坂本勇人:好守好打の大型遊撃手は、尊敬する「師匠」稲葉篤紀監督とともにオリンピック野球の頂点をにらむ

「攻めの守備」で失点を防ぐ力は日本代表にも必要

2006年の高校生ドラフトで、読売ジャイアンツから1位指名を受けた坂本勇人(はやと)。不動の遊撃手として活躍し、その間に現日本代表監督の稲葉篤紀(あつのり)から事あるごとに打撃指導を受けてきた。「恩人」である稲葉を男にするため、坂本は2020年東京五輪出場に強い意欲を見せている。

WBCには2013年と2017年に出場。2017年は6試合でプレーし、24打数10安打の活躍を見せた
WBCには2013年と2017年に出場。2017年は6試合でプレーし、24打数10安打の活躍を見せたWBCには2013年と2017年に出場。2017年は6試合でプレーし、24打数10安打の活躍を見せた

現指揮官との長年にわたる師弟関係

「野球界を引っ張り、オリンピックを考えながらやってほしい。必要な選手になる」

2020年東京五輪で男子野球チームの監督を務める稲葉篤紀(あつのり)が、そう期待を寄せる選手がいる。読売ジャイアンツのリードオフマン、坂本勇人(はやと)だ。

坂本は読売、稲葉はヤクルトスワローズ(現東京ヤクルトスワローズ)から北海道日本ハムファイターズと、所属球団からすると接点がなさそうに見える。だが、坂本は2009年の国際大会ワールド・ベースボール・クラシック(以下WBC)に出場した同僚の亀井善行を通じて20歳の時に稲葉と出会い、事あるごとに打撃指導を受けてきた。球団や立場を超えた師弟関係を築いてきたと言っていい。

尊敬する「師匠」が日本代表監督に就任したことを受け、坂本も2020年東京五輪への出場に強い意欲を見せた。「オリンピックの時に稲葉監督の力になれるように精進したい」と宣言している。

坂本はすでにフリーエージェント権を取得している。どの球団とも選手契約を締結できる権利を持っているため、メジャーリーグ(以下MLB)に挑戦してもおかしくはない。ただし、MLB機構はメジャー契約選手のオリンピック出場に消極的なため、MLBのチームに移籍すると2020年東京五輪に出場できなくなる可能性が高い。当の坂本は2020年まで日本にとどまることについて「全く問題ない」と語っている。彼にとっては稲葉監督とともにオリンピックに出場することが最優先事項なのだろう。

ピッチャー坂本、キャッチャー田中将大だった小学生時代

坂本は兵庫県伊丹市出身。1988年12月14日に生まれた。小学生時代に所属していた昆陽里タイガースではピッチャーを務め、同級生の田中将大(現ニューヨーク・ヤンキース)とバッテリーを組んでいたのは有名な話だ。

伊丹シニアを経て、高校は青森県の光星学院高等学校(現八戸学院光星高等学校)に進学。3年次の2006年には、春の選抜高校野球大会に出場している。チームは1回戦で敗れたものの、彼自身は5打数3安打1打点2盗塁の活躍を見せた。

同年の高校生ドラフトでは読売から1位指名を受けて入団。堂上直倫(現中日ドラゴンズ)の外れ1位、将来性を期待されてのドラフト指名だったが、坂本は見事その期待に応え、2年目の2008年には8番二塁手で開幕スタメン入りを果たす。二岡智宏の負傷を受けて遊撃手にコンバートされて以降は、不動のレギュラーとして現在に至るまで活躍を続けている。

プロ6年目の2012年にはリーグ最多タイとなる173安打を記録。2016年には打率3割4分4厘でセントラル・リーグの遊撃手として史上初の首位打者に輝いた。2018年は夏場に脇腹痛の影響で約1カ月間離脱し、109試合の出場にとどまったが、152安打を放ち、キャリアハイの打率.3割4分5厘を残した。

2018年のシーズン終了まで、プロ12年間で積み上げた安打数は1711本。2000本安打達成まで残り289本となっている。2019年、2020年を万全の状態で戦い、今までどおりの活躍ができれば、東京五輪の前後で2000本安打が達成される計算になる。仮にオリンピック前に達成すれば、それは坂本が最高の状態で大会に臨むことを意味する。

日本代表に初選出されたのは2007年。北京オリンピックのプレ大会に社会人や大学生と一緒に参加した
日本代表に初選出されたのは2007年。北京オリンピックのプレ大会に社会人や大学生と一緒に参加した日本代表に初選出されたのは2007年。北京オリンピックのプレ大会に社会人や大学生と一緒に参加した

内角打ちは職人レベル。守備での貢献も絶大

坂本は186センチ、83キロというすらりとした体型だ。レギュラーに定着した2008年以降の11年間で打率3割超えが4度、150安打以上が7度と、アベレージヒッターの印象が強いが、2010年にシーズン31本塁打、2016年には23本塁打を記録するなど、パンチ力も備えている。

安打を量産できる秘密はバットコントロールの巧さにあり、特に内角球のさばき方には定評がある。坂本は右投げ右打ちだが、本来は左利きで、箸やペンは今も左手で扱う。そのため、打席に入った際は左手でバットをリードしながらインコースのボールを前でさばき、的確にとらえることができる。

一方、遊撃手としては2010年に21失策を記録するなどエラーの多さを取り上げられることが多かったが、守備機会の多いショートというポジションでは、失策数が多くなるのは仕方のないこと。ましてや坂本は他の選手に比べて守備範囲が広く、「攻めの守備」を実践しているため、他の選手なら届かない打球でもグラブが届き、結果としてエラーにつながってしまうことがある。

どれだけ失点を防いだかを数値化するアルティメット・ゾーン・レーティングを見ると、坂本は毎年、トップクラスの数値を記録している。2015年には12球団トップの32.3という驚異的な数値をたたき出した。30代に突入し、故障の影響もあるため2017年、2018年の数値は下降気味だが、それでも日本屈指の遊撃手であることは間違いない。

現在の日本野球界の遊撃手には源田壮亮(埼玉西武ライオンズ)や田中広輔(広島カープ)、京田陽太(中日ドラゴンズ)といった守備の名手がいる。それでも、攻守両面での貢献度、指揮官と選手たちとをつなぐ役割などを考えると、坂本は2020年東京五輪の日本代表に不可欠な存在と言える。

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