レスリング天皇杯全日本選手権プレビュー:2020年へのラストチャンス…出場枠獲得の乙黒拓斗、奥井眞生、土性沙羅は東京五輪行きなるか!?

国内総勢424選手が駒沢体育館で激戦を繰り広げる

レスリング天皇杯全日本選手権が12月19日から22日まで東京都世田谷区の駒沢体育館で行われる。すでに東京五輪出場を決めている選手は出場を見送っているため、今大会は残る出場枠を争う選手たちによる、まさにサバイバルレースの場となる。連続出場をめざす者、初出場を狙う者……憧れのオリンピックの舞台をにらむ選手たちにクローズアップする。

リオデジャネイロ五輪で金メダルを手にした土性沙羅(奥)だが、世界選手権では3位決定戦で敗退。全日本選手権優勝からの東京五輪行きをめざす
リオデジャネイロ五輪で金メダルを手にした土性沙羅(奥)だが、世界選手権では3位決定戦で敗退。全日本選手権優勝からの東京五輪行きをめざすリオデジャネイロ五輪で金メダルを手にした土性沙羅(奥)だが、世界選手権では3位決定戦で敗退。全日本選手権優勝からの東京五輪行きをめざす

東京五輪行き内定の川井梨紗子ら5選手は出場せず

全日本選手権に出場するのは、国内の男子グレコローマン164選手、男子フリースタイル175選手、女子フリースタイル85選手の合計424選手。今大会は東京五輪の日本代表選考会を兼ねているため、例年以上に熱い戦いが繰り広げられると見込まれる。

そもそも東京五輪に出場できるレスリングの選手数は、世界中で各種目とも96選手で、男女合わせて288選手。2016年のリオデジャネイロ五輪と比べると56人も少なくなり、出場枠はこれまで以上に「狭き門」となっている。1階級16選手が表彰台を争うことになる。

日本レスリング協会は、男女ともに2019年9月の世界選手権でメダルを獲得した選手に出場権を与えることを発表していた。同大会で5位となり(レスリングは3位決定戦がない)、東京五輪出場枠を確保した選手については、今回の全日本選手権で優勝すれば代表内定。世界選手権で5位となり今大会で優勝できなかった場合は、大会覇者と2者間で代表決定プレーオフを戦い、勝者がオリンピック日本代表となる。

そして、世界選手権で代表枠を取れなかった階級は、今大会の優勝選手が来年3月に中国で行われるオリンピックアジア予選、さらに世界予選の出場権を得て、その舞台で東京五輪行きのチケットを争うことになる。

世界選手権でメダルを獲得し、すでに東京五輪代表に内定しているのは男子グレコローマン60キロ級の文田健一郎、女子53キロ級の向田真優、57キロ級の川井梨紗子、62キロ級の川井友香子、76キロ級の皆川博恵の計5選手。全選手とも今大会にはエントリーしなかった。

63キロ級で世界選手権を制した太田忍(右)。67キロ級でのオリンピック出場を狙い、同階級で全日本選手権に出場する
63キロ級で世界選手権を制した太田忍(右)。67キロ級でのオリンピック出場を狙い、同階級で全日本選手権に出場する63キロ級で世界選手権を制した太田忍(右)。67キロ級でのオリンピック出場を狙い、同階級で全日本選手権に出場する

男子は67キロ級に階級変更の太田忍に注目

前述のとおり、世界選手権の結果によって東京五輪の出場枠を勝ち取り、代表内定者が決まっている階級もあれば、出場枠を手にしているものの、代表内定者が決まっていない階級、そもそも世界選手権で5位以内に入れず出場枠をもぎ取れていない階級もある。

レスリングのオリンピック代表選手が内定しているのは、男子グレコローマン60キロ、女子53キロ、57キロ、62キロ、そして76キロ級。出場枠のみ勝ち取れているのは、男子フリースタイル65キロ、74キロ、女子68キロ級。出場枠も得られていないのは男子グレコローマン67キロ、77キロ、87キロ、97キロ、130キロ、フリースタイル57キロ、86キロ、97キロ、125キロ、女子50キロ級となっている。

男子グレコローマン130キロ級では、園田新(しん)が6連覇を達成できるかに注目が集まる。63キロ級で世界選手権を制した太田忍が67キロ級でのオリンピック出場をめざして今回の全日本選手権にエントリーした。太田にとって67キロ級での戦いは初めての経験。4キロの差を乗り越えての挑戦に熱い視線が注がれている。フリースタイルの79キロ級では新星の躍進が光る。6月の全日本選抜選手権で優勝し、高校生ながら世界選手権出場を果たした髙橋夢大(ゆうだい)が全日本選手権で躍動する可能性は決して低くない。

女子では50キロ級にタレントがそろっている。リオデジャネイロ五輪で48キロ級の金メダリストとなった登坂絵莉、世界選手権代表となったものの準々決勝で敗退した入江ゆき、そして2018年の世界選手権覇者である須崎優衣が三つ巴の戦いを繰り広げると予想される。

男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗。2018年の世界選手権では優勝を果たしている
男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗。2018年の世界選手権では優勝を果たしている男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗。2018年の世界選手権では優勝を果たしている

日本一になれば東京五輪行きが決まる3選手

乙黒拓斗、奥井眞生(まお)、土性沙羅(どしょう・さら)。世界選手権で5位以内となった3選手にとっては、今大会が例年以上に重要な意味を持つ。全日本王者の座に輝けば、必然的に2020年の東京五輪行きの切符を手にできるのだ。

男子フリースタイル65キロ級の乙黒拓斗は、連覇をめざして臨んだ世界選手権だったにもかかわらず、3位決定戦でも冷静さを欠き、悔しい結果に終わった。「代表として失格だなと思う」と激しい後悔の念を見せたが、「東京五輪で世界選手権の借りを返せたら」と力強く前を向いてきた。初のオリンピックの舞台に向け、誰よりも強い闘志を燃やしている。

「最激戦区」と称されるフリースタイル74キロ級で優勝を狙うのは、奥井眞生だ。乙黒同様、世界選手権では3位決定戦でも敗れており、今大会にかける思いは並々ならぬものがある。この階級は世界ジュニア選手権2位の基山仁太郎、全日本選抜選手権3位の三輪優翔と吉田隆起、国体優勝の木下貴輪、全日本社会人選手権優勝の乙黒圭祐などと、実力者が多い。国士舘大学時代はグレコローマンとの二刀流で戦ってきた奥井は、技術の高さを武器に、頂点をめざす。

女子68キロ級で東京五輪出場に王手をかけているのは、リオデジャネイロ五輪で金メダルを首にかけた土性沙羅。この数年は故障に苦しみ、筋肉が落ちたことで体重も減少するなど、ベストコンディションで戦ってきたとは言えない。しかし持ち前の精神力の強さを武器に立ち上がってきた。女子史上初の重量級でのオリンピック連覇への夢を、決して諦めてはいない。世界選手権の3位決定戦敗戦後には、「12月まで死にもの狂いで練習したい」という決意表明を残しただけに、今大会には相当な覚悟を持って挑むはずだ。

不運なことに、競技以外の部分で世間の関心が注がれ、選手たちも混乱の中にあった近年のレスリング界。東京五輪に向けて選手たちが正真正銘の真剣勝負を見せることが、競技そのものの魅力を再確認させる最善の道となる。

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