「体操ニッポン」東京オリンピック2020への期待

リオ五輪で男子体操個人総合2連覇を達成した内村航平選手
リオ五輪で男子体操個人総合2連覇を達成した内村航平選手リオ五輪で男子体操個人総合2連覇を達成した内村航平選手

「お家芸」復活に向けて勢い

オリンピックの競技の中でも、かつて日本の「お家芸」とまで呼ばれた体操競技。技の難易度や美しさ、安定性などを競い合い、選手のダイナミックかつ優美な動きは、見る側も一瞬たりとて気が抜けない。人間離れした技の数々は、フィニッシュと同時に、会場の観客やテレビ中継の視聴者を大きな感動に包み込む。こうした体操競技の醍醐味を、2020年東京五輪でも存分に味わうために、知っておきたい知識やルール、エピソードなどを紹介しよう。

戦後すぐから世界に存在感

体操競技は19世紀初頭に、ドイツ体操の父とよばれるヤーンが、祖国の青少年の心身を鍛練するために始めた器械運動が起源だ。その後、ヨーロッパに広がり、1896年の第1回アテネ五輪から競技が行われている。日本は第2次世界大戦後に初めて参加した1952年ヘルシンキ大会で3選手が4個のメダルを取り、翌大会の1956年メルボルン五輪では、男子団体総合で初めて銀メダルを獲得。日本体操界のレジェンド小野喬(たかし)選手が鉄棒で獲得した日本初の金メダルを含め、個人でも10個のメダルを獲得するなど、戦後まもないころから、世界に存在感を示してきた。

モントリオール五輪で男子体操団体総合で前人未到の五輪5連覇を達成
モントリオール五輪で男子体操団体総合で前人未到の五輪5連覇を達成モントリオール五輪で男子体操団体総合で前人未到の五輪5連覇を達成

出場資格、出場選手の決まり方 

日本の選考大会は、全日本選手権、NHK杯、全日本種目別選手権。その得点でオリンピック代表の候補選手が決まり、候補選手の中からメダル獲得につながりそうな選手が選考される。団体の出場資格としては、世界選手権などの世界大会で上位チームに入る必要がある。

オリンピックをはじめとする国際大会では、男子が床運動・鉄棒・平行棒・あん馬・つり輪・跳馬の6種目、女子が床運動・平均台・段違い平行棒・跳馬の4種目を正式種目としている。

団体総合は、これまで各国1チーム5人で演技を行い、合計得点で争ってきたが、2020年東京五輪からは4人で戦うことになる。また、個人総合が、すべての種目を1人の選手が演技を行い、合計得点を競うのに対して、種目別は、各種目の得点上位の選手が決勝で争うことになる。なお、2020年東京五輪から、新たに種目別のみに出場する「個人枠」が設けられ、最大で2名の選手が選抜できるようになる。長年にわたって10点満点制だったが、誤審などをきっかけに廃止され、2006年から技の難しさを得点化したDスコアと、演技の完成度を得点化したEスコアの合計得点で争う採点方式となっている。

体操競技の歩みと見どころ

輝かしい黄金期

「体操ニッポン」が2016年リオ五輪までに獲得したメダルの数は、金31、銀33、銅34の計98個。男子では旧ソ連が獲得した合計94個が最多記録だが、すでにその数を追い抜いて97個を獲得している。一方、女子は団体で1964年に東京五輪で獲得した銅1個のみだ。

1960~70年代、日本男子は圧倒的な強さを誇っていた。1960年ローマ五輪大会から1976年モントリオール五輪まで、団体総合で5連覇。個人総合でも1964年東京五輪から1972年ミュンヘン五輪まで3連覇を達成した。しかし、その後の80年〜2000年代初頭まで、長い低迷期を迎える。そして、2004年アテネ五輪、「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ」というアナウンサーの実況は今でも記憶に新しいが、団体総合で28年ぶりの金メダルを獲得し、復活への狼煙をあげると。その後、2012年ロンドン五輪で、内村航平選手が個人総合で金メダルを獲得、28年ぶりの快挙達成に日本中が大きく沸き、続く2016年リオ五輪では、8年ぶりに団体総合で金メダル、内村選手が日本人では44年ぶりとなる個人総合2連覇と、「体操ニッポン」の完全復活に、世界中から大きな注目が寄せられた。

