注目記事 | テコンドー

少女時代に空手からテコンドーに転向した山田美諭 周囲の声をはねのけ東京五輪へ【アスリートの原点】

リオデジャネイロ五輪出場を逃し、病室で泣いてばかりいた

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

尊敬するテコンドー選手は笠原江梨香。自身と同じく空手から転向し、ロンドン五輪に出場した。憧れの人と同じ大東文化大学テコンドー部で鍛錬を積んだ山田美諭(みゆ)は、大学卒業直前に大きな挫折を味わった。ただし、目標としていたリオデジャネイロ五輪行きを逃したからこそ、かつて小柄で華奢だった少女は全日本テコンドー選手権で3連覇を果たし、世界屈指のテコンドー選手へと成長することができた。

2012年5月、18歳の時にベトナムで行われたアジアテコンドー選手権大会に出場。準々決勝敗退に終わった

空手では芽が出ず、中学1年次にテコンドーを始める

穏やかな表情が一変、試合が始まると山田美諭(みゆ)は目つきが変わる。闘志をむき出しにする。「とことん叩きのめしてやる」と思うことさえあるという。

1993年12月13日に愛知県瀬戸市で生まれた。父親は空手経験者。実家に隣接する形で空手道場を営んでいた。山田はわずか3歳のころに空手を始めた。

空手は楽しかった。道場に通うのが日課となった。ただ、競技を続けるにつれて、思うように戦えなくなった。今では167センチの長身を誇るが、当時は小柄で華奢だった。そのため、小学校の5年生ごろに体格に個人差が出てくると壁に突き当たった。

体重別に階級が細かく分かれているテコンドーならもっとやれるんじゃないか——父の提案に同意し、中学1年生になるタイミングで空手からテコンドーに転向した。娘の成長を思う父は勉強し、テコンドーの道場を新たに開設してくれた。

多様な足技を特徴とするテコンドーは肌に合った。競技転向から3年、聖霊中学校の3年次に全日本ジュニア選手権で初優勝を果たす。「オリンピックに出たい」という思いを抱き始めた。

2018年のアジア競技大会では銅メダルを獲得(右端)。準決勝でウズベキスタンの選手に敗れ決勝進出は逃した

集大成の舞台で右足じん帯を2本損傷し、約1年も離脱

聖霊高等学校に進学後も順調に成長を続けた。17歳の時に全日本テコンドー選手権を初制覇。将来を嘱望された少女は2012年春、大東文化大学に進学する。同大のテコンドー部は国内有数のレベルを誇り、山田は中学3年次から練習に参加させてもらっていた。

大学時代の集大成に掲げたのはリオデジャネイロ五輪出場。しかし、その代表選考会で敗退。右足のじん帯を2本損傷していた。現実が受け入れられず「引退」の二文字も頭をよぎった。

2020年2月、日本代表・最終選考会の女子49kg以下級で優勝。高校生の村上智奈を圧倒した

約1年もの離脱を強いられ、心が折れかけたが、周囲から「山田は終わった」という声が聞こえ、逆に発奮した。大学入学直後はどこか甘さがあったが、怪我を通して自分を支えてくれる両親や大学時代の監督、そして友人の優しさに心を打たれ、より真剣にテコンドーに向き合うようになる。

故障明けの2017年からは全日本テコンドー選手権で3連覇を達成。その間、2018年のアジア競技大会と直後のワールドグランプリのマンチェスター大会でいずれも銅メダルを獲得し、ほどなく行われたプレジデントカップアジアでは銀メダルを手にした。2019年はダッチオープンで金メダルに輝き、ワールドグランプリのローマ大会で3位の成績を残している。

2019年2月、女子49キロ以下級の日本代表・最終選考会を制し東京五輪出場を内定させた。ようやくたどり着いた大舞台。直後に生まれ故郷の愛知県知事を表敬訪問した際、「必ず金メダルをとれるように」と宣言した。

選手プロフィール

  • 山田美諭(やまだ・みゆ)
  • テコンドー 49キロ以下級
  • 生年月日:1993年12月13日
  • 血液型:O型
  • 出身地:愛知県瀬戸市
  • 身長/体重:167センチ/53キロ
  • 出身校:聖霊中(愛知)→聖霊高(愛知)→大東文化大(東京)
  • 所属:城北信用金庫
  • オリンピックの経験:なし
  • インスタグラム:山田美諭(@miyu_yamada_)

伊藤美誠:母と歩んできた卓球人生。一日6時間の猛練習が数々の「史上最年少記録更新」を生み出す【アスリートの原点】

【アスリートの原点】渋野日向子:「笑顔のシンデレラ」は少女時代、ゴルフとソフトボールの二刀流。高校3年次は就職も検討

【アスリートの原点】上野由岐子:伝説の「413球」を投げ抜いた豪腕は幼少期から健在

【アスリートの原点】清水希容:東京五輪での女王君臨を狙う空手家は、少女時代に「3位の壁」に苦しんだ

【アスリートの原点】カティンカ・ホッスー:競泳界の「鉄の女」は少女時代、祖父のもと1日20キロを泳ぐ猛練習で成長を果たす

【アスリートの原点】アシュリー・バーティ:コーチ自らが指導を熱望した逸材。世界女王は日々の地道な壁打ちで才能を開花させた

【アスリートの原点】ラファエル・ナダル:元サッカースペイン代表と元テニス選手、2人の叔父によって育まれた才能