全英オープン制覇の「笑顔のシンデレラ」渋谷日向子が米国女子ツアー参加を回避。その理由とは?

「まだ自分が1年間ツアーで戦う覚悟ができていない」

畑岡奈紗や勝みなみとともに「黄金世代」と呼ばれ、日本女子ゴルフ界の未来を背負って立つのが渋野日向子(しぶの・ひなこ)だ。世界的にはほぼ無名選手だった渋野は全英女子オープン優勝の偉業を達成し、いまや「笑顔のシンデレラ」として一躍人気選手として注目を集めている。最近では大舞台である米ツアーの参加を回避したことでも話題を呼んだ。その決断の背景を彼女の経歴とともに探る。

2019年8月の全英AIG女子オープンで日本人史上2人目の海外メジャー制覇を果たし、一躍時の人に
2019年8月の全英AIG女子オープンで日本人史上2人目の海外メジャー制覇を果たし、一躍時の人に2019年8月の全英AIG女子オープンで日本人史上2人目の海外メジャー制覇を果たし、一躍時の人に

2018年にプロテストに合格し、翌年に全英オープン制覇

渋野日向子(しぶの・ひなこ)は1998年11月15日に岡山県で生まれた。21歳の誕生日を迎えたばかりの期待の新星だ。

陸上の投てき競技の選手だった両親のもと、三姉妹の次女として育てられ、小学2年生のときにゴルフを始めた。ジュニア世代から頭角を現し、2018年7月にプロテストに合格。ただし、実は二度目の挑戦での合格だった。

一度目のプロテスト受験は、高校卒業後の2017年。最終日まで進んだものの、不合格に終わった。本人いわく、二次テストをトップ通過で終えたところで気の緩みが出てしまったという。しかしその後、現コーチの青木翔氏と出会い、メンタル面でも大きく成長。一度目のチャレンジから1年後に見事に「プロ入り」を果たした。

その後は順調すぎるほどのキャリアを歩んできた。プロ1年目の2019年5月に行われた国内メジャーのワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップでは、20歳178日の大会史上最年少記録を打ち立て初優勝。その2カ月後の7月に行われた資生堂 アネッサレディスオープンでは、通算12アンダーで並んだイ・ミニョン(韓国)とのプレーオフを制し、早くも2度目の優勝を成し遂げてみせた。

そして賞金ランキングによって、海外初挑戦となる全英女子オープンの出場資格を得ると、メジャー初出場にして誰もが予想しなかった大仕事をやってのけた。

夢の舞台でプレーできるという喜びに胸をはずませながら、「目標は予選突破」と控えめに語っていた渋野だが、3日目には単独首位に。最終日には3位に後退するも、15番ホールで並び、最終18番ホールで約5メートルのバーディーパットを決め、通算18アンダーで、樋口久子以来、日本人42年ぶりのメジャー優勝を果たした。

全英オープン制覇の翌月にはデサントレディース東海クラシックでも優勝。8打差を逆転する実力を披露した
全英オープン制覇の翌月にはデサントレディース東海クラシックでも優勝。8打差を逆転する実力を披露した全英オープン制覇の翌月にはデサントレディース東海クラシックでも優勝。8打差を逆転する実力を披露した

「覚悟を決めてから」。来季の米国女子ツアーは参加回避へ

偉業達成で一躍注目の的となった渋野だが、11月上旬にはある決断を下し、さらに話題を集めた。来季の米国女子ツアーの参加を回避するという選択だ。

全英オープンの優勝により、1年間に限り米国女子ツアー参戦の資格を得られた渋野だが、「まだ自分が1年間ツアーで戦う覚悟ができていない。もっと覚悟を決めてから行くべき。レベルを上げてからいきたい。気持ちの部分が強い」と決意に至った理由を説明した。

全英オープンの優勝により、ANAインスピレーション、全米女子プロゴルフ選手権(女子PGA選手権)、全米女子オープン、全英女子オープン、エビアン選手権というメジャー5大会への出場は確約される。さらには、例年日本ツアー開幕前にシンガポールで行われるHSBC女子世界選手権の出場も決まったため、最低6試合は出場が保証されることになる。それだけの有望株ゆえ、海外メディアからは米国女子ツアーの不参加の決断を残念がる声や疑問の声も上がったが、渋野の決断は固い。

米国女子ツアーに関しては2021年からの本格参戦をめざしているという。21歳の1年間を「いろんなことを覚悟していく年になる」と表現し、2020年は米国女子ツアーで何試合かの出場を念頭におき、2020年の予選会を受験する意向があることをメディアに明かしている。

米国女子ツアーの予選会は3つのステージに分かれており、Qシリーズと呼ばれる第3ステージの最終予選会で最大108人の受験者中45位以内に入れば、翌年のツアーの出場権が与えられる。出られる試合数は順位に関係しており、日本ツアーでアメリカ女子ゴルフ協会(米LPGA)が定めた期限までに世界ランク75位以内に入っていれば、1次と2次の予選は免除され、最終予選となる第3ステージに挑戦できる。

明るいスマイルがトレードマークで「笑顔のシンデレラ」という愛称を持つ。2019年10月に行われたZOZOチャンピオンシップでは名手タイガー・ウッズと一緒に写真に納まった
明るいスマイルがトレードマークで「笑顔のシンデレラ」という愛称を持つ。2019年10月に行われたZOZOチャンピオンシップでは名手タイガー・ウッズと一緒に写真に納まった明るいスマイルがトレードマークで「笑顔のシンデレラ」という愛称を持つ。2019年10月に行われたZOZOチャンピオンシップでは名手タイガー・ウッズと一緒に写真に納まった

21歳の渋野にとって「一番大きな目標は東京五輪」

この渋野の勇気ある決断の裏には、母国で迎える憧れの舞台への強い思いがあるという見方が強い。

21歳の彼女は「自分が最初から目標を高く持って、その目標に向かって頑張り続ける。一番大きな目標は東京五輪」とメディアに答えたことがある。世界ランキングをもとにした国際ゴルフ連盟発表の「オリンピックゴルフランキング」で15位までの選手に東京五輪の出場権が与えられ、16位以下は1カ国2人を上限として選出される。ランキングは2020年6月30日時点までの計上となるため、来季前半のツアー成績も含まれることになる。

2019年11月27日時点で、渋野のオリンピックゴルフランキングは12位。自動的に出場権利が得られる最後の15位に近く、東京五輪行きを決めるためには渋野は今後も結果を出し続けランキングポイントを積み重ねていく必要がある。調子を落とすわけにはいかない。

仮に米国女子ツアーに参戦した場合、来季は最低でも10試合に出場する義務が生じる。同じ時期の日本ツアーに参加することはできない。レベルが高く、アメリカだけでなく欧州を含んだ慣れない海外の地で苦戦してランクを落とすリスクを避けるため、米国女子ツアー参戦を先送りした可能性は十分にある。日本とアメリカの往復移動がコンディションに及ぼす影響も決して小さくないだろう。

晴れやかなスマイルでシンデレラストーリーを駆け足で紡いできた渋野は「笑顔のシンデレラ」の愛称で親しまれている。「一番大きな目標は東京五輪」。強い思いを持ってめざすオリンピックの舞台で最高の笑顔を咲かせるために、渋野は心を定めた。

▼【55枚】“スマイルシンデレラ”渋野日向子の画像集▼

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