伊藤ふたば:「女子高生クライマー」は、14歳の若さで過去9連覇の女王に勝利

クライミング界を盛り上げるニューヒロイン
2017年には14歳9カ月でボルダリング・ジャパンカップを制覇。史上最年少女王に輝いた
2017年には14歳9カ月でボルダリング・ジャパンカップを制覇。史上最年少女王に輝いた2017年には14歳9カ月でボルダリング・ジャパンカップを制覇。史上最年少女王に輝いた

2017年1月に行われたクライミング・ジャパンカップで、14歳の少女がクライミング日本女子の第一人者である野口啓代(あきよ)を破ってみせた。同大会で史上最年少女王に輝いた伊藤ふたばは、長いリーチを生かしたクライミングで世界の強豪としのぎを削る若きクライマーだ。2018年のワールドカップではトップクライマーからの洗礼を受けたものの、持ち前の負けん気の強さで実力を伸ばしている彼女がオリンピックの舞台へ向けてどんな輝きを見せるのか、注目が集まる。

東京五輪と同じ形式の大会で3位の好成績

2020年の東京五輪でスポーツクライミングが正式種目として採用された。「体を使ったチェス」と言われるボルダリングをはじめ、近年、日本でのクライミング競技の人気は高まりを見せており、メディアで目にする機会が圧倒的に増えてきた。

そんななか、大きな注目を集めている若手日本人選手がいる。オリンピック強化選手にも選出されている伊藤ふたばだ。ユース世代の大会においては、国内はもちろん、国際舞台でも華々しい成績を残している。2019年の4月に17歳になる若さながら、世界のトップクライマーと渡り合う実力を持つ選手として、さらなる飛躍に期待を寄せられている。

2018年11月に岡山県倉敷市で開催されたACCクライミングアジア選手権では、「リード」「ボルダリング」「スピード」の3種目と、これらの複合ポイントで順位を競う「コンバインド」が行われた。そこで伊藤は自身が得意とするボルダリングで、シニアの部に上がって1年目ながら並み居る実力者を抑え、国際大会初優勝を果たす。3種複合の成績においても、日本女子クライマーのパイオニアである野口や野中生萌(みほう)に次ぐ3位という好成績を収めるなど、アジアのトップクライマーのなかで確かな存在感を示した。

小学3年生の時、クライミングが趣味だった父親の影響でキャリアをスタートさせた
小学3年生の時、クライミングが趣味だった父親の影響でキャリアをスタートさせた小学3年生の時、クライミングが趣味だった父親の影響でキャリアをスタートさせた

アジアのユース世代ではもはや敵なし

伊藤は2002年4月25日に岩手県盛岡市で生まれた。クライミングとの出合いは小学校3年生の時。クライミングが趣味であった父親の影響で始めたのがきっかけだった。もともとヒップホップダンスの教室に通っていたが、クライミングを始めるとすぐに夢中になったという。「好きこそものの上手なれ」という言葉を証明するように、小学4年生の時に出場したTHE NORTH FACE CUPでは、競技歴1年にして優勝するなど、その才能を瞬く間に開花させた。

2015年に全日本クライミングユース選手権ボルダリング競技大会に出場。ボルダリングのユース選手権として国内で初めて開催されたこの大会では、予選の8課題、決勝3課題をすべて一発で完登するという圧巻のクライミングを見せつけ優勝を果たした。同年12月にマレーシアで開催されたクライミング・アジアユース選手権においても、ボルダリングとリードの2種目で優勝し、大きな注目を集めた。

その後も快進撃は続く。2016年には全日本クライミングユース選手権、さらにJOCジュニアオリンピックカップのリード部門で優勝を果たす。イランで開催されたアジアユース選手権でもボルダリングとリードで2冠を達成するなど、アジアのユース世代ではもはや敵なしの貫録を見せつけた。

