川井友香子: 手芸が好きで、「レスリングはやりたくない」と粘ったサラブレッドの妹【アスリートの原点】

レスリングを嫌がった理由は「母に構ってもらえないから」

父はレスリングの元学生チャンピオンで、母は世界選手権の元代表。川井友香子は、女子レスリング界では言わずと知れたサラブレッド姉妹の妹だ。早くから頭角を現した姉の梨紗子とは違い、友香子は芽を伸ばすのに少し時間を要したが、2019年の世界選手権で3位に入賞し、62キロ級で東京五輪代表に内定。姉妹そろってのメダルをめざす。

東京五輪の代表選考も兼ねた2019年の世界選手権で銅メダルを獲得。姉とそろってのオリンピック出場を内定させた
東京五輪の代表選考も兼ねた2019年の世界選手権で銅メダルを獲得。姉とそろってのオリンピック出場を内定させた東京五輪の代表選考も兼ねた2019年の世界選手権で銅メダルを獲得。姉とそろってのオリンピック出場を内定させた

ピアノなど「女の子らしい習い事」がやりたかった

実家はレスリングに適した環境だった。ともにレスリング選手だった両親のもとに生まれた川井友香子だが、スポーツが好きな姉の梨紗子とは対照的に「運動は嫌い」だったという。

幼いころは手芸などの遊びが好きで、ピアノなど「女の子らしい習い事」をやりたがっていた。なかでもレスリングは「やりたくない」と最後まで粘っていた。母の初江さんがレスリング教室のコーチを務めているため、他の選手と接している間は自分が構ってもらえない、というのが理由だった。

結局、姉と同じく小学校2年生の時にレスリングを習い始めたが、「なんとなく始めた」という程度で、そこに強い意志があったわけではない。母の初江さんは、「我が子だけひいきしている」と思われないように、梨紗子と友香子と下の妹の3人の娘に対して、礼儀作法から競技への姿勢まで厳しく指導した。

姉の梨紗子が早々に頭角を現した一方で、友香子はなかなか伸び悩んでいた。練習がつらく、中学卒業後はレスリングを続けるか悩んだ時期もあったという。だが、結局「言い出せなかった」という理由から、梨紗子の後を追うように名門の至学館高校へ進学した。

2018年の全日本選抜選手権では決勝で伊藤友莉香(右端)を下し、女子62キロ級で優勝を果たしている
2018年の全日本選抜選手権では決勝で伊藤友莉香(右端)を下し、女子62キロ級で優勝を果たしている2018年の全日本選抜選手権では決勝で伊藤友莉香(右端)を下し、女子62キロ級で優勝を果たしている

至学館高入学で呼び覚まされた闘志

全国から強豪選手が集まる至学館高校に入ると、「強い人しかいなくて、勝てるようになりたいと思ってやる気が出てきた」と友香子の中に眠っていた闘争心が目を覚ます。

組み手で相手を崩すのがうまい姉の梨紗子に習い、友香子も高校2年のころから組み手の強化に注力した。すると、「いつか追いつけるようになりたい」とぼんやりと見ていただけだった姉の背中が、具体的な目標に変わった。

初めて海外で梨紗子と同じ大会に出場したのは、2017年の世界選手権だった。この大会の代表争いをめぐり、裏では梨紗子の働きかけがあった。

女子63キロ級は伊藤彩香が出場するはずだったが、故障により代表を辞退。代わりの代表選手を決める参考試合は、源平彩南と伊藤友莉香の間で行われようとしていた。この時、同年の全日本選抜選手権で伊藤友莉香に小差で敗れた友香子にもチャンスを与えるべきではないかと、レスリング協会の栄和人強化本部長に梨紗子が直談判したのだ。世界ジュニア選手権でフィンランドにいた友香子は、梨紗子から連絡をもらって「びっくりした」という。帰国後に行われた参考試合は、セコンドについた梨紗子の支えもあって2連勝。文句なしで代表に決まった。

東京五輪はともに代表権を獲得し、「2人でオリンピック」の夢を叶える舞台となった。友香子は「家族を喜ばせたい」と姉妹でのメダルを誓う。

選手プロフィール

  • 川井友香子(かわい・ゆかこ)
  • レスリング選手 女子62キロ級
  • 生年月日:1997年8月27日
  • 出身地:石川県津幡町
  • 身長/体重:162センチ/62キロ
  • 出身校:津幡中(石川)→至学館高(愛知)→至学館大(愛知)
  • 所属:ジャパンビバレッジ
  • オリンピックの経験:なし
  • インスタグラム:川井友香子 Yukako Kawai(yukako_kawai27)

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