女子ラグビー日本代表:高い世界の壁に挑むサクラセブンズ

ジャカルタ・アジア大会では中国を下し日本が初優勝
ジャカルタ・アジア大会では中国を下し日本が初優勝ジャカルタ・アジア大会では中国を下し日本が初優勝

2020年東京五輪の出場権をすでに獲得している女子ラグビー日本代表(7人制)。初出場の2016年リオデジャネイロ五輪では12カ国中10位という厳しい結果に終わったが、2019年にラグビーワールドカップ(男子15人制)が日本で開催されることもあり、国内のラグビー熱が高まり、女子日本代表に対する関心も高くなるだろう。日本における女子ラグビーは、競技人口がまだ少なく、練習場や試合環境の整備面をはじめ、ラグビー先進国に比べて劣る部分が少なくないのだが、4年前の反省を踏まえ、少数精鋭で実力をつけてきた「サクラセブンズ」の活躍に期待したい。

スピードや展開の速さが醍醐味

オリンピックの試合は、前後半7分間ずつ戦う7人制の「セブンズ」で行われる。15人制は体力の消耗が激しく、16日という開催期間内に全試合を行うことが困難なため、このスタイルが採用されている。7人でもフィールドの広さやルールは同じなので、モールやラックといった選手が密集するプレーは少なく、コンタクトを回避しながら、相手をスピードやステップで抜くプレーが多いのが特徴だ。

ボールの流動性が高く、スピーディーな試合展開は、15人制ラグビーとは「別物」の魅力がある。また、突出した能力を持つ選手に主導権を握られると、なかなか攻撃を止められないことから、15人制以上に体格や身体能力がものをいう一方で、試合時間が短いので、得点につなげるための攻撃パターンが限られており、相手チームを周到に分析・研究すれば、勝機はつかめるとされている。「ジャイアントキリング」が起こりにくいスポーツと言われるラグビーにおいて、「セブンズ」は世界の強豪国でも、必ず勝利が約束されているわけではなく、番狂わせも多いのだ。

リオデジャネイロ五輪で苦杯を喫する

オリンピックでは、男子の15人制が4回、1900年パリ五輪、1908年ロンドン五輪、1920年アントワープ五輪、1924年パリ五輪で実施され、その後中止された。この間、男子のみで女子はプレーしていない。2009年に開催されたIOC総会で、ラグビーの競技の復帰が決まり、2016年リオデジャネイロ五輪で、男女7人制ラグビーが導入された。結果はオーストラリアが金メダル、ニュージーランドが銀メダル、カナダが銅メダルを獲得。サクラセブンズも出場したが、12カ国中10位に終わった。

リオ五輪では12カ国中10位に終わった
リオ五輪では12カ国中10位に終わったリオ五輪では12カ国中10位に終わった

女子ラグビーの勢力図

リオデジャネイロ五輪の4~9位を見てみよう。(4)イギリス(5)アメリカ(6)フランス(7)スペイン(8)フィジー(9)ブラジルの順になっている。そして10位が日本だった。

15人制ではあるが、ラグビーの国際統括団体である「ワールドラグビー」が2018年11月19日に発表した最新の女子世界ランキングによると、トップ10は(1)ニュージーランド(2)イングランド(3)フランス(4)カナダ(5)アメリカ(6)オーストラリア(7)イタリア(8)ウェールズ(9)スペイン(10)アイルランドで、日本は16位となっている。

ちなみに各国代表チームの愛称だが、オーストラリアは男子代表チームがワラビーから取った『ワラビーズ』なのに対して、女子代表はワラビーより大きくて、カンガルーよりも小さい「ワラルー」から取った『ワラルーズ』。明るいイエローを基調とするユニフォームだ。ニュージーランドは男子と同じく黒のユニフォームが印象的で、愛称は『ブラックファーンセブンズ』。イングランドはチームカラーがホワイトで、『サクソンズ』の愛称だ。いずれの国も、東京五輪のメダル候補として名乗りを上げることは必至で、日本の「サクラセブンズ」の前に、大きな壁となって立ちはだかることだろう。

