八村塁:日本人初!NBAドラフト上位指名でプロ入りが確実視される逸材

2019年6月20日のNBAドラフトに向けてアーリーエントリーを選択した八村塁
2019年6月20日のNBAドラフトに向けてアーリーエントリーを選択した八村塁2019年6月20日のNBAドラフトに向けてアーリーエントリーを選択した八村塁

メジャーリーグやサッカーなどのメジャーなプロスポーツで、日本人選手がトップリーグの海外チームへ入団することは珍しくなくなった。ただ、プロバスケットボールリーグの最高峰であるアメリカのNBAだけは例外だった。過去において2014年の田臥勇太、2018年の渡邊雄太の2人しかいない。

しかし、その2人を上回る評価を受け、今年のNBAのドラフトで、「上位指名は間違いない」とさまざまなメディアで報道されている日本人大学生がいる。それはバスケットボールの名門ゴンザガ大学3年生の八村塁(21歳)だ。その八村は4月15日、4年生となる来季は同大でプレーせずに、「アーリーエントリー」の選択を発表した。つまり、ドラフトの自動資格を得る前に世界最高峰のNBA入りを目指すと宣言したのだ。

2004年に日本人初のNBAプレーヤーとしてイノベイターとなった田臥勇太。2018年になり2人目の渡邊雄太が続いた
2004年に日本人初のNBAプレーヤーとしてイノベイターとなった田臥勇太。2018年になり2人目の渡邊雄太が続いた2004年に日本人初のNBAプレーヤーとしてイノベイターとなった田臥勇太。2018年になり2人目の渡邊雄太が続いた

アーリーエントリーとは

まず、NBAのドラフトについて簡単に説明しよう。NBAに入るには、1)NBAドラフトで指名される。2)ドラフト外からNBAのチームと契約する。3)デベロップメント・リーグに所属し、NBAへの昇格を待つという3パターンがある。

現在は、前シーズンの成績下位チームから順番に指名していく方式に加えて、1巡目上位3位までは、例外を設けて、NBAプレーオフに進出できなかった14チームによる抽選(ロッタリー)で指名順位が確定される。そうすることで、低迷しているチームでも、有望な選手を獲得することができ、NBA全体のレベルアップを図る狙いがある。

ロッタリーの実施方法は、用意された番号を成績の悪い順に分配。当たり番号を持ったチームが、1巡目の上位3位までの指名権を獲得でき、あとは通常のウェーバー方式順で2巡目まで行われるのが通常だ。

NBAは計30チーム。それぞれのチームは最大15人の「ロースター枠(チームの公式戦に出場できる資格を持つ選手枠のこと)」がある。NBAには、二軍や三軍という概念がないため、1チームに所属できるのはロースターに選ばれた者だけなのだ。また有望な選手は、高校卒業後、大学卒業を待たずにプロ入りを宣言してNBAドラフトにエントリーするという方法を取ることがある。レブロン・ジェームズも2003年にキャバリアーズ入りしたのがこの方式だった。これを「アーリーエントリー」と呼び、ドラフト60日前までに意思を表明する必要がある。八村はこの「アーリーエントリー」を選択した。

その八村だが、6月20日に行われるNBAのドラフトで、日本人史上初の1巡目指名が期待されている。あるアメリカのメディアによれば、最新版のドラフト予想では、1巡目全体6位指名という予想だ。間違いなく、上位指名が確実とみられている。

NBAでプレーしたことがある、2人の“ユウタ”

過去にNBAの舞台で活躍した日本人はたったの2人だ。ともにサマーリーグを経て、契約に至った。まず1人目は2004年にフェニックス・サンズに所属した田臥勇太選手。開幕ロースター入りし、日本人初のNBAプレイヤーとなった田臥は、開幕戦を含む4試合に出場し、7得点3アシストを記録したものの、結局、解雇されてしまい、その後NBA復帰は叶わなかった。しかし、まぎれもなく道を切り開いた日本人NBA選手の先駆者である。

続く2人目は、14年ぶりの日本人NBAプレイヤーとなったメンフィス・グリズリーズの渡辺雄太選手だ。2018年10月27日(日本時間28日)のフェニックス・サンズ戦でNBA公式戦初出場を果たした渡邊。約4分間の出場で、フリースローによる2得点、ディフェンシブリバウンド2本を記録した。

その後も合計15試合のNBAゲームに出場。Gリーグ(下部リーグ)では平均14.2得点、7.2リバウンド、2.6アシスト、1.1ブロックという好成績をマークしている。2019-20年シーズンは、グリズリーズと結んだ2年間の2ウェイ契約の2年目とあって、その活躍に期待したいところだ。

八村塁と渡邊雄太はW杯予選で日本代表としてプレーしている
八村塁と渡邊雄太はW杯予選で日本代表としてプレーしている八村塁と渡邊雄太はW杯予選で日本代表としてプレーしている

本場アメリカで凄みを増した“怪物性”と、アメリカでの現在地

そして新たなNBA挑戦者となるのが、八村塁だ。1998年、西アフリカ・ベナン出身の父と日本人の母との間に富山県で生まれた八村は、宮城・明成高時代に全国高校選抜優勝大会3連覇を達成した。ワシントン州スポケーンにあるゴンザガ大進学後も着実に成長し、3年生の今季は中心選手としてウェストコースト・カンファレンス(WCC)のレギュラーシーズン7連覇に貢献。WCC最優秀選手に輝いた。

