ボクシング注目選手:リオの雪辱を誓う成松、森坂に加え、井上尚弥が絶賛する新星に注目。女子は那須川天心の幼馴染に期待

日本が2012年ロンドン五輪以来のメダルを狙う(アマチュア)ボクシング。男子は階級未定で、不透明な部分もあるが、前回大会からの連続出場を狙う選手、プロボクサーが絶賛する新星にメダル獲得を期待がかかっている。女子では那須川天心の幼馴染という選手も話題だ。そんな注目ファイターたちを紹介する。

東京五輪ボクシングで期待されるファイターたち。成松大介はそのひとり
東京五輪ボクシングで期待されるファイターたち。成松大介はそのひとり東京五輪ボクシングで期待されるファイターたち。成松大介はそのひとり

◆東京五輪ボクシング競技概要

東京五輪では、男子8階級(細かい階級は2019年4月30日現在で確定していない)、女子5階級(フライ51キロ級、フェザー57キロ級、ライト60キロ級、ウェルター69キロ級、ミドル75キロ級)で行われる。

試合は3分×3ラウンド制で、ラウンド終了後は5人のジャッジによる採点による判定で決まる。ほかにも、棄権などによるT.K.O(テクニカルノックアウト)、レフェリーが試合を止めるレフェリーストップ、そしてK.Oや負傷・失格によって勝敗がつく。

日本は前々回のロンドン大会で、男子は金メダルと銅メダルを獲得したが、前回の2016年リオデジャネイロ大会では、男女共にメダルはなしに終わった。男子は、9月に世界選手権が行われる。ここでメダルを獲得できれば、東京五輪でのメダル獲得への道は開けるだろう。

女子は2018年の世界選手権で、和田まどか(ライトフライ級)、並木月海(フライ級)が銅メダルを獲得。2019年度の世界選手権(ロシア・ウランウデ)を控えているが、2年連続のメダル獲得が実現すれば、こちらもアマチュアボクシング界にとって明るいニュースになるはずだ。

ここからは選手個々にスポットを当てていく。

リオ五輪も経験したベテラン成松大介。地元開催の東京五輪で錦を飾れるか
リオ五輪も経験したベテラン成松大介。地元開催の東京五輪で錦を飾れるかリオ五輪も経験したベテラン成松大介。地元開催の東京五輪で錦を飾れるか

◆成松大介:一時は現役を諦めかけたベテランファイター

自衛隊体育学校所属。熊本県出身の29歳。高校からボクシングを始めた成松は、5歳から小学校4年生まではサッカー、小学校5・6年生ではバスケットボール、中学生になると軟式テニス部と部活動を渡り歩いていた。

ボクシングとの出会いは、熊本県立熊本農業高校に入学してから。入学後すぐにボクシング部に所属し、3年時には全国優勝を達成。高校卒業後は、東京農業大学を経て多くのメダリストを輩出した自衛隊体育学校へ。

その後は全日本選手権で優勝するなど、ライト級の第一人者になる。そして、2016年3月のリオ五輪予選で3位に入り、晴れて五輪日本代表となった。本戦では2回戦敗退に終わったが、全日本選手権は2017年から2連覇中で、アジア大会でも銅メダルを獲得し、世界と戦える力があることを証明した。

前回大会に続いて五輪出場を狙う成松は、「的確に勝つのが信条」と胸を張る。協会とのトラブルに巻き込まれながらも、そんな逆境にも負けない選手として、東京五輪でも上位に進むことが期待される。

主な戦歴、成績

  • 2010年~15年(6連覇)、17~18年 日本選手権8回優勝
  • 2013年 世界選手権ベスト16
  • 2015年 世界選手権ベスト16
  • 2016年 リオデジャネイロ五輪アジア・アセアニア予選 3位
  • 2016年 リオデジャネイロ五輪男子ライト60キロ級2回戦敗退
  • 2018年 ジャカルタ・アジア大会、男子ライトウエルター級銅メダル
森坂嵐は、陸上で養った持久力を強みに持ち、176cmのリーチを活かしたファイトを身上とする
森坂嵐は、陸上で養った持久力を強みに持ち、176cmのリーチを活かしたファイトを身上とする森坂嵐は、陸上で養った持久力を強みに持ち、176cmのリーチを活かしたファイトを身上とする

◆森坂嵐:陸上で培ったスタミナと強打がトレードマーク

東京農業大学所属。大阪府出身の22歳。ボクシングに出会ったきっかけは、姉の影響で始めた空手だった。空手道場で出会ったジムのトレーナーと共にボクシングの練習を重ねていく。一方、部活は陸上部所属。持ち味である足腰の強さは、この頃の陸上競技で養われたものと言われている。

中学卒業後は、奈良朱雀高校に進学。1年生の時は県予選で敗れ、2年生では3位で終わったが、アジアユース選手権ベスト8、世界ユース選手権ベスト16に入る。世界で実績を残した森坂は、3年生に進級後、春に行われる全国高等学校ボクシング選抜大会で初優勝。その後、インターハイ、国体でも優勝を飾り、高校3冠を達成した。

高校卒業後、世界タイトルホルダーを多く輩出しているボクシングの名門、東京農業大学に進学。大学1年生で全日本選手権を制し、バンダム級日本代表として、リオ五輪選考会を兼ねた世界選手権で4位に入り、五輪本戦のチケットを獲得した。本戦では初戦敗退で涙を飲むが、その後の全日本選手権ではライト級で3連覇を達成。東京大会は階級が未定だが、57キロ級での出場を目指す。

