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主に寄付金と事業収益でまかなわれるアメリカの3つのオリンピックトレーニングセンター【スポーツの国家的取り組み】

連盟本部が集結するコロラドスプリングスは「オリンピックの街」

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

米国オリンピック・パラリンピック委員会が管理するオリンピックトレーニングセンターは、中心地であるコロラドスプリングス、冬季種目が主なレイクプラシッド、トライアスロンなどの練習にも用いられるチュラビスタの3つの場所にある。マルチスポーツの繁栄を支えるこれらの施設は、連邦政府など国家機関からの財政支援に頼らずに運用されている点が特徴だ。

メキシコとの国境付近にあるチュラビスタ市のオリンピックセンターには、アーチェリー、ビーチバレー、BMX、ラグビー、ボート競技、サッカー、ソフトボール、テニスなどの専用施設が備わっている

コロラドスプリングスは「Team USA」の拠点

アメリカのスポーツはUSOC(United States Olympic & Paralympic Committee/米国オリンピック・パラリンピック委員会)が所管しており、本部はコロラド州コロラドスプリングス市にある。また、ワシントンD.Cには連邦政府との連絡事務所が構えられている。

USOCは一つの組織として、オリンピック・パラリンピック大会、パンアメリカン競技大会のアメリカ代表チームを結成し、監督を行う。USOCの特徴の一つは、独り立ちした財源運用を行っている点だ。連邦政府からの財政支援に頼らず、主に寄付金と事業収益で代表チームや選手に対する助成などの支出をまかなっている。

USOCの歴史は古い。誕生の時期はIOC(国際オリンピック委員会)の発足とほぼ同じだ。1892年の冬、オリンピックの復活をめざす世界的な動きのなかで組織化され、1894年の第1回オリンピックに合わせて立ち上がった。正式な組織となったのは1921年。当時はAOA(American Olympic Association/米国オリンピック協会)という名称だった。その後、何度かの改称を経て、1978年7月1日にニューヨークからコロラド州中南部の都市コロラドスプリングスへと本部を移転した。以来30年以上にわたって「Team USA」の拠点としてアメリカにおけるマルチスポーツの基盤を築いてきた。

コロラドスプリングスは現在、「米国オリンピックの街」と呼ばれている。USOC本部やオリンピックトレーニングセンターのほか、20種目以上のオリンピック競技連盟、および50種目以上の競技連盟が本部を置いているためだ。オリンピックトレーニングセンターが備える機能は、言うまでもなく世界トップレベルに君臨する。例えば、室内射撃施設は50メートルのライフルとピストル29射座など西半球で最大規模を誇る。

コロラドスプリングスのオリンピックトレーニングセンターは競技施設だけでなく、ホテル並みに充実した宿泊施設も備わっている

コロラドスプリングスにあるオリンピックトレーニングセンターのスイミングプールは50メートル×25メートルの国際大会基準で水中には可動式カメラが設置されており、上下から選手の動きを撮影し、トレーニングに生かされる。このプールは競泳だけでなくトライアスロン、近代五種、水球などでも用いられる。

「スポーツセンターⅠ」と呼ばれる複合体育館は6つの体育館とジムを備え、メインの体育館はバスケットボールコート3面分も設置できるほどの広さを誇る。ボクシングや柔道、テコンドーなどの専用トレーニング施設もここに備えつけられている。

「スポーツセンターⅠ」がオリンピックトレーニングセンター内で最初に建設された体育館であるのに対して、その後に建設された「スポーツセンターⅡ」には、レスリングやウエイトリフティングの専用施設がある。また、こちらもバスケットボールコート3面分の広さとなっており、過去には男女バレーボール代表チームが通年で活動拠点としていた。

コロラドスプリングスのスイミングプールは50メートル×25メートルの広さで、水中には可動式カメラが設置されている

施設に居住する選手がツアーガイドを務めることも

コロラドスプリングスのオリンピックトレーニングセンターの特徴は、競技設備だけにとどまらない。

敷地内には約240部屋をそろえた宿泊施設があり、ベッド数は500を超える。ホテル並みの建物には朝6時から夜9時まで稼働しているカフェテリア、ミーティングルームやレクリエーション施設が備わっており、選手たちは充実した合宿生活を送ることができる。200人の出席者を収容できる「ウエストウィング・カンファレンスセンター」では、USOCが国際会議や市民向けイベントを開いたり、指導者やスポーツ医学関連のセミナーを開催したりすることもある。

また、このオリンピックトレーニングセンターには、一般客向けの展示ホールやグッズ販売ショップ、約230席が並ぶシアターが備えられ、見学ツアーが日常的に実施されている。ツアーガイドは施設内に居住するアスリートが務めることもあり、一般人や企業などから支援を受ける代わりとして一般人とコミュニケーションを図る機会が設けられている。

同施設は2009年から大規模な改修が実施された。最新のウエイトトレーニング機器や有酸素運動用の機器、内科や外科、眼科、歯科の処置室から超音波室、レントゲン・MRI室までさまざまな医療に対応できるスポーツ医療ルーム、疲労回復のためのマッサージ室、栄養コンサルティングルーム、サウナ、流水プールなどが完備し、アスリートたちが肉体的および精神的な強化と回復に努められるような工夫が施されている。

コロラドスプリングスの「スポーツセンターⅠ」と「スポーツセンターⅡ」は、ともにバスケットボールコート3面分の広さとなっている

冬季五輪会場となったレイクプラシッドなど計3施設をUSOCが管理

オリンピックトレーニングセンターはコロラドスプリングスに加え、ニューヨーク州のレイクプラシッド村、カリフォルニア州のチュラビスタ市とアメリカ国内では計3カ所に存在する。これまで1932年、1980年と2度冬季五輪が開催されたレイクプラシッドには、ボブスレー、スキージャンプなど冬季種目の専門施設がそろっており、なかでもスキー場は上質な雪に覆われているのが特徴的だ。

チュラビスタ市の施設は1995年に設立された。アーチェリー、ビーチバレー、BMX、ラグビー、ボート競技、サッカー、ソフトボール、テニスなどの専用施設が備わっている。また、メキシコとの国境付近に位置する立地を生かし、トライアスロンやサイクリングなどのトレーニング地としても利用されている。同施設ではガイドつきツアーやプライベートイベントなど、一般公開も行われている。

これら3つのオリンピックトレーニングセンターはUSOCが管理を徹底し、オリンピックをはじめとする大舞台での活躍をめざすアスリートたちが質の高い練習を積み、実際に国際大会での好成績につながるよう努めている。