ボルダリング・ジャパンカップで史上最年少女王に

その名が一躍世に広まったのは、2017年1月に行われた第12回ボルダリング・ジャパンカップだ。2005年からスタートしたこの大会には、絶対王者の野口啓代(あきよ)も参加していた。過去に同大会で9連覇、2018年までに11度の優勝経験を持つ女王は優勝候補の筆頭に挙げられていた。

ところが、2017年の同大会を制したのは野口ではなかった。ベテランの女王を破り、見事優勝を成し遂げたのは伊藤。当時14歳9カ月だった伊藤は、野口が持つ最年少優勝記録の16歳3カ月を大幅に更新し、史上最年少女王に輝いた。持ち味である長い手足を生かしたダイナミックかつしなやかなクライミングが、シニアでも通用することを証明した瞬間だった。

その実力は、同年オーストラリアで開催された 世界ユース選手権においても遺憾なく発揮された。ボルダリング部門で1位、リードと複合部門でもそれぞれ3位に輝くなど、世界にも「伊藤ふたば」の名をとどろかせている。

W杯で2年連続年間女王に輝いたショウナ・コクシー。国内外を問わず、乗り越えるべき壁は少なくない
W杯で2年連続年間女王に輝いたショウナ・コクシー。国内外を問わず、乗り越えるべき壁は少なくないW杯で2年連続年間女王に輝いたショウナ・コクシー。国内外を問わず、乗り越えるべき壁は少なくない

W杯の開幕戦ではまさかの27位

2018年には最年少日本代表としてワールドカップ(以下W杯)の初舞台を踏む。だが、4月にスイスで行われたW杯の開幕戦となったマイリンゲン大会では、得意とするボルダリングでまさかの27位。予選敗退を喫し、あらためて世界の壁の高さを思い知らされる結果となった。

しかし負けず嫌いの性格である伊藤は、W杯第2戦のロシア大会で8位、日本で開催された第5戦の八王子大会では6位にまで順位を上げていく。その後、8月にインドネシアで開催されたアジア競技大会で右ひざを負傷してしまったが、驚異的な回復を見せた。前述のとおり、その3カ月後の11月に行われたACCクライミングアジア選手権のボルダリングで見事優勝を果たしている。

とはいえ、総合的な実力を見れば野口や野中が上をいく。同世代には白石阿島(あしま)というライバルがいる。世界に目を向ければ、W杯で2年連続年間女王に輝いたショウナ・コクシー(イギリス)や、ヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)、ジェシカ・ピルツ(オーストリア)といった強豪がひしめく。乗り越えるべき高い壁はまだまだ多い。

まだ16歳と若く、伸びしろは大きい

2019年は東京五輪の選考も兼ねたW杯や世界選手権が開催される。8月には、国内開催初となる世界選手権が東京のエスフォルタアリーナ八王子で行われる。

2018年は国際大会で世界との差を見せつけられたものの、伊藤はまだ16歳と若い。近年は自重トレーニングを始めたことで、クライミングのバリエーションが増えており、伸びしろは大きいと言えるだろう。W杯で目の当たりにした世界との差こそが持ち前の負けん気に火をつけたと考えれば、2018年は収穫の一年だった。

以前、伊藤はある取材で「オリンピック」「世界選手権」「W杯」の3冠達成という夢を語っていた。東京五輪に出場できるのは各国とも男女それぞれ2名ずつ。間違いなく狭き門だ。ただ、五輪の舞台に上がればければ、このとてつもなく大きな夢は始まらない。「女子高生クライマー」伊藤ふたばの壮大な挑戦から目が離せない。

2019年の4月に17歳になる。日本女子クライマーのなかでは将来性豊かな若手の一人と考えられている
2019年の4月に17歳になる。日本女子クライマーのなかでは将来性豊かな若手の一人と考えられている2019年の4月に17歳になる。日本女子クライマーのなかでは将来性豊かな若手の一人と考えられている

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