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張本智和:100年にひとりの逸材、将来を嘱望される15歳の怪物

張本智和は2019年1月に日本男子として史上最高となる世界ランク3位を記録した

「卓球中国代表に強敵出現!14歳の中国系日本人の神童が水谷を破って全日本選手権を優勝」これは、2018年1月21日に中国のあるメディアで掲載された記事の見出しだ。中国は言わずと知れた卓球王国。卓球ファンならずとも、その強さはよく知るところだ。中国以外の国々から有力選手を集めたオールスターチームでも、中国チームに到底太刀打ちできないと言われているほど。その中国が実力を認めて、最大級の賛辞を贈った選手こそ、張本智和なのである。

世代交代をつげる新たな象徴

張本は2003年06月27日に宮城県仙台市で生まれた。両親ともに中国出身の卓球選手で、父の張本宇さんは男子ジュニア日本代表コーチ、母の張凌さんは95年世界選手権の中国代表だ。5歳年下の妹の美和も卓球選手と卓球一家に育っている。初めてラケットを握ったのは2歳のときだ。高さ76センチの卓球台に身長が届かず、「イスの上に立って球を打った」という逸話が残っている。

両親の遺伝子を受け継ぐ彼は、すぐに頭角を現し、小学校6年生以下の全日本選手権大会「バンビ・カブ・ホープス」のそれぞれの部で6年連続優勝を果たし、「怪物」と呼ばれるようになる。2014年3月、日本に帰化して、張姓から張本姓となり、15年サフィール国際オープンでは、小学6年生ながら、当時世界ランキング43位のオマール・アサール(エジプト)、同71位のジーン・ルンクイスト(スウェーデン)を連破し、世界の卓球関係者の注目を集めた。

2016年4月にJOCエリートアカデミーに入校後も、父である張本宇コーチの指導を受けて、着実に成長を遂げ、2016年世界ジュニアを史上最年少の13歳163日で優勝。2017年世界選手権個人戦の日本代表に、男女を通じて史上最年少という13歳6カ月で選出された。彼は今、2020年東京五輪での金メダル獲得という高い目標に向かって、着実に歩み続けている。


得点したときに叫ぶ「チョレイ」という雄たけびが印象的

躍進を支える高い技術とメンタル

国際卓球連盟(ITTF)が2018年12月3日に発表した世界ランキングで、張本は15歳にして日本人最高位となる5位(丹羽10位、水谷13位)と大躍進を遂げた。勝負のかかった場面で得点したときに叫ぶ「チョレイ」と、えび反りガッツポーズ「ハリバウアー」が彼の代名詞だ。

正確なバックハンドや天性のボールタッチに特徴を持つ張本は、台上で横回転をかけてドライブのようなボールを繰り出す「チキータ」も得意だ。対戦相手の弱点を分析し、巧みに戦術を変えながら勝利をつかむ嗅覚は天性のものだろう。また、彼の最大の武器であり、プレースタイルの起点となる強烈なバックハンドでは、手首をうまく使い、スピードとパワーのあるボールをコーナーに打ち込む。

しかも張本は、女子選手のように「前陣」スタイルをとりながら、その位置ではありえないほどに大きく体を使い、強烈なボールを放つ。レシーブから積極的にフリックやチキータで攻めていくスタイルのため、後陣へ下がることが滅多にない。相手が決め球を打ってこようが、逆をつかれようが、体勢が崩れようが、お構いなしだ。一般的に男子選手は、台から離れて豪快なボールを打ち合うのに対して、台にピッタリと付いたまま、強打を打ち続ける張本の姿は、ひときわ異彩を放っている。

2018年1月21日、全日本選手権シングルス決勝。リオデジャネイロ五輪銅メダリストであり、史上最多9度の優勝を誇る王者の水谷隼選手相手に、いつも通りの強気のプレーを貫いた。台から離れず、高い打点で返球。持ち味の強烈なバックハンドで、厳しいコースを何度も突き、主導権を握り続けた結果、4-2というスコアで圧倒した。敗戦後の記者会見で水谷が、「今日の張本のプレーがいつも通りなら、何回やっても勝てない」と、若き新王者を讃えたほどだ。バックハンドの技術は「すでに世界のトップクラス」と、男子ジュニアナショナルチームの田㔟邦史監督の評価も高い。

木下マイスター東京の一員としてTリーグに参戦

日本初の金メダルの呼び声も

全日本選手権の優勝から一年が経とうとしている。この1年で日本の卓球を取り巻く環境は大きく変わった。2018年10月24日、卓球のプロリーグ「Tリーグ」が誕生した。長らく日本の代表的存在だった福原愛は引退したが、国際大会でもメダルを獲得するような選手たちが続々と登場し、かつてないほどの盛り上がりを見せている。男子の水谷隼のみならず、女子の石川佳純、伊藤美誠、平野美宇などは、卓球に詳しくない人でも、名前は知っているだろう。もちろん張本もその中のひとりだ。木下マイスター東京の一員としてTリーグに参戦し、水谷隼とともにチームを、日本卓球界を牽引している。

張本は、2018年6月に行われたジャパン・オープンにおいて、絶対王者の馬龍(中国)、ロンドン五輪金メダリストの張継科(中国)を破り、初優勝を果たした。さらに、ランキング上位選手のみが出場を許される12月のワールドツアー・グランドファイナルでは、世界ランク4位(当時)の林高遠(中国)を決勝で下し、初制覇。15歳と172日だった張本は同大会の最年少優勝記録を更新した。この結果を受け、2019年1月の世界ランクでは、日本男子勢で過去最高となる3位にランクイン。張本はまだ15歳。トップ選手が競うTリーグが誕生し、チームの中心選手として優勝に大きく貢献した。多くの人から注目され、高いレベルで積まれる研鑽が、彼のフィジカルや技術を成長させたことは間違いないだろう。

2018年のワールドツアー・グランドファイナルでは最年少優勝を果たした

張本は今、春にハンガリーで開催される2019世界卓球選手権ブダペスト大会に照準を合わせていることだろう。そして、最も大切な目標は地元開催の東京五輪での金メダル獲得だろう。そのとき張本はまだ17歳。もしメダルが獲得できれば、その後のオリンピックで連覇する可能性も十分にある。

東京五輪を舞台に、彼はどれだけの旋風を起こせるだろうか。「チョレイ」の雄叫びと「ハリバウアー」を披露する機会が多いほど、それは目標とする色に近づいていくことになる。目の前に立ち塞がる “王者”中国を、張本智和という日本の超新星はどうやって突破していくのか。「表彰台の真ん中に立つ!」そう決意する張本選手の夢は、決して夢物語で終わらない。