ポスト木村沙織の役割求められる石井優希は、自信を手に全日本の要へ

石井優希は2018年の世界選手権で「火の鳥NIPPON」に復帰した。
石井優希は2018年の世界選手権で「火の鳥NIPPON」に復帰した。石井優希は2018年の世界選手権で「火の鳥NIPPON」に復帰した。

経験重ねて強くなったムードメーカー

強烈なスパイクと巧みなフェイントを武器に、全日本のメンバーとして、2016年リオデジャネイロ五輪に出場。明るい笑顔でチームの雰囲気づくりにも貢献した石井優希。所属している久光製薬スプリングスでも2017-18シーズンのV・プレミアリーグでチームを優勝に導き、MVPとレシーブ賞を受賞した。

10月に日本で開催された2018年女子バレーボール世界選手権。「火の鳥NIPPON」に復帰した石井は、「ここぞ」という場面で活躍、決勝ラウンドへの進出に大きく貢献した。「いまのびのびと楽にプレーができている」と、ここ最近のコンディションの仕上がりの良さに自信をのぞかせる。「火の鳥NIPPON」の中田久美監督は久光製薬スプリングスの元監督。信頼関係も厚く、石井には2020年東京五輪での活躍が期待されている。

世界選手権で存在感

2018年10月、24カ国が参加する世界選手権が日本で開催された。日本は決勝ラウンドに進出するも、メダルには手が届かず、5位決定戦に回るもアメリカに敗れて6位となった。石井は全12試合中4試合にスタメン出場。大会を通じて出番は少なかったが、投入された試合の多くで、試合の行方を左右する要所で、スパイクやサーブを決めて貢献し、世界の強豪チームに食い下がった。対アメリカ戦で石井は、第2セットから投入され、激しい競り合いとなった第3セット。石井のスパイクで点差を広げ、セットポイントの25点目を、自らのスパイクで決めてセットを奪い、一矢を報いた。

2018年、石井にとって、もうひとつ大事な大会になったのが、V・プレミアリーグだ。所属する久光製薬スプリングスを攻守で引っ張り、全勝優勝による2シーズンぶりのV奪還に大いに貢献した。また、久光製薬スプリングスは石井優希を筆頭に、新鍋理沙、長岡望悠(イタリアに移籍・怪我で離脱)、野本梨佳、岩坂名奈など、全日本のメンバーを多く抱えている。まさに「全日本の縮図」のようなチーム。そこで成長し、活躍することは、東京五輪に向けての大きな弾みとなっている。

持ち前のパワフルさが目に留まり、V・プレミアリーグへ

石井は岡山県出身、1991年5月8日生まれ。身長180cm、ポジションはウイングスパイカーだ。最高到達点はスパイク が302cm、ブロックが287cm。全日本での背番号は7だ。

家族は両親と姉で、ママさんバレーをしていた母親の影響で、小学校低学年からバレーを始めた。中学校は地元の倉敷市立東洋中学校へ進み、高校は岡山県屈指の女子バレーの名門、私立就実高校へ進学。春高バレーでは1年生のときにベスト16進出、2年生になると新チームのエースに起用され、キャプテンとしてチームをけん引するも、2回戦で敗退して涙をのんだ。しかし、2007年、ユース代表に選出され、アジアユース選手権に出場し、優勝も経験している。高校時代から持ち前のパワーあふれるスパイクで、大器の片鱗を見せつけ、その将来性がV・プレミアリーグの目に留まり、卒業後に久光製薬スプリングスに入団した。



東京五輪へ向け期待が寄せられている
東京五輪へ向け期待が寄せられている東京五輪へ向け期待が寄せられている

中田監督が我慢の起用でメンタル強化

入団した年の11月、V・プレミアリーグ開幕2戦目でデビューを果たした。翌2011年には、全日本女子に初選出。5月に行われたモントルーバレーマスターズ予選のオランダ戦で、初めて国際試合のコートに立った。

しかし、日本女子バレーが28年ぶりに銅メダルを獲得したロンドン五輪。歓喜の輪の中に、石井の姿はなかった。石井自身、全日本でプレーする自信が持てず、自分の持ち味を生かしきれないまま、全日本から遠のいてしまい、オリンピックメンバーからも落選してしまった。

