五十嵐カノア:世界を舞台に戦う若き天才サーファーは、日本人として東京五輪に思いを馳せる

カリフォルニア育ちの五十嵐カノアは、3歳のとき有名なハンティントンビーチでサーフィンを体験。6歳にして大会を制した波の申し子だ
カリフォルニア育ちの五十嵐カノアは、3歳のとき有名なハンティントンビーチでサーフィンを体験。6歳にして大会を制した波の申し子だカリフォルニア育ちの五十嵐カノアは、3歳のとき有名なハンティントンビーチでサーフィンを体験。6歳にして大会を制した波の申し子だ

ビッグウェーブに乗る姿が印象的な金融機関が発行するカードのCMで、国内の知名度を上げつつある五十嵐カノア。日本人を両親に持ち、アメリカで育った五十嵐は、日本とアメリカの二重国籍を持ちながら、日本人であることにこだわり、日本代表としての東京五輪出場を目指している。3歳のときからサーフィン先進国で腕を磨き、あまたの大会で優勝を重ねてきた五十嵐は、誰もが認める五輪の日本代表最有力候補だ。

学生大会で記録を更新し、U-18の全米大会を14歳で制覇。日本人としては、驚異的な成績を出し続けた
学生大会で記録を更新し、U-18の全米大会を14歳で制覇。日本人としては、驚異的な成績を出し続けた学生大会で記録を更新し、U-18の全米大会を14歳で制覇。日本人としては、驚異的な成績を出し続けた

 2019年CT開幕戦では8強逃す

2019年4月、オーストラリアのゴールドコーストで行われたサーフィンの男子チャンピオンシップ・ツアー(CT)の開幕戦。CTサーファー4年目を迎える五十嵐は、初戦をセバスチャン・ジーツ(ハワイ)とデイヴィッド・シルヴァと対戦して1位で通過。好調なスタートを切って、さっそく話題をかっさらった。3回戦(初戦1位通過の場合は3回戦に進出)も、ジェシー・メンデス(ブラジル)に快勝。しかし、続く4回戦でコナー・コフィン(アメリカ)に惜敗し、準々決勝に進めずに9位でフィニッシュ。結局、8強入りを逃してしまった。

CTはサーフィンで世界最高峰の大会。12月までに合計11戦が行われて、年間ランキング上位10人が東京五輪の出場権を獲得するだけに、五十嵐にとっては課題を残す結果となった。

サーファーの両親からアメリカで英才教育を受ける

五十嵐は1997年10月1日、アメリカ・カリフォルニア州生まれ。アメリカと日本の二重国籍だが、東京五輪は日本人としての出場を目指しているという。ワールドチャンピオンシップでの背番号は、名前の五十嵐から「50」をチョイスするなど、自分の中にある「日本」を背負って挑んでいる姿勢がうかがえる。

父親が波に乗る姿を毎日眺めて育ち、3歳の誕生日にカリフォルニアのハンティントンビーチで初めてのサーフィンを体験。その日のうちにボードの上に立つことができたという。6歳のときに子ども向けのローカル大会に初出場し、初優勝するなど、幼くして才能を開花させている。

アメリカと日本の二重国籍を持つ五十嵐だが、日本人としての意識が強い(写真左)
アメリカと日本の二重国籍を持つ五十嵐だが、日本人としての意識が強い(写真左)アメリカと日本の二重国籍を持つ五十嵐だが、日本人としての意識が強い(写真左)

まさに「波の申し子」

2009年、NSSA(National Scholastic Surfing Association)主催の大会で、当時の記録である年間最多優勝記録の20勝を上回る30勝を出し、大会記録を更新するという金字塔を打ち立てた。 

2010年、12歳にしてNSSA全米ナショナルチャンピオンを獲得。NSSAミドルスクール(ボーイズ)クラス、NSSAエクスプローラー(ボーイズ)クラス全米チャンピオンとなり三冠王を達成した。2012年にはUSAチャンピオンシップU-18 に14歳で最年少優勝した。

