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佐藤瞳:石川・平野・伊藤の年下ビッグ3に追いつき追い越せ

石川佳純、平野美宇、伊藤美誠のビッグ3のあとを追う佐藤瞳

リオデジャネイロ五輪を経て、日本の卓球女子は、各選手がさらにハイレベルなフィールドで奮闘している。その勢いを牽引しているのが、石川佳純、平野美宇、伊藤美誠という女子卓球界の「ビッグ3」だろう。試合を重ねるたびに、彼女たちの存在は大きくなっていくようだ。しかし、2020年東京五輪に向け、国際的な競争力をさらに底上げするためには、この3人を猛追するような選手たちが不可欠だ。

そして、その最有力候補が佐藤瞳だろう。相手の攻撃を球に下回転(バックスピン)をかけるカットで拾いまくり、「ここぞ」というタイミングで、一気に反撃するスタイルは、日本選手の中では稀有な存在だ。今、3人に猛チャージをかけている佐藤は、希少なプレースタイルと相まって、今、日本で一番注目すべき選手かもしれない。

世界大会で着実に結果を残す

2018年、佐藤は日本代表チームの一員として、数多くの国際大会に出場した。主な戦績を紹介すると、3月28日から4月1日スペイン・グアダラハラで開催されたITTFチャレンジ・スペインオープン女子ダブルスに橋本帆乃香とのペアで出場し、優勝する。続く4月10日から14日までクロアチアのザブレブで開かれたITTFチャレンジ・クロアチアオープンの女子ダブルスでも優勝。

また、7月のITTFワールドツアープラチナ・オーストラリアオープン女子ダブルスは、決勝で伊藤美誠と早田ひなペアと佐藤・橋本ペアという日本人対決となり、ストーレト負けで準優勝。なお、スペインオープンは女子シングルスでも出場し、準優勝となっている。国内大会の最高峰である全日本選手権では女子シングルスでベスト8、女子ダブルスでベスト4という成績だ。2019年の全日本選手権でもタイトル獲得はならなかったが、ダブルスでは結果を出している。

地元・北海道の中学高校時代から頭角

佐藤は1997年12月23日に北海道で生まれた。現在はミキハウスに所属している。小学2年生のときに地元の南茅部スポーツ少年団で卓球を始めた。尾札部中学3年生のとき、全国中学校大会女子シングルスで優勝したことで注目を集めるようになる。高校は札幌大谷高校に進学し、1年で全日本高等学校総合体育大会(インターハイ)準優勝。2013年から国際大会にも参加し、2014年6月の韓国オープンアンダー21部門のシングルスで初優勝を飾り、続くスウェーデンオープンでも優勝した。2015年、ポルトガル・リスボンで開催されたITTFワールドツアー・グランドファイナルのアンダー21部門で、銅メダルを獲得するなど、高校時代から頭角を現し始めた。そして、2016年に高校を卒業した佐藤はミキハウスに入社する。

佐藤のプレースタイルは「右S裏粒カット」だ。まるで暗号のようだが、もう少しわかりやすく説明すると、佐藤は握手をするように握る「シェークハンド」というグリップで、表面に平らな裏ラバー、裏面にボールに変化を与えやすい粒高ラバーを貼ったラケットを握る。そして、「カット主戦型」というプレースタイルで、後陣に構えて、後方回転を中心に強い回転をかける「カット」ボールを、粘り強く打ち返して、相手がミスをするのを待つ「守備型」ということになる。バックカットの安定感には定評があり、恵まれた体格を生かした守備範囲の広さも持ち味のひとつだ。最近は攻撃面に磨きをかけており、オールラウンドプレーヤーを志向しているようだ。

カットマンとして知られる佐藤。自身の強みで東京五輪代表入りを目指す

世界ランキング14位、世界最長ラリー

ITTFワールドツアーで初優勝を果たした2016年のクロアチアオープン女子シングルスでは、ランキングで格上の福原愛を準々決勝、伊藤美誠を準決勝で退け、決勝で平野美宇を破った。2017年のカタールオープンでは、決勝トーナメントの1ラリーで10分13秒、766回もラリーを続けて、国際卓球連盟(ITTF)は「Longest Table Tennis Rally Ever!(卓球史上最長のラリー!)」と動画で紹介した。

シングルスの自己ベストは世界選手権ベスト32、ワールドツアー優勝。女子ダブルスの自己ベストは、橋本帆乃香とのペアで優勝、アジア卓球選手権で3位。女子団体は平野美宇・伊藤美誠・早田ひな・加藤美優らと臨んだアジア卓球選手権で準優勝している。

2019年4月時点の世界ランキングは13位。日本人では6位の石川佳純、7位の伊藤美誠、9位の平野美宇に続き、4番手につけている。この3選手と柴田沙季、加藤美優の両選手とともに2018年度の世界選手権に選ばれている。

東京五輪の代表選手に選考基準は、男女ともにシングルス代表が2020年1月時点の世界ランキング上位2名で決まり、団体戦要員の3人目が、世界ランキング、ダブルスなどの実績や相性を考慮して、メダルが取れる選手を強化本部が推薦することになっている。佐藤の世界ランキングは、現在日本人4位だが、柴田紗希がすぐ後ろに迫っている状況だ。

残り1年間で、少なくとも2人より良い成績を残す必要がある。また、現在ダブルスを組む橋本帆乃香は、佐藤と同じ“カットマン”。それは、「カット主戦型」の選手とそれ以外の選手がダブルスで組むというセオリーがないからなのだが、シングルスで選ばれた2人が、「カット主戦型」でなければ、団体戦出場枠の3人目に滑り込むのが非常に難しいことを意味している。彼女にとって正念場はここからだ。

同じミキハウス所属で長く相棒を組む佐藤瞳(左)と橋本帆乃香(右)。国際大会で惜しいところまで食いついている

黄金世代に対して「先輩」の意地を見せられるか

日本卓球女子はタレント揃いで、まさに群雄割拠の様相を呈している。2018年の全日本選手権では、王者の石川が17歳の伊藤に敗れるなど、このところ10代選手の成長が著しい。黄金世代と呼ばれる伊藤や平野はすでに佐藤よりランキングが上位だ。この世代には加藤美優、早田ひなもいる。さらに年下の長崎美柚など、勢いのある10代選手たちの激しい追い上げも脅威となるだろう。事実、佐藤は、2019年1月の全日本選手権で14歳の木原美悠に敗れてしまっている。

佐藤は2018年12月23日で21歳になった。黄金世代の「ひと世代」上ということになるだろうか。どのスポーツでもそうだが、ゲーム運びなど経験がものをいうこともある。先輩としての強みを、佐藤が見せられるかどうかも鍵となりそうだ。プレースタイルは希少な“カットマン”。石川、平野、伊藤というビッグ3にはないスタイルで存在感を示し、東京五輪にチャレンジしてほしい。