日本国内では屈指の強さを見せる森坂は、陸上競技で積み重ねてきた持久力、そしてそのスタミナに裏打ちされた試合後半でも威力の衰えない強烈な左フックがトレードマークだ。軽量級ながら176センチという身長の高さと、手足の長さを生かした攻撃ができれば、どんな相手でも互角以上の勝負ができるだろう。

主な戦歴、成績

  • 2014年 高校3冠達成
  • 2015年 関東大学リーグ戦 バンタム級 階級賞
  • 2015年 国民体育大会 成年の部 ライト級 優勝
  • 2015年 日本選手権 バンタム級 優勝
  • 2016年 リオデジャネイロ五輪 バンダム級1回戦敗退
  • 2016年~18年 全日本選手権 ライト級3連覇
アマ王者・堤駿斗とスパーリングで拳を交わした井上尚弥は、「アドバイスする必要がない」とその才能を絶賛した
アマ王者・堤駿斗とスパーリングで拳を交わした井上尚弥は、「アドバイスする必要がない」とその才能を絶賛したアマ王者・堤駿斗とスパーリングで拳を交わした井上尚弥は、「アドバイスする必要がない」とその才能を絶賛した

◆堤駿斗:“モンスター”井上尚弥が絶賛する最強アマ王者

東洋大学所属。千葉市出身の19歳。小学校5年生の時に空手からボクシングに転向し、中学卒業後はボクシングの強豪・習志野高校に進学する。1年生で高校3冠を達成。2016年11月にロシアで行われた世界ユース選手権で、日本人初のフライ級王者となり、世界を驚かせた。当時、高校生として史上初の日本ボクシング協会選定の最優秀選手賞を獲得した。

2017年のアジアユース選手権バンタム級でも、2016年に続き連覇を達成すると、高校最後のシーズンで6冠を達成。そして、高校生として出場した全日本選手権では、バンダム級に出場した。準決勝で全日本選手権2連覇中だった田中克明を、決勝では中野幹士を下し、現WBA世界バンタム級王者の井上尚弥以来、6年ぶりの高校生チャンピオンとなった。

その井上尚弥が「アドバイスする必要がない」と絶賛する堤は、強烈な左ジャブを武器に国内外でジュニアから結果を残してきた。2018年全日本選手権ではベスト4に終わったが、日本人として世界ユース選手権王者となったことから、メダル獲得の期待も大きい。

「東京五輪で金メダルを獲ること」を目標として即答するほど、五輪に対する想いは誰よりも強い。世界の強者たちと互角以上にできることを示す意味でも、9月に控える「2019年 AIBA世界選手権大会」で結果を残すことだ。左ジャブに磨きをかけて、世界に名前を残せるのか。

主な戦歴、成績

  • 2015年 高校1年生ながら高校3冠(選抜、インターハイ、国体)達成
  • 2016年 世界ユース選手権フライ級 金メダル
  • 2016年 アジアユース選手権バンダム級 金メダル
  • 2017年 アジアユース選手権バンダム級 金メダル 最優秀選手賞獲得
  • 2017年 国体などを制して高校6冠
  • 2017年 全日本選手権 優勝
  • 2018年 全日本選手権 ベスト4
高校卒業後も幼馴染の那須川天心と手を合わせるなど、男子顔負けの強打を磨く並木月海
高校卒業後も幼馴染の那須川天心と手を合わせるなど、男子顔負けの強打を磨く並木月海高校卒業後も幼馴染の那須川天心と手を合わせるなど、男子顔負けの強打を磨く並木月海

◆並木月海:那須川天心と幼馴染の女子ハードパンチャー

自衛隊体育学校所属。千葉県出身の20歳。153センチの短躯ながら、幼少期から空手やキックボクシングなどの格闘技を経験し、ハートの強さ、ハードパンチを磨いてきた。女子ながら男子との試合もこなし、最初に負けた相手が、現在「RIZIN」などで活躍している那須川天心だった。

中学生になると、当時WBAスーパーフェザー級王者だった内山高志の試合観戦をきっかけに、ボクシングに転向する。そして、中学3年生になってから2020年東京五輪開催が決まったことで、ボクサーとして心に火が付き、内山が卒業したボクシング名門校の花咲徳栄高校に進学した。

千葉から埼玉の片道2時間半の通学という環境ながら、母親のバックアップもあって、2015年11月に行われた国際大会で金メダルを獲得。高校卒業後は有力アマボクサーの受け入れ先になっている自衛隊体育学校へ。2018年世界選手権銅メダルなど、海外で実績を残している。

男子顔負けのハードパンチャーで、自衛隊体育学校入隊前は、幼馴染の那須川天心のジムで練習をこなしてきた。海外選手に対しては強さを発揮しているが、国内に目を転じると、全日本も含めてシニアでは結果を残せていない。ただ、海外選手に強いというのは大きなアドバンテージだ。

こと東京五輪代表争いにおいては、女子ボクシング界の草分け的存在、和田まどか(福井県スポーツ協会)が並木にとって最大の脅威となる。東京五輪では和田が主戦場とするライトフライ(49キロ)級がないため、並木のフライ(51キロ)級での代表入りを虎視眈々と狙っている。並木は否が応でも国内選手との競り合いに勝つしかない。

主な戦歴、成績

  • 2014年 全日本UJボクシング大会・女子中学生の部優勝
  • 2014年 関東高校ボクシング女子選抜大会・フライ級優勝
  • 2015年 全国高校選抜大会・女子フライ級優勝
  • 2018年 第6回大統領杯 女子51㎏級金メダル
  • 2018年 世界選手権 女子フライ級銅メダル

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