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世界王者ヤン・フロデノが自宅でトライアスロンを完走! マラソン大会はアプリを用いて世界中から参加可能に【スポーツのデジタル化】

北京五輪金メダリストがチャリティートライアスロンで約2380万円を寄付

文: オリンピックチャンネル編集部 ·
VR(バーチャルリアリティ)のゴーグルは仮想現実とつながることで、スポーツの観戦だけでなく、競技自体の可能性も広げている

新型コロナウイルスが世界中に蔓延するなか、あらゆるレースや試合が中止となってきた。収入やモチベーションを失うアスリートたちを救うべく、自転車競技やトライアスロン、マラソンなどでは、パソコンやスマートフォンのアプリを駆使したバーチャルレースの開催が広まっている。

日本マウンテンバイク界のレジェンドである山本幸平が発起人となり、国内初のオンラインオフロードレースが5月10日に開催された

MTB日本代表の山本幸平が国内初のオンラインレースを開催

自転車競技では、「バーチャルレース」という新たな形式での大会開催の動きが広まっている。

「バーチャルレース」は、ゲームに対応するローラー台やサイクリングコンピューターといった機材さえあれば、気候や天候、時間を気にせず、誰でも参加することができる。画面とローラー台が連動するためコースに合わせて負荷が変わり、室内にいながら屋外さながらの激しい運動に取り組める。ゲーム自体は一人や仲間内でレースを楽しむことも可能だが、コロナ禍においては、プロのレーサーが参加する大会が注目を浴びている。

現在、さまざまなオンラインプログラムやゲームが開発されており、なかでも『Zwift(ズイフト)』、『BKool(ビークール)』、『Rouvy(ルービー)』などが人気を集めている。

3月19日には「Milano Sanremo Virtual Experience」が開催され3000人以上が参加。4月5日にはプロのみが参加した「De Ronde 2000, Lockdown Edition』が行われており、複数の大規模な大会が開催されている。イギリスを拠点とする『チーム イネオス』を筆頭に、ミチェルストン・スコット(オーストラリア)、トレック・セガフレード(アメリカ)、ユンボ・ビスマ(オランダ)などプロ選手が続々と参加した。以降も定期的に自転車オンラインゲームの大会が開かれている。

国内でも全日本MTB-XCで11度の優勝を誇る日本マウンテンバイク界のレジェンド、山本幸平が発起人となり、国内初のオンラインオフロードレースが5月10日に開催された。『Rising Sun “STAY HOME” Adventure Race』と名づけられた大会はオーストラリアの『J.VINE』が優勝し、山本が日本人トップの2位でフィニッシュ。レースの様子はYouTubeでも配信され、マウンテンバイク日本代表監督の鈴木雷太氏が解説を担当するなど盛り上がりを見せた。

「バーチャルレース」は、ゲームに対応している機材さえあれば、気候や天候、時間を気にせず、誰でも参加できる

アイアンマンレースもバーチャル空間で

トライアスロンでは、ドイツ人の世界王者ヤン・フロデノの取り組みが話題を呼んだ。2008年北京五輪のトライアスロン男子金メダリストであるフロデノは、4月11日、外出禁止令が敷かれているスペインの自宅にて、トライアスロン(のアイアンマンレース)を敢行した。

自宅にある対流スイミングプールで3.8キロメートル、デジタル端末に接続可能なローラー台で180キロメートルのサイクリング、屋内用ランニングマシーンで42.2キロメートルのマラソンに挑み、計8時間33分39秒のタイムで完走。その模様をライブ配信し、20万ユーロ以上(約2380万円)の寄付金を集めた。新型コロナウイルスに屈しない姿勢を示したフロデノは、集めた寄付金を自身がアンバサダーを務める慈善団体ローレウスと、スペイン・ヒローナの医療機関に寄付している。

水泳で3.8キロ、自転車で180キロ、ランニングで42.195キロを進み、「世界一過酷なトライアスロン」と言われるアイアンマンレースも、バーチャル空間へのシフトを経験している。

4月4日に開催された「IRONMAN VR Pro Challenge」では、過去のアイアンマン世界王者を含む4人の女性と4人の男性が自転車で対戦。バーチャルサイクルサービスの『ROUVY』を利用してそれぞれが自宅で仮想のボルダーバイクコースを走り、その様子がFacebook Watchでライブ配信された。「IRONMAN VR Pro Challenge」は以後、毎週末開催されるようになっている。

ドイツ人のヤン・フロデノ(中央)はさまざまな機材を利用し自宅でトライアスロンを完走。ライブ配信で得た収入を新型コロナウイルスの治療などにあてる寄付金とした

アプリを用いれば世界中どこでも参加可能なマラソン

マラソンにもバーチャル化の波が押し寄せている。

3月15日に行われた「NYCハーフマラソン」は、アクティビティ管理SNSアプリ『STRAVA(ストラバ)』を使用して走行距離を記録すれば、世界中どこにいても参加できる仕組みで開催された。例年、4月第3月曜日の祝日に開催される「ボストン・マラソン」は、9月への延期が発表されていたが、これもバーチャル・マラソンの形式に変更して開催する代案が出ている。

また、6月6日、7日には「NN Running Team × MAURTEN」というバーチャルランニングイベントが開催された。世界同時開催でスマホアプリを利用して世界中の人々が参加できるレースで、コロナウイルスの撲滅を目標に掲げている。マラソン世界記録保持者のエリウド・キプチョゲをはじめ、トライアスロン選手、プロサッカー選手、プロ野球選手、プロボクサーなど競技の垣根を超えた豪華なゲストランナーがレースを盛り上げた。100カ国以上から約10万人のランナーが参加し、日本からは男子マラソンの高久龍や女子マラソンの岩出玲亜が参加している。

新型コロナウイルスはスポーツ界に大きな困難をもたらしたが、一方で、バーチャル化などさまざまな工夫が凝らされ、新たに形を変えて開催に至る例もある。競技のポテンシャルは確実に広がった。スポーツ界はまさに時代の転換期を迎えている。