中村克:次世代ホープのイケメンスイマーが、東京五輪の挑戦権獲りへ

鍛え抜かれた肉体から繰り出すダイナミックな泳ぎを武器に、2020年東京五輪の水泳自由形で金メダルを目指す中村克(なかむら・かつみ)。2016年リオデジャネイロ五輪では、リレー代表として出場するもメダルに届かず、涙をのんだ経験をバネに、日々コーチと二人三脚で、泳ぎに磨きをかけてきた。2018年には50mと100mで日本新記録をたたき出すなど、東京五輪に向けて調子をあげており、今やメダル獲得の最有力選手といっても過言はないだろう。

中村克は自由形を専門とし、国際大会の各種リレーで度々代表入りするなど、日本競泳界を支える存在だ
中村克は自由形を専門とし、国際大会の各種リレーで度々代表入りするなど、日本競泳界を支える存在だ中村克は自由形を専門とし、国際大会の各種リレーで度々代表入りするなど、日本競泳界を支える存在だ

2018年アジア大会2位、その前には日本新記録

2018年8月にジャカルタで開催されたアジア大会では、現在、白血病療養中の池江璃花子が、驚異の6冠を達成。金メダル数でアジア女子と日本選手の一大会最多獲得記録を一気に塗り替えるという大快挙に、日本中が歓喜した。池江大活躍劇の裏側で奮闘していたのが、男子自由形の中村だ。

50m自由形で2位、100mで2位、400mリレーで優勝。中村選手は自身のブログで、「個人種目では納得できるタイムで泳ぐことができなかった」としたものの、リレーについては、「すごく嬉しかった。2020年でのメダル獲得がまた一歩近づいた気がします」と大会を振り返った。また、「今シーズン序盤は好調が続きましたが、4月以降手首の怪我をしてからいろいろなことに悩まされた気がします」と心境を吐露し、8月のアジア大会は、絶好調とはいえない状態で臨んでいたことを明らかにした。

本人が言う通り、年初は好調だった。2018年2月に開催された「きららカップ2018」の50m自由形で、21秒87の日本記録を樹立。さらに同月の「コナミオープン 水泳競技大会」では、男子100m自由形で、2016年リオデジャネイロ五輪で自身が出した日本記録を0秒12上回る47秒87で優勝している。

強靱な肉体から繰り出すダイナミックな泳法

1994年2月21日の東京都生まれ。身長183cm、体重75kgの中村は、高校、大学時代から自由形が専門で、50m、100mに出場するほか、フリーリレーやメドレーリレーに参加することもある。その速さの秘密は、なんといっても強靱な肉体だろう。ウェイトトレーニングやボクシングトレーニングで、マッチョな体型を維持している。

腹筋の力で水中姿勢を維持し、泳ぎのブレを減らすことで、スピードのロスを防いでいる。中村が最後の25mで、驚異的な追い上げをみせるのも、その肉体のなせる技だろう。さらに、その肉体を駆使する泳法も独特だ。多くの選手が肘を高く上げる「ハイエルボー」で水をかくのに対し、中村の泳法は肘をまっすぐに伸ばして腕を高く上げ、水面を強くたたく「ストレートアーム」。こうすることで、強くたたいた水面が一瞬固くなり、それを押すようにすることで推進力が増すという。

キックも通常は水を蹴り下げる際に生まれる力で、前進するが、中村は蹴り上げるときに生まれる力も利用している。飛び込み時の姿勢も特徴的だ。頭を両腕で挟み込み、一本の槍のような姿で一直線に飛び込む。こうすることで水の抵抗を最小限に抑えるのだという。

男子競泳選手として183cmは世界的に見れば大きいとはいえないものの、強靭な肉体でトップレベルを維持している
男子競泳選手として183cmは世界的に見れば大きいとはいえないものの、強靭な肉体でトップレベルを維持している男子競泳選手として183cmは世界的に見れば大きいとはいえないものの、強靭な肉体でトップレベルを維持している

五輪初出場を果たし、日本記録を次々と樹立

中村が最初に世界を驚かせたのは、2013年のユニバーシアードだ。リレーのアンカーとしてアメリカ相手に一度は追い抜かされるも、抜き返して日本に銅メダルをもたらした。2015年のジャパンオープンでは、100mで48秒41を記録し、高速水着の時代に出された日本記録を、6年ぶりに更新した。2016年の日本選手権では、50m自由形と100m自由形で2冠を達成し、400mリレーのリオ五輪代表にも選出された。本番となる五輪では100mの予選レースで47秒99を記録し、日本人で初めて48秒の壁を破った。また、開幕から好調なスタートを切った2018年は50mで21秒87、100mで47秒87というタイムを出し、次々に日本記録を更新した。

母親の代わりに水泳をやることを決意

小学校のころから水遊びが好きで、水泳の授業では、クラスメートよりも速く泳げていたという。小学5年生のころに水泳を習い始め、中学校に進学して競泳の世界に飛び込んだ。きっかけは、水泳が好きだった母親が交通事故に遭い、泳ぐことができなくなってしまったために、母の代わりに自分が泳げるようになろうと決めたからだという。

中学2年生で引っ越した足立区の「東京マリン舎人」に入部し、競泳選手として実力を身につけていく。中学校の水泳部では、3年生のときにリレーのメンバーとして、初めて全国大会に出場し、準優勝を果たす。私立武蔵野高校に進学し、2年、3年生のときに、50m自由形でインターハイを連覇。早稲田大学に進むと、4年生のときに、学生選手権の50mと100m自由形で2冠を達成している。

塩浦慎理(左)はジュニア時代からの最大のライバル。度々表彰台をともにし、切磋琢磨を続けている
塩浦慎理(左)はジュニア時代からの最大のライバル。度々表彰台をともにし、切磋琢磨を続けている塩浦慎理(左)はジュニア時代からの最大のライバル。度々表彰台をともにし、切磋琢磨を続けている

現ライバルは塩浦選手、元ライバルはコーチ

中学時代までは、母が調理するバランスの良い食事が、中村の体を支えてきた。父親は居酒屋を経営しており、大会前には店の料理で戦いに備えたり、大会後になれば仲間と一緒に息抜きをしたりするという。ロンドン五輪銀メダリストの入江陵介や瀬戸大也がお店に来たこともあるそうだ。

ライバルは同じイトマン東進所属の塩浦慎理だろう。ジュニア時代から同じレースに出て、全国大会でも同じ表彰台に立ってきた。2019年4月の日本選手権では、100m自由形で激しい競り合いを展開した。最後は中村が塩浦を制し、48秒55のタイムで大会5連覇を達成。ジュニア時代からライバルだった米川琢氏は現在、中村のコーチを務めている。昔からお互いのことをよく知っていることを武器にして、東京五輪に向け、二人三脚でトレーニングに励んでいる。

世界水泳で東京五輪の切符入手できるか

強靱な肉体と明るいキャラクターで話題を振りまく中村克。東京五輪への切符を手に入れられるかどうかは、2019年7月に韓国の光州で開幕する水泳の世界一決定戦、“世界水泳”で決まる。もし中村が金メダルを獲得すれば、その時点で東京五輪への出場が内定する。メキシコやグアムなどで海外での合宿を積極的に行い、心身ともに仕上げてきている中村。彼ならきっといい結果が出るはずだ。

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