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国内トップのアスリート育成機関、自衛隊体育学校|重量挙げの三宅義信が金メダル第1号【スポーツの国家的取り組み】

1964年東京五輪以降、すべてのオリンピックに選手を派遣

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

リオデジャネイロ五輪のメダリストのなかには、陸上男子50キロ競歩で銅メダルを獲得した荒井広宙(ひろおき)をはじめ、「自衛隊体育学校」に所属する選手が複数いた。1964年の東京五輪開催をきっかけに創立された同校の特色とは。来たる東京五輪での活躍が期待される選手とともに紹介する。

日本の平和と独立を守り、安全保障を担う自衛隊。1961年に設置された自衛隊体育学校では国際舞台で活躍できるアスリートを育成している

戦前の陸軍戸山学校をモデルとした選手養成機関

自衛隊体育学校は1961年に設置された防衛省の国家機関で、国防の任に就く自衛官の身体を鍛えるだけでなく、自衛隊員に必要な知識や技能を習得するための教育訓練や、体育に関する調査研究なども行われている。

同校が設立された背景には、1964年の東京五輪開催がある。それ以前のオリンピックで思うような成績を残せていなかった日本は、開催国の威信をかけ、競争力を高める必要があった。当時の防衛庁長官であった江崎真澄の提案により、戦前の陸軍戸山学校をモデルとした「オリンピック等国際級選手の育成」が計画された。

現在、自衛隊体育学校の主な活動拠点は陸上自衛隊朝霞駐屯地内に構えられており、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の共同機関の一つとして運営されている。施設内には照明付きの全天候型トラック競技場や日本水泳連盟公認の50メートル屋内プール、レスリング場、ボクシング場、柔道場、最新のトレーニング機器などを完備。所属監督やスタッフは各競技連盟と協会の強化委員やナショナルチームコーチを兼任するなど、まさに国内トップレベルの育成環境が整えられている。

「特別体育課程」と言われる第2教育課は、計13競技が教育課程に編成されている。レスリング、ボクシング、柔道、射撃、アーチェリー、ウエイトリフティング、陸上(マラソン、競歩)、競泳、近代五種、カヌー、ラグビー(女子)、さらには冬季種目であるバイアスロン、クロスカントリースキーと、マルチスポーツが対象となっている。

自衛隊体育学校一期生の三宅義信(中央)は重量挙げで世界の頂点に。東京五輪とメキシコシティ五輪で金メダルを手にした

過去の夏季オリンピックには述べ143名が参加

自衛隊体育学校には2つの教育課があり、第1教育課では自衛隊の体育指導者や格闘指導官などの育成が行われている。一方、アスリートの育成が目的である第2教育課(特別体育課程=特体)に入った学生は、一般の自衛官とは扱いが異なる。部隊に配属はされず、競技だけに専念することができる。専用の食堂は、バイキング方式で選手自身が食べる量を決めることができ、医官や管理栄養士の指導の下で体重管理に取り組める。

特別体育課程学生になるには二つの方法がある。一つは体育特殊技能者として採用されること。選手自身が願書を提出し、採用試験を受けて合格した者が入隊できる。一方、自衛官候補生か一般曹候補生として部隊に入隊してから選考を受け、特体に入る方法もある。この場合、まずは新隊員として約6カ月の教育を受けたのち、2度の選考をクリアしなければならない。特体は1年ごとに選考が見直され、競技成績が悪い選手は体育学校に残ることができず、セカンドキャリアとして監督やコーチ、自衛官への道へ進む。

創立当初の目的の一つである「国際級選手の育成」は、1964年の東京五輪でさっそく成果が現れた。一期生として同校に入隊した三宅義信が重量挙げで金メダルを獲得し、同校所属選手として初のメダリストとなった。また、同大会では円谷幸吉がマラソンで銅メダル、1万メートル走で6位入賞と、こちらも世界トップレベルの成績を残した。同校は東京五輪以降、日本選手団が不参加だったモスクワ五輪を除いたすべてのオリンピックに代表選手を送り出しており、夏季オリンピックには延べ143名が参加、20個のメダル獲得、冬季オリンピックには延べ82名が参加と、目覚ましい実績を残し続けている。

柔道女子78キロの東京五輪代表に内定している濵田尚里(右)は自衛隊体育学校の所属だ

柔道で女子78キロ級の濵田尚里は東京五輪代表に内定

数ある競技のなかでも最も輝かしい成績を収めているのが、日本のお家芸の一つであるレスリングだ。オリンピック金メダリストである金子正明や中田茂男、宮原厚次をはじめ、過去13大会で計12個と多くのメダルを獲得している。

現在、レスリング班には男子35名、女子6名の選手が在籍しており、マット4面と国内屈指の好環境で練習に励む。コーチ陣には、女子がロンドン五輪金メダリストの小原日登美(おばら・ひとみ)、男子が同大会金メダリストの米満隆弘、同大会銅メダリストの湯元進一と豪華な人員がそろっている。

特体の選手はランク付けされており、オリンピック代表や世界選手権のメダリスト、日本オリンピック委員会認定の特別強化選手のみが最も高い「SA級」に選別される。以下、「A級」は世界選手権やアジア大会代表選手、「B級」は全日本選手権3位以内または国体や全国大会優勝選手などと定められている。

現在の特体生には、リオデジャネイロ五輪の男子競泳4×200メートルリレーで銅メダルを獲得した江原騎士(ないと)、2018年の柔道世界選手権、女子78キロ級金メダリストで、同階級の東京五輪代表に内定している濵田尚里(しょうり)、フェンシングのワールドカップ団体戦(男子エペ種目)で優勝した山田優(まさる)などがいる。来たる東京五輪での表彰台入りをめざし、自衛隊のアスリートたちは日々、厳しい鍛錬を重ねている。