リオ五輪で8年ぶりに男子体操団体総合で金メダルを獲得
リオ五輪で8年ぶりに男子体操団体総合で金メダルを獲得リオ五輪で8年ぶりに男子体操団体総合で金メダルを獲得

東京五輪の見どころ

2018年10月の世界選手権で、すでに出場権を獲得している男子団体総合が、五輪2連覇を果たせるかどうかが、最大のポイントだろう。中国やロシアの追撃を、いかに振り切るのか。また、メダル1~3個にとどまっていた個人種目でも量産を目指したいところ。3大会で7つのメダルを獲得した内村選手をはじめとするベテラン勢と、白井健三選手ら、台頭著しい若手選手が融合することで、並み居る強豪相手に、どこまで食い込めるかが注目されている。

一方の女子は1964年東京五輪の団体総合で銅メダルを獲得して以来、メダルからは縁遠い状況が続いてきた。また、2018年10月の世界選手権で、女子団体は6位という成績に終わり、出場枠を逃している。ただ、女子のエースと目されている村上茉愛(まい)選手が、同選手権の個人総合で、日本女子史上最高の銀メダルを獲得するなど、大きな可能性を感じさせる結果を残している。来年の同大会での奮起を期待するとともに、2016年リオデジャネイロ五輪で、48年ぶりに入賞(4位)を果たした勢いを保ってほしい。

リオ五輪で48年ぶりに入賞(4位)を果たした村上茉愛選手
リオ五輪で48年ぶりに入賞(4位)を果たした村上茉愛選手リオ五輪で48年ぶりに入賞(4位)を果たした村上茉愛選手

東京オリンピックの展望

会場と日程

会場は有明体操競技場(東京都江東区有明、2019年10月末ごろ完成予定)。日程は7月25日に男子、同26日に女子の体操競技がスタート。決勝は男子が同27、29日、女子が同28、30日に加え、8月2~4の3日間にも男子・女子で行われる。トランポリンは7月31日に女子、8月1日に男子の決勝。新体操(女子)は8月7日に始まり、翌8、9日に決勝が行われる。

出場有力選手

日本体操協会が2018年10月時点で「2020年東京五輪特別強化選手」としているのは以下の通り。下記の「ナショナル選手」とともに、東京五輪の出場が有力視されている。

〈男子〉

杉野正尭・南一輝・三輪哲平・安達太一・北園丈流・岡慎之助

〈女子〉

村上茉愛・寺本明日香・杉原愛子・畠田瞳・大口真奈・畠田千愛・豊田望・梶田凪・桒嶋姫子・山田千遥・清遠実生・新田いずみ・宮田笙子

2018年度「ナショナル選手」は以下のとおり。

〈男子〉

・内村航平・白井健三・萱和磨・谷川翔・谷川航・千葉健太・田中佑典・野々村笙吾・田浦誠也・前野風哉・神本雄也・荒屋敷響貴・長谷川智将・高橋一矢・米倉英信・安里圭亮・亀山耕平・宮地秀享

〈女子〉

・村上茉愛・寺本明日香・畠田瞳・杉原愛子・梶田凪・宮川紗江・内山由綺・中路紫帆・畠田千愛・中村有美香・湯元ゆりか・塙颯香

新体操の第14期フェアリー・ジャパンとして選抜されたのは、以下のとおり。

(団体シニア)杉本早裕吏・松原梨恵・国井麻緒・横田葵子・熨斗谷さくら・竹中七海・鈴木歩佳・織田莉子・島田悠里

(個人シニア・個人特別強化選手)皆川夏穂・喜田純鈴・大岩千未来

トランポリンの強化指定選手(SA)は以下のとおり。

〈男子〉伊藤正樹

〈女子〉森ひかる・岸彩乃

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