地道な強化が少しずつ実を結ぶ

日本における女子ラグビーのスタートは、1983年に世田谷でクラブチームが誕生したときとされている。その後、1988年4月に日本女子ラグビーフットボール連盟が発足し、1989年には初めて海外遠征を行った。女子ラグビー日本代表は、1991年の第1回、1994年の第2回のワールドカップ(15人制)に招待されて出場。しかし、第3回大会は実績不足として招待されなかった。第4回大会に出場するために、なんとしても実績が必要だった日本代表は、2000年にサモアと香港を破って出場権を獲得する。また、2002年に日本女子ラグビーフットボール連盟が日本ラグビーフットボール協会に正式加盟。日本の女子ラグビーは公式競技として認められ、選手たちは真の日本代表となった。

そうした草創期の女子ラグビーを支えた選手たちがいることを、私たちは忘れてはならない。日本代表としての出場回数を調べてみると、安達三枝、並木富士子、宮川千佳の3選手は非常に多く、まさにレジェンドと呼んで差し支えないだろう。先人たちが切り開いた道の上に、「サクラセブンズ」は立っているのだ。

2016年リオデジャネイロ五輪で、7人制ラグビーが正式種目として採用されたことで、女子セブンズ日本代表は、タレントの発掘・育成を目的としたアカデミーを開設するなど、チーム強化を加速させている。また、オリンピックを目指すために、他競技から転向する選手も増えており、急速に競技レベルは向上している。ただ、世界大会でのメダルはまだない。2018年7月に開催されたサンフランシスコ・ワールドカップで、16チーム中10位になったのが最高位ということになる。しかし、同年8月〜9月にジャカルタで開かれたアジア大会で、初となる金メダルを獲得し、10月のアジアラグビー女子セブンズシリーズ2018の第3戦スリランカ大会では優勝。シリーズでも総合優勝を勝ち取るなど、地道な努力の成果が実を結び始めている。

サクラセブンズの現在と未来

現在、サクラセブンズを担う中心選手といえば、リオデジャネイロ五輪を経験した大黒田裕芽、桑井亜乃、谷口令子、中村知春の4人だろう。いずれも「ARUKAS KUMAGAYA」所属で、オリンピックの舞台で味わった悔しさを挽回するべく、ともに練習に励んできた。

中村選手はリオデジャネイロ五輪で主将を務めた。小学生から法政大学までの12年間バスケットボールをしていたが、引退後に、地元クラブチームに入門。その翌年に日本ラグビー協会のオリンピックを目指すための強化プログラムに参加した。これまで世界大会に出場するたび、世界の壁の高さを思い知らされてきた中村選手は「選手ひとりひとりが世界レベルにならないといけない」と食事の取り方から改め、地に足をつけた練習を心掛けるようになったという。2018年は練習で鼻骨を折るトラブルにも見舞われたが、同年のサンフランシスコ・ワールドカップには主将としてチームを牽引した。

中村知春選手
中村知春選手中村知春選手

桑井選手は中京大学では陸上部に所属した。大学卒業後、立正大学大学院に進学してからラグビーを始めて、3年で日本代表に選出されている。また、谷口選手がラグビーを始めたのは小学校3年生のとき。高校では陸上部に所属しながら、女子ラグビーの草分け的クラブチーム「世田谷レディース」で練習を積み、進学した東京学芸大学ではラグビー部に入部して男子と一緒にプレーするなど、他のスポーツ経験者が多いサクラセブンズにあって、小学校からラグビーを続けてきた一人だ。大黒田選手は小学生のときからラグビーを始め、高校、大学とラグビー一筋に打ち込んできた。身長1メートル57センチと小柄だが、たぐいまれなセンスと小刻みなステップワークが武器。リオデジャネイロ五輪では、ケガに悩まされてきた左足にサポーターをつけ、活躍する姿が印象的だった。

現在、サクラセブンズのメンバーは、大黒田裕芽、桑井亜乃、谷口令子、立山由香里、長田いろは、大竹風美子、小笹知美、バティヴァカロロ・ライチェル海遙、田中笑伊、中村知春、平野優芽、黒木理帆の各選手。

なお、先日開催された女子ワールドシリーズと並行して行われているインターナショナル・インビテーション・ウィメンズでは、実質的にサクラセブンズのAチームにあたる「女子SDS(セブンズ・デベロップメント・スコッド)2」が優勝。Bチームにあたる「女子SDS 1」は3位に終わったが、若手育成やタレント発掘という意味でも、収穫の多い大会となった。2020年東京五輪に向けて明るい材料も多い。地元開催のオリンピックという晴れ舞台で、世界の強豪相手にどこまで渡り合えるかを注目したい。

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