2012-13シーズンは石井にとって大きな転機となった。この年から久光製薬スプリングスの監督に、中田久美(現・全日本女子監督)が就任。「世界で戦う意識を持つ」というコンセプトのもと、中田監督に将来を嘱望され、同期の長岡望悠とともに開幕からスタメンに抜擢。時に攻守に精彩を欠く場面があっても、中田監督は我慢強く、石井を起用し続けて、石井自身もメンタルの弱さを克服していく。結果、石井、長岡の活躍で、V・プレミアリーグを制覇。優勝が決まった瞬間、石井と長岡のふたりは、コート上で抱き合い、喜びを分かち合った。ちなみに、このシーズンにチームは、皇后杯、国民体育大会、黒鷲旗 全日本男女選抜バレーボール大会でいずれも優勝。韓国V・リーグの覇者と対戦する日韓V・リーグトップマッチも勝利を飾り、石井はMVPを受賞している。

石井は自信を胸に、ここから快進撃を始める。2013-14シーズンのV・プレミアリーグでサーブ賞、2014年AVCアジアクラブ選手権で、ベストアウトサイドヒッターを受賞。全日本のメンバーに名を連ねるようになり、2013年ワールドグランドチャンピオンズカップでは銅メダル獲得に貢献。モントルーバレーマスターズ2015(全日本) 大会MVP・ベストアウトサイドスパイカー賞を受賞した。そして、ロンドン五輪で木村沙織がつけていた背番号「12」を受け継ぎ、リオデジャネイロ五輪の予選に出場。見事に予選を突破し、本戦での代表メンバーに選出された(本戦での背番号は「8」)。

そして、予選リーグを突破し、迎えた準々決勝。石井は先発メンバーで出場し、好スパイクを何本も打ち込むも、地力に勝るアメリカにストレート負けを喫して、メダルに手が届かなかった。試合後「これからは自分が引っ張る強い気持ちでやっていきたい」と気持ちを新たにした。

後輩が続々台頭し、レギュラー争いが激化

日本代表チームのパスヒッター(レセプションをするアタッカー)のポジション争いをする上で、ライバルとなるのは新鍋理沙と古賀紗理那だろう。古賀は2016年リオデジャネイロ五輪の代表メンバーから落選したが、その後の成長がめざましい。また、新鍋は代表を辞退し、一時期、国際舞台からは遠ざかっていたが、所属する久光製薬スプリングスで指揮を執っていた中田久美監督が、全日本の監督に就任すると再び代表に名を連ねて、攻守の要として活躍している。2018年の世界選手権で古賀は、ほとんどの試合でスタメン登場し、ベストスコアラー5位、ベストレシーバー4位にランクイン、チームの中心として存在感を示した。

木村沙織(左)と石井優希
木村沙織(左)と石井優希木村沙織(左)と石井優希

求められる、ポスト木村沙織の働き

「余裕が出てきている。今までは周りを気にしすぎていて、昨年の全日本も苦しんだ。それを経験したからこそ、自分が自分のパフォーマンスを上げるためにはこういうやり方がいいというのを見つけられた。あまり大きく人の目を気にすることがなくなって、ちょっと余裕もできた」

2018年4月、V・プレミアリーグ優勝後のインタビューで、自身の成長について、こう自信をのぞかせた。石井は2017-18シーズンV・プレミアリーグのMVPのほかに「レシーブ賞」も受賞した。大柄でバックアタックなど後衛から攻撃参加する選手は、しばしばサーブで狙われる。その石井が「レシーブ賞」を受賞したことは、オールラウンダーとして認められたことを意味している。そして今、全日本が求めている「ポスト・木村沙織」としての役割に、石井がどこまで応えられるかに注目が集まる。

再び代表復帰に、自信が持てなかった時期もあった。2018年10月の世界選手権は先発メンバーから外れることが多く、出番は少なかったが、苦しい場面で石井が活躍し、チームの得点に貢献した。この大会を通じて、世界レベルの相手に善戦できたことで、それまでの不安を払拭するだけの成長を、石井自身は実感したようだ。12月の全日本バレーボール選手権(皇后杯)でも、石井が原動力となり、久光製薬スプリングスは優勝している。同じポジションには、黒後愛という将来有望な後輩が台頭してきている。2020年東京五輪に向け、経験を重ね、プレーが安定してきた石井が、全日本というチームの要になれるのか、大きな期待が寄せられている。

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