身長204cm、体重106kgの八村は、アメリカ人選手のなかに入っても、決して引けを取らない体格だ。むしろパワーフォワードとしては充分なサイズ。屈強な体でポジションを取り、体を寄せてくる相手にも当たり負けしない。

彼がアメリカ中に知られるようになったのは、2018年11月にハワイで開催された「マウイ・インビテーショナル」での活躍が大きいだろう。強豪8校が集まった招待制の大会で、八村はチームのエースとしてゴンザガ大を優勝に導き、自身MVPに選ばれた。決勝戦では、NBAドラフト全体1位候補と目されるザイオン・ウィリアムソン率いるデューク大学を、激戦の末に破り、実力と存在感を大きくアピールした。

今シーズンに入って、アウトサイドプレーに対応できるスピードを身につけ、シュート力を改善させた八村。ショートレンジのシュートを武器に、平均20点以上を記録し、フィールドゴール成功率やフリースロー成功率を高めている。その一方で、リバウンドやブロックは、まだトップクラスとは言い難く、インサイドプレイヤーとしては、まだまだ物足りない側面もあり、今後の課題だろう。

ただ、国際試合での活躍に加え、身体サイズ、運動能力の高さなどから考えると、八村の潜在能力は計り知れないものがある。複数ポジションを器用にこなせる能力が求められるNBAにおいて、八村は十分に適応できるとの声も少なくない。今年のドラフトで上位指名される現実味は、否が応でも高まっている。

2019年ドラフトで注目されるプロスペクトたち。八村を最も必要とするチームは

実は「不作の年」と言われている2019年のNBAドラフト。そんな中でも注目されているのが、ザイオン・ウィリアムソン(デューク大学・1年生)だ。今年のトップ指名候補と評され、次世代の“レブロン”との呼び声も高いウィリアムソンは、201センチ129キロという体格。今季はNCAAトーナメントを含め、33試合に出場し、平均22.6得点、8.9リバウンド、2.1アシスト、2.1スティール、1.8ブロックに加えて、フィールドゴール成功率68.0パーセントをマークした。1年生選手では、史上3人目の快挙となるカレッジバスケ年間最優秀選手に贈られるネイスミス賞を受賞した。

続いて、カナダ出身のR.J・バレットも注目選手のひとりだ。U19カナダ代表を世界選手権制覇に導き、自身は大会MVPを受賞。2019年のNBAドラフトの最有力候補に名を連ねている。ザイオンと同じデューク大学に在籍し、得点、リバウンド、アシストと、何でもこなすオールラウンダー。“ここぞ”で、得点を上げる勝負強さが魅力で、人並み外れた身体能力を持つザイオンのパフォーマンスが目立つ中で、実はザイオン以上の数字を残している。

ガードのジャ・モーラント(マーレイステート大学・2年生)も、上位指名が有力視されている。高いハンドリング力を生かし、キレのあるドライブで相手ディフェンスを突破、ゴールするプレースタイルは、まさに近代ポイントガードのあるべき姿だろう。外角からのシュートが得意で、2019年1月時点で、平均得点23.0、7.0リバウンド、9.3アシストを記録した。シュートだけではなく、スピード、パスセンス、ディフェンス力、いずれもNCAAトップレベル。ポイントガードを欲しいチームの即戦力となるだろう。

さて、私たちの八村塁はどうだろうか。八村は素材型というよりも、即戦力を求めるチームから注目を集めるとの下馬評だ。実際に予想サイトは、ニューオーリンズ・ペリカンズ、ユタ・ジャズ、マイアミ・ヒートなど、オールスタークラスのセンターがいて、プレーオフを争うレベルのチームを八村獲得に動くクラブチームとして挙げている。

八村塁のアメリカ人選手にも体格負けしない、フィジカル面での優位性は即戦力として評価されている
八村塁のアメリカ人選手にも体格負けしない、フィジカル面での優位性は即戦力として評価されている八村塁のアメリカ人選手にも体格負けしない、フィジカル面での優位性は即戦力として評価されている

2020年東京五輪が八村のキャリアと日本バスケの未来を飛躍させる

NCAA屈指の強豪校ゴンザガ大でエースとなり、ここまで結果を残している八村塁。彼のドラフト指名は確実だろう。おそらく彼はドラフト指名からNBA入りを果たす日本人初の選手となるはずだ。そして、NBAプレイヤーという肩書きを背負い、2020年東京五輪のコートに立つことになるだろう。

バスケットボールでアメリカ留学、そしてNBAへ──。田臥勇太の切り開いた道は、20年という年月をかけて、NBAドラフト上位指名受ける日本人選手を誕生させた。そして今、渡邊や八村の活躍に後押しされるかのように、テーブス海(ノースカロライナ大ウィルミントン校)や田中力(IMGアカデミー)など若い逸材が、続々とチャレンジしている。そして、そんな彼らに憧れ、海を渡る日本のバスケットボール少年は今後ますます増えるはずだ。

NBAドラフト公示日となる2019年6月20日は、八村塁と日本バスケットボール界にとって、きっと忘れられない運命の一日となるだろう。

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