東京五輪のゴルフには、オリンピックゴルフランキングの上位者が出場する。女子日本代表争いをリードするのは、アメリカを拠点に活動する畑岡奈紗(なさ)だ。2019年にポイントを重ねた渋野日向子(しぶの・ひなこ)や鈴木愛も代表入りが有力視されている。代表選考に反映される6月末まで、白熱したレースが繰り広げられそうだ。
オリンピックランキングで、各国最大4人まで決定
東京五輪の女子ゴルフは8月5日から8日にかけて、霞ヶ関カンツリー倶楽部で行われる。
霞ヶ関カンツリー倶楽部は埼玉県川越市に位置するゴルフ場で、1929年の創設以降、カナダカップ(現ワールドカップ)、日本オープン、アジアアマチュア選手権などを開催してきた歴史がある。東京五輪で使用される東コースは、2016年10月にトム・ファジオとローガン・ファジオによって改造されたダイナミックなコースで、フェアウェイにはほどよいうねりが与えられている。傾斜のある大きなグリーンをガードする深々とした大きなバンカーも特徴だ。
ゴルフ競技は前回のリオデジャネイロ五輪で112年ぶりに復活し、東京五輪では4度目の実施となる。出場選手は男女それぞれ60人で、オリンピックゴルフランキングによって決定される。
このランキングは直近2年間の成績を対象に計算される。直近13週間の結果に重点が置かれており、それ以前のポイントは徐々に減算されていく。各国・地域の出場人数は同ランク15位以内なら最大4人、16位以下の場合は最大2人。女子は6月29日時点のランキングが選考対象となる。
米国拠点の畑岡は代表入り有力、渋野、鈴木が後を追う
2020年3月1日時点で女子日本人選手の一番手にいるのは畑岡奈紗(なさ)だ。オリンピックランキングで5位につけている。
2016年12月、17歳の時に日本人選手史上最年少で米ツアー出場権を獲得した畑岡は、以降、米ツアーを主戦場として活動し、日本代表候補選手のなかでも頭が抜けている。アメリカで鍛えられたハイテクニックと安定感を武器に、昨シーズンは日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯で2位の大西葵(あおい)に8打差をつける圧勝劇を演じ、日本女子オープンゴルフ選手権競技では2年ぶり3度目の頂点に立った。東京五輪では金メダル獲得も期待される一人だ。
二番手には渋野日向子(しぶの・ひなこ)がつけている。オリンピックゴルフランキングで11位に位置している。渋野は2019年8月に行われたAIG全英女子オープンで、メジャー初出場初優勝の快挙を成し遂げた。
日本勢では1977年に全米女子プロ選手権を制した樋口久子以来となる42年ぶりのメジャー制覇にも注目が集まったが、渋野が瞬く間に人気を集めた要因は、ラウンド中にも笑顔を絶やさなかったことだ。キャッチフレーズの「スマイルシンデレラ」は2019年の「ユーキャン新語・流行語大賞」でトップ10入りし、女子ゴルフ人気を沸騰させた。自身のスタイルである攻撃ゴルフを貫きながら、課題のアプローチを克服すれば、さらなるランクアップも可能だ。
また、昨年12月30日付で更新されたオリンピックゴルフランキング以降、鈴木愛が15位以内に浮上してきた。現在は13位につけており、鈴木がこのまま6月末まで15位以内をキープできれば、日本代表の出場枠は「3」となる。
鈴木は2019年、最終戦まで渋野と熾烈な賞金女王争いを繰り広げた末、賞金額1億6018万9665円で2年ぶり2度目のトップに輝いた。安定感抜群のパットと精度の高いショットが武器で、今年も賞金女王の最有力候補に挙げられている。
なお、3人の中で2019年に最も多くポイントを稼いだのは渋野で、247.84ポイントを獲得した。2018年に獲得したポイントが徐々に減算されていくポイント算出方式によると、渋野の順位は相対的に上がっていくことになる。
河本結らに逆転のチャンスも、懸念は相次ぐ大会中止
優勝で得られる世界ランクポイントは、国内女子ツアーが17から20.5であるのに対し、米国女子ツアーは20.5から100と2倍以上で、海外メジャー優勝は100ポイントと国内ツアー約5勝分の価値がある。東京五輪の代表選考に関わる大会が開催される6月末まで、各選手にとって気の抜けない戦いが続く。
一方で、15位以内まで浮上する選手がもう一人現れれば、4人目の日本代表枠が確保できるため、オリンピックゴルフランキングで鈴木より下につけている稲見萌寧(もね)や上田桃子、河本結(ゆい)らも逆転出場のチャンスを得る。なかでも今季より米ツアーに参戦する河本は、成績次第で大幅なランクアップも見込める。
代表争いが白熱するなか、懸念されるのは新型コロナウイルスの感染拡大による大会の中止だ。国内ツアー開幕戦として3月5日から8日に開催予定だったダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントは当初、無観客試合での開催を決め準備が進められていたが、政府の表明を受けて中止となった。
今後も国内ツアーは毎週予定されているものの、事態の終息が見えない以上は、大会開催も不透明となっている。さらには、日本からの入国制限を設ける国も広がっており、代表選考レースに大きな影響を及ぼしそうだ。