春高バレー2年連続MVP黒後愛は、絶対的エースになるべく成長中

日本のエースになるべく成長を続ける黒後愛。
日本のエースになるべく成長を続ける黒後愛。日本のエースになるべく成長を続ける黒後愛。

春高バレーで2年連続MVPを獲得した黒後愛は、現在の日本女子バレーボール界で、最も注目される選手のひとりだろう。東レ・アローズのメンバーとして活躍する一方で、20歳ながら全日本にも選出された。日本女子バレーは今、木村沙織に代わる、これからの時代の絶対的エースを求めている。石井優希、古賀紗理那といった先輩エース候補を追い越して、その座を射止めるために、黒後愛は着実に成長をしている。

バレーボール一家の次女が、高校1年生で「Project CORE」メンバーに

黒後愛は1998年6月14日、栃木県宇都宮市に生まれた。父の洋は宇都宮大学教授で、同大学バレーボール部監督。母の裕子もバレーボール経験者で、5歳上の姉もバレーボール選手で春高バレー出場した経験を持つ“バレー一家”で育った。愛がバレーボールを始めるきっかけとなったのは、小学1年生のときに姉の練習を見学したことだった。ただ、実際に競技を始めるまでに、少し時間がかかり、始めたのは小学3年生になってからだった。バレーボールを始めた愛は、自身が通う市立横川西小学校のチームと、母の知り合いがコーチを務め、県内で実績のあるクラブチーム「サンダース」の両方に通う。

2010年3月、広島県で開催された第7回全国スポーツ少年団バレーボール交流大会で、サンダースはベスト4となる。翌年、6年生になった黒後は大会での優勝を目指すが、東日本大震災の影響で大会は中止。黒後は6年生の時点で160cm。小学生としては高身長だったが、チームの方針で前衛でもブロックを行わず、バックセンターとしてサーブレシーブを受ける役割に。そのため、成長して身体が大きくなっても、サーブレシーブに苦手意識はなく、のちの競技人生の大きな財産となっている。

2011年、教員で伯父の昭がバレーボール部コーチを務める若松原中学校に入学する。部活チームでの成績は、関東中学バレーボール大会への出場が最高だったが、個人としては、全日本中学選抜や栃木県中学選抜に選出されるなど注目されていた。3年生で第27回全国都道府県対抗中学校大会に参加。栃木選抜は2回戦敗退に終わったものの、優秀選手として表彰される。このときすでに、現在と同じ180cmになっていた。

黒後は2014年、バレーボールの名門である東京の下北沢成徳高校に進学する。同校のバレー部は、木村沙織、荒木絵里香、大山加奈など全日本メンバーを筆頭に、V・プレミアリーグで活躍する選手を多数輩出してきた実績がある。そうした選手を指導してきた小川良樹監督の下、黒後はバレーボールに励む。現在、埼玉上尾メディックスに所属する堀江美志、山崎のの花、山口珠李の3選手は、黒後の同学年でチームメイトだった。

2014年6月、日本バレーボール協会は「Project CORE」を立ち上げる。これは、2020年に自国開催となる東京五輪に向けた選手育成プロジェクトで、集中的に強化する選手を集めた「Team CORE」として、設立時に男子10名、女子8名が選出された。その中のひとりに黒後は選ばれる。当時、熊本信愛女学院3年で、現在全日本で活躍するNECレッドロケッツの古賀紗理那も名を連ねている。

目標の高校3冠を逃すも、悔しさをバネに飛躍

下北沢成徳で1年生ながらレギュラーに定着していた黒後は、2年生になると全日本ユース代表にウィングスパイカーとして選出され、2015年8月に開催された第14回世界ユース女子選手権大会(U-18)に出場する。チームは9位に終わったが、黒後はベストサーバーに輝いた。その一方で、1年生のときには出場できた全国高等学校総合体育大会(インターハイ)と国民体育大会(国体)の出場を逃すという悔しい経験もする。さらに2016年1月の全日本高等学校選手権大会(春高バレー)は東京予選3位で、下北沢成徳は開催地枠での出場。それでも3回戦で高校2冠を達成していた九州文化学園に勝利。準決勝で文京学院大学女子、決勝で八王子実践と東京代表の2校を破り、3大会ぶりの優勝をもたらすと、黒後は最優秀選手賞に選ばれた。

