自転車競技BMXレーシング:何が起こるか分からない「自転車の格闘技」

BMXレーシングは「格闘技」と形容されるほど激しい自転車レースだ。先行逃げ切りが有利とされているが、レース中は接触や転倒が付き物。優勝候補であっても、油断をしたら足をすくわれる危険性がある。裏を返せば、これまでオリンピックでメダルを獲得したことがない日本勢にも、表彰台の可能性があるということだ。1レースは40秒ほど。スリリングな展開から目が離せない。

接触事故は当たり前。自転車競技の「格闘技」BMXレーシング
接触事故は当たり前。自転車競技の「格闘技」BMXレーシング接触事故は当たり前。自転車競技の「格闘技」BMXレーシング

ヨーロッパ生まれの自転車がアメリカで独自進化

18世紀末にドイツで発明された自転車は、フランスで改良され、貴族階級のスポーツとして親しまれるようになる。その後、アメリカ大陸に渡って普及。1986年、近代オリンピックの第1回となったアテネ大会でも、自転車は競技として採用された。

長い伝統を持つ自転車競技の中でも、BMX(バイシクル・モトクロス)は新しい部類に入る種目だ。1970年代のアメリカで、オートバイのモトクロスの影響を受けて誕生。オフロードでの短距離レースや、激しいジャンプなどのスタントプレイに特化した専用の車体が作られるようになり、アメリカを中心に広まった。BMXレーシングは2008年北京五輪から正式種目に採用され、2020年の東京五輪にはBMXフリースタイル・パークが加わることになった。

自転車競技の中でも新しいBMX。レーシングは北京五輪から採用されている。
自転車競技の中でも新しいBMX。レーシングは北京五輪から採用されている。自転車競技の中でも新しいBMX。レーシングは北京五輪から採用されている。

BMXレーシングの見どころはスリリングな展開

BMXレーシングは、大きく起伏のあるダートコースをBMXで駆け抜け、ゴールへの着順で順位を決める種目だ。一度のレースに参加するのは最大8人で、コースの長さは400mほどだ。

スタート地点は「スタートヒル」と呼ばれ、8mの高所に設定されている。スタートヒルには1から8までの数字が並び、これまでの成績や予選結果が高い選手から番号を選ぶ。一般的にはインコース(1番)が有利とされているが、コースや選手の特徴によってはアウトコースが有利になるため、スターティング・ポジションからレースはすでに始まっていると言える。

BMXレーシングではランダムスタートゲートを採用している。「WATCH THE GATE」という音声の後、シグナル点灯が点滅してゲートが開くのだが、シグナル点灯までの時間が0.1秒から2.7秒とランダムになっている。選手がタイミングを取りにくくすることで、スタートの公平性を担保している。レースは先行逃げ切りが有利なため、スタートの一瞬が、レースの勝敗に大きく関わるのだ。

8mの高さから下るBMXは一気に時速60kmまで加速する。その後、コース上にある大小のこぶをジャンプしたり、アスファルトでできた傾斜のあるコーナー「バーム」でコース取りをしたりしながら、約40秒でゴールまで駆け抜ける。途中、転倒や落下、自転車同士の接触が頻繁に発生するため、BMXレーシングは「自転車の格闘技」とも呼ばれており、フルフェイスヘルメットやゴーグルといった防具の装着が義務付けられている。

起伏の激しいコースを、競い合いながら猛スピードで駆け抜ける。
起伏の激しいコースを、競い合いながら猛スピードで駆け抜ける。起伏の激しいコースを、競い合いながら猛スピードで駆け抜ける。

アメリカ勢が意外に苦戦の可能性。日本人選手にメダルのチャンスあり

BMXはアメリカ発祥のスポーツだが、アメリカ代表選手がオリンピックで金メダルを獲得したのは、リオデジャネイロ五輪男子でのコナー・フィールズのみだ。男子では2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪で、ラトビアのマリス・ストロンベルグスが連覇を達成した。女子はロンドン五輪、リオデジャネイロ五輪で、コロンビアのマリアナ・パホンが連覇を達成。アメリカ、ラトビア、コロンビア、フランス、オランダ、オーストラリア、ニュージーランド、ベネズエラが、BMXレーシングのメダル獲得国となっている。BMXに出場したことがある日本人は2人。北京五輪の阪本章史とリオデジャネイロ五輪の長迫吉拓で、2人はいずれも準々決勝で敗退している。

五輪開催国となる日本は、男女1名ずつの出場枠をすでに確保している。男子で出場が有力視されているのは、リオデジャネイロ五輪にも出場した長迫吉拓だ。長迫は1993年9月16日生まれの26歳。岡山県の出身で、モトクロスインターナショナルに所属している。2018年にインドネシアのジャカルタで開催されたアジア大会で金メダルを獲得した。これはBMXにおいて日本人初の快挙だった。アジア大会では、GAN TRIGGR所属の吉村樹希敢が決勝に進出して6位。この2人が、男子の有力候補と言えるだろう。

長迫吉拓は、2018年のアジア大会で日本人初の金メダルを獲得した。
長迫吉拓は、2018年のアジア大会で日本人初の金メダルを獲得した。長迫吉拓は、2018年のアジア大会で日本人初の金メダルを獲得した。

一方、女子の有力候補は、2018年アジア大会で決勝に進出した畠山紗英だ。畠山は1999年6月7日生まれの20歳。神奈川県の出身で、現在は日本体育大学に在学中だ。アジア大会の決勝では金メダルが期待されたものの、ほかの選手と接触で転倒し8位に終わった。その悔しさをバネに、さらなるレベルアップを目指している。その畠山のライバルとなるのが、IRC TIRE所属の瀬古遥加だろう。瀬古は1996年11月9日生まれの22歳。三重県出身で、現在は強化指定を受けていないものの、2013年から全日本BMX選手権大会5連覇し、世界選手権への出場を果たすなど若いながら日本BMX界をけん引する存在となっている。

さらに18歳の中井飛馬や丹野夏波といった若手も、日本自転車競技連盟の強化指定選手に選出されている。2020年東京五輪まで残り1年。BMXレーシング日本代表の座を争う国内競争が、いよいよ激しさを増している。

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