない状態が続く。

それでもファンを楽しませる斬新なアイデアがコロナ禍のスポーツ界で取り入れられている。

サッカーの欧州主要リーグで最も早く再開したドイツ・ブンデスリーガでは、ボルシアMGがファンの写真を貼った段ボールを1体19ユーロ(約2300円)で販売し、試合時のスタンドに約1万3000体が並べられた。「段ボールサポーター」による応援プロジェクや収益化はJリーグでも注目を集めており、サガン鳥栖やアルビレックス新潟、大分トリニータなどが採用している。

デンマークでは、ピッチを囲むように配した映像装置にオンラインでファンを登場させたり、駐車場に大画面を設置して車の中から応援する「ドライブスルー型」の観戦を実施したりするなど、工夫を凝らすクラブもある。Jリーグでも段ボールパネルやスマートフォンを利用したリモート応援システムなどが導入されている。

Jリーグのほか、バスケの「Bリーグ」、バレーボールの「Vリーグ」などスポーツ9球技最高峰12リーグによる日本トップリーグ連携機構は、「無観客試合」に代わる名称を「リモートマッチ」と定めた。略称は「リモマ」とし、リモートで応援するファンを「リモーター」と呼ぶ。サッカーのJ1は7月4日に「リモートマッチ」の形で再開。選手同士の接触も可能な限り避けるべく、ベンチを増設するなどの対応をとっている。

プロスポーツ界では懲罰を意味する「無観客試合」ではなく、選手とファンのつながりを強調するもので、コロナ禍を前向きに乗り越えようという試みだ。新型コロナウイルスがスポーツ界にもたらした影響は、経済的損失などを考えれば甚大だが、一方で、新たな競技の形や新たな観戦スタイルを見出すきっかけにもなっている。