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山西利和:京大出身、競歩の東京五輪金メダリスト候補。「文武両道アスリート」の強みは継続する力【アスリートの原点】

競歩との出合いからわずか2年で世界ユース選手権優勝

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

山西利和(やまにし・としかず)は2019年ドーハ世界陸上競技選手権大会の男子20キロ競歩で日本人初となる金メダルを獲得して東京五輪代表の座をつかんだ。名門として知られる京都大学に現役合格し、母国開催のオリンピックではメダルを期待されるスーパーエリートだが、本人はあくまでも謙虚だ。2021年の夏を見据え、常に淡々と練習に励む。

2019年、ドーハで行われた世界陸上競技選手権大会の男子20キロ競歩で日本人初となる金メダルを獲得した

走る楽しさを知ったのは小学校時代の校内イベント

山西利和(やまにし・としかず)は1996年2月15日に、京都府長岡京市で誕生した。父の仕事柄、幼いころから引っ越しが多く、幼稚園年中から小学2年生までは東京都で、その後は静岡市に暮らした経験もある。水泳教室に通ったり、友だちと野球で遊んだり、運動経験はごく普通の小学生と同じ程度で、当時は並外れた才能を発揮していたわけではなかった。

小学4年生の時に、まじめな性格に火をつける出来事があった。グラウンドを何周走ったかによって、マスを進んでいけるすごろくカードのようなものが配られ、純粋に「面白そう」と興味を惹かれたのがきっかけだった。すると毎朝授業が始まる前に、グラウンドを走ることが習慣になっていった。こつこつと努力を続けたことで、校内のマラソン大会でも上位10位以内に入れるようになり、練習が結果に結びつく楽しさを実感した。

学業の面でも、決して手は抜かなかった。公文式の塾に通い始めると、親に言われずとも課題をこなし、答えがわかる楽しさを体験していった。「継続は力なり」を座右の銘に掲げる山西らしいエピソードだ。

中学からは再び生まれ故郷の長岡京市に戻り、長岡第三中学校の陸上部に入部する。中長距離を専門としていたが、3000メートル走では地区予選で敗退してしまうレベルだったため、得意の勉学を生かして一般入試で進学校の京都市立堀川高校に進んだ。その陸上部で競歩に取り組む先輩と顧問の船越康平氏と出会い、競歩の道に進むことになる。

高校3年次の2013年には世界ユース陸上競技選手権大会で金メダル。競技を始めて3年目で世界を制した

高1で競歩と出合い2カ月後には新人戦を制覇

高校入学から2カ月、ある日の練習で競歩に初挑戦した後、面白かったと船越氏に伝えたところ、翌日には練習メニューに組み入れられていたという。そして8月の京都府新人戦ではすぐさま優勝。近畿大会では4位に入ると、高2のインターハイ(全国高等学校総合体育大会)では2位、高3では見事に頂点に立ってみせた。高校3年次の2013年には世界ユース陸上競技選手権大会でも同種目で日本人初となる金メダルを獲得。破竹の勢いで勝利を積み重ねていった。

2014年春に京大工学部物理工学科に現役合格を果たす。引き続き高校時代の顧問の指導、そして男子20キロ競歩の世界記録保持者である鈴木雄介を指導した経験を持つ内田隆幸氏の教えを並行して受け、さらに力をつけていった。

文武両道、エリート街道を突き進んできたように見えるが、決して順風満帆だったわけではない。大学在学中には「京大ウォーカー」として注目されながらも、一度も世界選手権の代表に選ばれず、足踏みを続けていた。しかし2017年、4年次に台北で行われたユニバーシアードを制覇して、浮上のきっかけをつかむと、愛知製鋼に入社して1年目の2019年、念願かなって世界選手権出場権を獲得する。そして、金メダルという最高の結果を持ち帰ることに成功した。

天性の才能があるわけではない。しかし指導にあたる内山氏は「修正力の高さ」こそ山西の強みだと話したことがある。自らの弱点を分析して、課題を持ち帰り、次回までにしっかりと修正して積み上げていく。その繰り返しがきっと、表彰台の頂点に導いてくれることは、「継続は力なり」を実践してきた山西自身が誰よりもわかっているはずだ。

選手プロフィール

  • 山西利和(やまにし・としかず)
  • 男子競歩20キロ選手
  • 生年月日:1996年2月15日
  • 出身地:京都府長岡京市
  • 身長/体重:164センチ/54キロ
  • 出身校:長岡第三中(京都)→堀川高(京都)→京都大(京都)
  • 所属:愛知製鋼
  • オリンピックの経験:なし

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