中村輪夢:BMXフリースタイル世界選手権・最年少で決勝に進出、世界に羽ばたく若きエース

転夢(りむ)の「輪」は五輪の「輪」でもある

2020年東京オリンピックから、スケートボードやスポーツクライミングなど、新種目が採用される。その中でも異彩を放つのが『BMXフリースタイル・パーク』だろう。2008年北京五輪から採用されたBMXレース(スーパークロス)同様、直径20インチの車輪がついた自転車を操り、制限時間内にジャンプや回転などのトリック(技)の難易度や独自性を競うスポーツだ。競技は「バンク」と呼ばれる斜面、「カーブ」と呼ばれる縁石、「ランプ」などが設置された人工施設で行われる。若者に人気の都市型スポーツとして注目され、今回のオリンピック採用種目となった。

この異色の種目で、世界に羽ばたく若きエースとして注目を集めているのが、中村輪夢(なかむら・りむ)だ。2017年11月中国で開催された第1回世界選手権では、最年少で決勝に進出し、7位入賞を果たした。2020年東京五輪のメダル獲得が期待されている有力選手だ。

小学生の頃から世界的なBMXライダーとして活躍していた中村輪夢。現在の夢はもちろん東京五輪出場だ
小学生の頃から世界的なBMXライダーとして活躍していた中村輪夢。現在の夢はもちろん東京五輪出場だ小学生の頃から世界的なBMXライダーとして活躍していた中村輪夢。現在の夢はもちろん東京五輪出場だ

スポーツ好きの家族に囲まれて育った少年時代

中村は、2002年2月9日、京都府生まれ。生まれた日は、ソルトレーク冬季五輪の開催期間と重なる。元BMXの選手で、現在は京都市内でBMXのショップを経営している父親から「輪夢」と名付けられた。「輪夢」という名前は、自転車の車輪の部品である「リム」が由来で、車輪と五輪の「輪」と、「夢」から成り立っている。

さらに祖母がJリーグ・京都サンガF.C.のサポーターであったため、小学生のときはサッカーもやっていた。少年時代はスポーツ好きの家族に囲まれながら、とにかく体を動かす日々を過ごした。そして、父親の影響もあり、中村は3歳で初めてBMXに乗る。2歳上の姉と一緒に5歳で初めて大会に出場し、当時からジャンプにも挑戦していたそうだ。

小学生になると、さまざまな大会で優勝。小学校5年生で初めて参加した世界大会では、大人も合わせて、日本人最高の成績を残した。11歳でプロクラスに転身し、2015年の中学生のときには、13〜15歳の世界王者となり、アメリカでも、「同世代世界最強ライダー」の称号を得ることとなる。中村はそこからどんどん才能を開花させていった。

中村輪夢の武器はエアーの高さ。その高さゆえにトリックも映える
中村輪夢の武器はエアーの高さ。その高さゆえにトリックも映える中村輪夢の武器はエアーの高さ。その高さゆえにトリックも映える

地元の京都はリラックスできる場所

大会や合宿など、海外で過ごすことが多い中村だが、大会で思うような結果が出せないときもある。そんなときに心の支えになるのが、地元である京都の中学からの友達の存在だ。応援してくれる仲間に支えられていることを実感することで、気持ちがリラックスし、メンタルを回復させることで、常に高いモチベーションを保ちながら、競技に臨むことができるそうだ。

競技は、会場ごとに規模や構成が違うパーク(ランプやバンクを設置したコースの総称)を舞台に行われるため、会場やセクションで得意、不得意はでてくるものだが、中村選手はあらゆる海外の大会で結果を残してきた。持ち前の精神力の強さは、リラックスできる場所があるからかもしれない。

「誰よりも高く飛び、誰よりも目立ちたい」。これは中村の口癖である。ジャンプの高さは、世界でもトップレベルと言われるほどの実力を持っている。BMXフリースタイル・パークでは、ジャンプの高さは“エアーの高さ”とも言われる。中村のライダーとしてのすごさは「エアーが高く、トリック(技)の完成度が高い」ということだ。

スキーのモーグルやスノーボードのフリースタイル同様、エアーが高ければ、滞空時間は長くなる。結果として、繰り出される技のメイク率も高くなるということだ。空中で繰り広げられる数々のトリックが観客を惹きつけるのだろう。

2019年4月時点で17歳ながら、世界各地の会場の違いなどの試合環境に左右されないメンタルが中村の強み
2019年4月時点で17歳ながら、世界各地の会場の違いなどの試合環境に左右されないメンタルが中村の強み2019年4月時点で17歳ながら、世界各地の会場の違いなどの試合環境に左右されないメンタルが中村の強み

世界の強豪と互角に戦う

2015年、中村はその世代の世界一になった。2017年JAPAN CUP富山大会で優勝、第1回全日本BMXフリースタイル・パーク選手権大会で優勝と、国内では圧倒的な強さを見せつけている。そして、同じく2017年UCIアーバンサイクリング世界選手権で、最年少ながら決勝進出を果たして7位。2018年にはUCIワールド杯広島大会で9位、FISEワールドシリーズ総合ランキング5位と世界の強豪と肩を並べている。

ただ、第2回全日本BMXフリースタイル・パーク選手権大会では、惜しくも3位という成績に終わった。これは決勝でのパンクが原因だった。コースによってはパンクも侮れない。このときに、優勝に輝いたのは西昴世(にしたかせ)。トラブルがあったと言えども、王者の座を譲り渡したこととなる。まずは、国内王者の座の奪還することが、当面の目標だろう。

東京五輪で悲願のメダルへ

中村が、15歳でプロになった際に掲げていた目標は、「X Games」で活躍することだった。そこへ、2017年6月に国際オリンピック委員会(IOC)によって2020年の東京五輪の正式種目として追加されたことで、目標がオリンピック出場に切り替わった。

2019年4月10日現在、世界ランキング11位の中村。BMXフリースタイル・パークは年間5戦のワールドカップが行われる中で、ひとつずつ順位を上げていくことが五輪でメダルを手にするためには避けて通ることができない道になるだろう。

4月19日のW杯広島大会から五輪代表選考のポイント加算がスタートする。世界でも成功者が少ないトリック「360(スリーシックスティー)ダウンサイド・テールウィップ・トゥ・ターンダウン」(自転車と一緒に体も360度回り技を決める)を実現させ、代表入りを確実にするつもりだ。東京五輪でメダル争いをする中村輪夢の活躍が今からすでに待ち遠しい。

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