レスリング全日本選手権レビュー:乙黒拓斗が東京五輪の切符を獲得。兄の圭祐も「兄弟でオリンピック」に望み

白熱の女子50キロ級は2018年の世界女王、須崎優衣が制す

レスリングの天皇杯全日本選手権が12月19日から22日にかけて行われた。今大会では、男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗が新たに東京五輪代表に内定。最激戦階級の女子50キロ級では、須崎優衣が三つ巴の争いを制し、五輪アジア予選への挑戦権を手にした。

男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗。決勝でテクニカルフォール勝ちを収め、オリンピック行きを内定させた
男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗。決勝でテクニカルフォール勝ちを収め、オリンピック行きを内定させた男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗。決勝でテクニカルフォール勝ちを収め、オリンピック行きを内定させた

乙黒拓斗が日本男子2人目の東京五輪代表内定

東京五輪代表選考を兼ねたレスリングの天皇杯全日本選手権は、各階級で熱戦が繰り広げられた。今大会は、すでに東京五輪出場を決めている男子グレコローマン60キロ級の文田健一郎、女子フリースタイル53キロ級の向田真優、同57キロ級の川井梨紗子、同62キロ級の川井友香子、同76キロ級の皆川博恵が出場を見送った。

今大会で新たに東京五輪切符を獲得したのは、男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗だ。

2018年、世界選手権に初出場し、日本男子最年少の19歳10カ月で金メダルを獲得した乙黒は、連覇を狙った今年の世界選手権で日本の東京五輪出場枠こそ獲得したものの、3位決定戦で敗れてメダルを逃したために、自身のオリンピック行きを内定させられていなかった。

代表権を得るには優勝が必要だった今大会は順調に勝ち進むと、決勝では昨年3位の中村倫也と対戦。乙黒は試合開始から付け入る隙を全く与えず、第1ピリオド終了間際に10−0とし、テクニカルフォール勝ちを収め、満を持してオリンピック行きの切符を手にした。

世界選手権で敗れたことによる「遠回り」が乙黒を強くした。世界選手権では審判の判定に苛立ち、ラフプレーによる反則でポイントを失い、自滅する形で敗れたが、今大会では「落ち着いていた。世界選手権から学んだ」と自信を口にした。

熾烈を極める女子50キロ級の代表争いを制したのは須崎優衣(奥)。準決勝で登坂絵莉、決勝で入江ゆきを下した
熾烈を極める女子50キロ級の代表争いを制したのは須崎優衣(奥)。準決勝で登坂絵莉、決勝で入江ゆきを下した熾烈を極める女子50キロ級の代表争いを制したのは須崎優衣(奥)。準決勝で登坂絵莉、決勝で入江ゆきを下した

女子50キロ級は須崎優衣が三つ巴を制す

女子では、東京五輪で実施される全6階級のうち、50キロ級と68キロ級の代表選手が未定の状態で全日本選手権が開幕した。

熾烈を極める50キロ級の代表争いは特に大きな注目を集めた。2018年の世界選手権女王である須崎優衣、2019年の世界選手権代表である入江ゆき、リオデジャネイロ五輪金メダリストである登坂絵莉による三つ巴に光が当てられた。

何れ劣らぬ実力者がそろうハイレベルな50キロ級の国内選考を勝ち抜いたのは、20歳になったばかりの須崎だった。須崎は今夏、世界選手権代表を決めるプレーオフで入江に敗れ、一度は東京五輪出場が絶望的と見られた。しかし、入江が世界選手権でメダルを逃したことにより、今大会で挽回のチャンスがめぐってきた。

準決勝で登坂を6−0で退けた須崎は、入江との決勝戦で果敢に攻めに出た。1点を先制した後は本来の攻撃的なレスリングが鳴りを潜めたが、「私が勝つという強い気持ち」を保ち続け、相手が消極的として得られるポイントのみで2−1の勝利。接戦をモノすると、両手で顔を覆いマットに突っ伏した。最激戦階級を制した須崎は、2020年3月に行われるアジア最終予選で2位以内に入れば、東京五輪代表に決まる。

68キロ級では、森川美和が代表候補に急浮上している。2018年から五輪4連覇の伊調馨から指導を受ける森川は、準決勝でリオデジャネイロ五輪金メダリストの土性沙羅を撃破。決勝では松雪成葉(なるは)を下し、初優勝を成し遂げた。同階級は日本の五輪出場枠が確保されており、2020年2月に森川と世界選手権代表の土性が五輪出場をかけてプレーオフを戦う。

フリースタイル74キロ級で優勝した乙黒圭祐(左)は弟の拓斗とそろって東京五輪に出場できる可能性をつかんだ
フリースタイル74キロ級で優勝した乙黒圭祐(左)は弟の拓斗とそろって東京五輪に出場できる可能性をつかんだフリースタイル74キロ級で優勝した乙黒圭祐(左)は弟の拓斗とそろって東京五輪に出場できる可能性をつかんだ

乙黒圭祐は「兄弟で東京五輪」に望みをつなぐ

男子は五輪代表選手が決まっていない階級のうち、フリースタイル74キロ級はオリンピック代表枠が確保されているため、今大会で優勝した乙黒圭祐と世界選手権代表の奥井眞生(まお)がプレーオフを戦う。奥井は世界選手権で5位に入賞しており、今大会で優勝すれば五輪代表が決まるはずだったが、まさかの初戦敗退でオリンピックの切符獲得は持ち越しとなった。一方の乙黒は65キロ級で五輪代表に内定した乙黒拓斗の兄で、兄弟そろってのオリンピック出場へ望みをつないだ。

その他の階級は日本のオリンピック出場枠が確保されておらず、今大会の優勝者が2020年3月に控えるアジア予選へと臨む。グレコローマンでは髙橋昭五(67キロ級)、屋比久翔平(77キロ級)、角雅人(87キロ級)、奈良勇太(97キロ級)、園田新(130キロ級)、フリースタイルでは樋口黎(57キロ級)、高谷惣亮(86キロ級)、赤熊猶弥(97キロ級)、田中哲矢(125キロ級)がアジアへの挑戦権を手にした。

高谷は2018年に続く優勝で、74キロ級と79キロ級で出場した大会も含め9年連続での優勝を成し遂げた。9連覇は大会史上5人目の快挙で、これまで浜口京子や吉田沙保里などが達成している。

いよいよ東京五輪代表争いは佳境へ。厳しい国内選考を制し、今大会でアジア予選への挑戦権を手にした選手たちには、オリンピック出場枠の獲得が大いに期待される。

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