3年生となり、2016年4月下旬から5月上旬にかけて行われた第65回黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会に、下北沢成徳の選手として出場。結果は1勝2敗でグループリーグ敗退だったが、V・プレミアリーグのデンソー・エアリービーズに勝利。黒後はその原動力となったことから若鷲賞(最優秀新人賞)に輝く。7月には全日本ジュニア代表として第18回アジアジュニア女子選手権大会(U-19)に参加。チームの準優勝に貢献した。さらに8月のインターハイ決勝で、大阪の名門、金蘭会高校に勝利を収め、下北沢成徳を14年ぶり2度目の優勝へと導いた。しかし、9月の国体では金蘭会高校に敗れて準優勝終わり、目標としていた高校3冠の夢はついえたが、翌年1月の春高バレーで連覇を達成。2年連続で最優秀選手賞に輝いた。


FIVBバレーボールネーションズリーグ2018で黒後は全日本デビューを果たした。
FIVBバレーボールネーションズリーグ2018で黒後は全日本デビューを果たした。FIVBバレーボールネーションズリーグ2018で黒後は全日本デビューを果たした。

火の鳥NIPPONで鮮烈デビュー。Vリーグで経験を積み、目指すは東京五輪

春高バレー後、黒後はV・プレミアリーグ東レ・アローズへの入団を発表。さらに3月には、中田久美監督率いる全日本代表「火の鳥NIPPON」のメンバーに選出された。

2017年10月22日、黒後はV・プレミアリーグ開幕戦に先発メンバーとして出場。試合はトヨタ車体クインシーズ相手に0-3で敗れたものの、黒後はスパイク12得点、ブロック1得点を挙げるなど、チームの得点源となった。レギュラーラウンド6位の東レ・アローズは、ファイナル6敗退となったが、攻守両面で存在感を発揮した黒後は、最優秀新人賞に選出される。

そして、FIVBバレーボールネーションズリーグ2018で、黒後はついに全日本デビューを果たす。6月のタイ代表戦で、両チーム最多の29得点を挙げたことで、エースとしての期待が高まり、続く7月にメキシコで開催された第19回世界ジュニア女子選手権大会(U-20)に出場し、同年代の選手とともに銅メダルを獲得。2018年9月下旬から10月にかけて日本で開催された、4年に1度の世界選手権(世界バレー)にも出場。初戦のアルゼンチン代表戦では先発メンバーに選ばれ、要所で思い切りの良いプレーを見せるなど、活躍が大いに期待されたが、大会の中盤以降は疲労などの原因から、徐々に出場機会を失った。チームは善戦しながらも、重要な試合で星を落とし、結局6位で大会は終了した。黒後にとっても、きっと満足のいかない、不完全燃焼な大会だっただろう。

2018年11月3日、今季より新しくスタートしたVリーグ・ディビジョン1の開幕戦に、東レの先発メンバーとして出場した。久光製薬スプリングス相手に黒星を喫したものの、そこには昨季同様、攻撃を牽引する彼女の姿があった。12月16日、全日本バレーボール選手権大会(皇后杯)準々決勝のトヨタ車体クインシーズ戦で、フルセットの末に敗れ、2018年の試合はすべて終了となった。しかし、新年早々からVリーグの試合は組まれている。黒後の東レ・アローズも、1月5日に富山県の黒部市総合体育センターで、上尾メディックスと対戦する。黒後はVリーグで、全日本で経験を積みながら、日々、成長し続けるだろう。高校の先輩でもある木村沙織を超える「火の鳥NIPPON」の絶対的エースと呼ばれる日が来るまで。もしかすると、それは2020年の東京五輪なのかもしれない。

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