その後もさまざまな国際大会で優勝を重ね、2016年、18歳のときに日本人として初めてWSLワールドチャンピオンシップツアーに参戦し、年間最終ランキング20位を獲得。初参戦の同ツアーで一回戦敗退は一度もなかった。2017年にはWSL Vans US Open of Surfingで優勝、2018年はWSL Qualifying Series 3000 - Pro Santa Cruz 2018でも優勝した。

2018年12月時点で、セカンドリーグとなるクオリファイングシリーズ(QS)ランキングで1位、世界最高峰のサーフィンレースであるWSLのチャンピオンシップツアー(CT)ランキングで10位となった。 

スピード感あふれるアグレッシブなスタイル

五十嵐が大事にしていることは、「自分のスタイル」だそうだ。サーフィンがほかのスポーツと違うのは、そのプレースタイルに正しいも、間違いもなく、好きなようにやって、やりたいことを表現することだろう。五十嵐が目指しているのは、スピード感があって、アグレッシブなスタイルだ。だから、パワーのある大きな波を好むという。そういうサーフィンは、自分自身で見ていても楽しいと話す。

ジムで鍛えた下半身と、波で鍛えた見事な上半身が持ち味の五十嵐が、もっとも影響を受けたのは、世界タイトル11回制し、史上最高のサーファーと称されるアメリカのケリー・スレーターだ。子どもの頃から動画で大会の様子をずっと見て、プレースタイルをインスパイアされてきただけでなく、ケリー選手のカットバックをまねしてきたという。

ネーミングはハワイ語由来

五十嵐家は、父、母、長男のカノア、次男のキアヌで、全員がサーファーだ。カノアという名前はハワイの言葉で「自由」を意味するという。キアヌも同じくハワイ語がルーツで、「山からの清々しい風」という意味だそうだ。日本には毎年帰国しており、祖父母がいつも温かく迎えてくれるという。また、祖父が眠る東京都調布市・深大寺も欠かさず訪れて、墓前で手を合わせている。

今後、五十嵐の最大のライバルになりそうな村上舜。大原洋人、稲葉玲王も五十嵐がライバル視するサーファーだ
今後、五十嵐の最大のライバルになりそうな村上舜。大原洋人、稲葉玲王も五十嵐がライバル視するサーファーだ今後、五十嵐の最大のライバルになりそうな村上舜。大原洋人、稲葉玲王も五十嵐がライバル視するサーファーだ

ライバルは大原、稲葉、村上の3選手

五十嵐は2018年6月、東京五輪のサーフィン会場で公開練習を行った際、日本国内のライバル選手を問われて、大原洋人、稲葉玲王、村上舜の3選手の名前を挙げた。

2015年に五十嵐が育ったアメリカ・カリフォルニア州ハンティントンビーチで行われたWQSイベント、Vans US Open of Surfingで、大原は18歳のときに日本人初優勝を果たした。その後も世界を転戦し、2017年6月にはQSランキング2位をマークした。

また、稲葉は2010年に、最年少プロサーファーとなった。2019年2月、ブラジルで行われた大会で5位となり、QSランキングを3位まで急上昇させた。

村上は2019年3月末に行われた「2019サーフィン合宿」で、東京五輪選考における重要イベント「ジャパンオープン」の選考会出場権を1位で獲得している。7位の稲葉、8位の大原を大きく引き離して、選考を1位通過する実力の持ち主なだけに、五十嵐のライバルとなり得る存在だろう。

どの選手も五十嵐にとって気の抜けない存在だ。

日本での存在感は大きい

アメリカ育ちながら、日本人としての意識を持ち続け、2020年の東京五輪に、日本代表として出場することを目指している五十嵐カノア。東京五輪を目指す選手が勢揃いした「2019年サーフィン強化合宿」には、冒頭のCT開幕戦が控えていたために不参加。ライバルになり得る日本人選手と切磋琢磨とはいかなかった。

しかし、来日して公開練習場に五十嵐が姿を現すと、報道陣が詰めかけ、テレビの情報番組で特集が組まれるなど、その存在感は非常に大きい。「東京五輪では金メダルを取るのが目標、日本の旗で勝ちたい」と語る五十嵐カノア。アメリカ仕込みのパワフルなサーフィンに大きな期待が集まっている。

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