想像以上にハードな競技「競歩」、成長してきた日本代表に期待

競歩のスタートシーン
競歩のスタートシーン競歩のスタートシーン

イギリス発祥の「歩く」競技

陸上競技のロードレースでも走る速さを競うのがマラソンなら、競歩は「歩く」速さを競う。

競歩はイギリスが発祥。当初は歩き方の制限はほとんどなく、一定時間に歩いた距離で競った。1809年にイギリスのバークレーが1000マイル(約600km)を42日間で歩いたという記録が残っている。19世紀後半にはイギリス外にも広まり、日本では1934年に陸上競技選手権大会の種目となった。

オリンピックの正式競技種目になったのは1908年ロンドン五輪からだ。当初は3000メートル、3500メートル、10キロだったが、1932年ロサンゼルス五輪から50キロとなり、1956年メルボルン五輪で20キロが追加された。女子は1992年バルセロナ五輪から10キロが正式種目となったが、2000年シドニー五輪から20キロに変更された。

2019年世界選手権の最上位選手が2020年東京五輪代表に

2020年東京五輪に出場する日本代表選手は、2019年9~10月にドーハで開催される世界選手権に出場し、競歩の男子20キロ、同50キロ、女子20キロで、それぞれ3位以内に入った最上位選手にすることが決まっている。2018年8月にジャカルタで開催されたアジア大会の男子50キロで、自衛隊の勝木隼人が金メダルを獲得し、いちはやく世界選手権への切符を手にしている。

型を守って歩く厳しいルール

オリンピックでの正式種目は男子50キロと男子・女子20キロの2種類。

競歩とは、両足が同時に地面から離れることなく、歩く速さを競う種目だ。常に左右どちらかの足が地面に接していなくてはならず(ロス・オブ・コンタクト)、前に振り出した脚が、地面についてから腰の真下に来るまで、膝が曲がってはいけない(ベント・ニー)という厳格なルールがある。審判員はこの2点を監視し、違反の警告(レッドカード)を、3人以上の審判員から受けると失格となる。マラソンと同様にタイムではなく、出場選手の中で、ゴールが早い順にメダルの色が決まる。

競歩の見どころ

折り返し地点
折り返し地点折り返し地点

スピードを上げるために、人間はつい走りたくなる。しかし、この競技はあくまでも「歩く」競技だ。ただ、歩くとはいえ、そのスピードは決して遅いものではない。フランスのヨアン・ディニス選手が、男子50キロで出した世界記録は「3時間32分33秒」。これをマラソンのゴールである42.195キロ地点での記録に置き換えてみると、そのタイムは約3時間だ。フルマラソンを3時間以内で走る、いわゆる「サブスリー」は、大型のレースでもごくわずかしかいない。これを走らずに歩いてやってのけるのだ。そのスピードは想像以上で、息の詰まるようなレースが繰り広げられことがある。フィニッシュ前の競り合いで、型を崩してしまい、フィニッシュ後に失格を告げられるケースもある。

また、「歩く」と言っても、「ただ」歩いたのでは失格になる。マラソンでは、走れなくなった選手が普通に歩くことはOKだが、競歩では、選手が普通に歩くことは「ベント・ニー」に抵触し、反則を取られることになる。50キロは陸上競技の中でも長距離で、試合は長時間に及ぶ。「最も過酷な競技」と言われるのもこのためで、ゴールを目指して、ひたすら型を守って歩く選手のひたむきな姿には、ファンならずとも胸を打たれることだろう。

過去のメダル戦績・東京五輪での展望

過去にオリンピックでメダルを獲得した日本人選手は、2016年リオデジャネイロ五輪の男子50キロで、銅メダルを獲得した荒井広宙選手のみだ。ただ、2015年3月に男子20キロで、鈴木雄介が当時の世界新記録を樹立したほか、同年の世界選手権の男子50キロで、谷井孝行が銅メダルを獲得するなど、選手層の厚みが増してきているので、2020年東京五輪に向けて、十分に期待が持てる布陣となってきた。

会場と日程

会場は皇居外苑(東京都千代田区)。二重橋前がスタート・フィニッシュエリアになる。20キロ競歩(男子・女子)は北側折り返し地点を回り、祝田橋付近の南側折り返し地点を経てゴールへ。50キロ競歩(男子)は北側折り返し地点(大手門)を経て、南側折り返し地点(祝田橋付近)を回り、ゴールに向かう。7月31日に男子20キロ(7~9時)、8月7日に女子20キロ(7時~9時30分)、8月8日に男子50キロ(6時~10時30分)の日程で決勝が行われる。

有力選手

荒井広宙選手と小林快選手
荒井広宙選手と小林快選手荒井広宙選手と小林快選手

2018年8月のジャカルタ・アジア大会に出場して金メダルを獲得、東京五輪の代表選手を選抜する2019年ドーハの世界選手権への出場を決めた50キロ男子の勝木隼人。同世界選手権50キロでは、丸尾知司選手も4位に入賞している。また、20キロ男子で山西利和が銀メダル、髙橋英輝が5位入賞を果たした。20キロ女子では岡田久美子選手が銅メダルを獲得している。

また、日本陸連が2020年東京五輪と、その後の国際大会での活躍が大いに期待できる、次世代の競技者を強化育成する「ダイヤモンドアスリート」に、女子の藤井奈々子選手を選出している。

このほか、アジア大会に先駆けて2018年に中国で行われた世界競歩チーム選手権に出場したのは以下の通り。今後の活躍次第で、2020年東京五輪の切符に手にする選手たちだ。

〈男子シニア20キロ〉

髙橋英輝・山西利和・松永大介・池田向希・藤澤勇

〈男子シニア50キロ〉

荒井広宙・小林快・丸尾知司・勝木隼人・伊藤佑樹

〈男子U20 10キロ〉

坂﨑翔・住所大翔・鈴木匠

〈女子シニア20キロ〉

岡田久美子・河添香織・吉住友希・道口愛

〈女子U20 10キロ〉

藤井菜々子・吉田優海・矢来舞香

また、海外の注目選手として、まず、男子の世界記録保持者(50キロ、3時間32分33秒=2014年)であるフランスのヨアン・ディニス。2016年リオデジャネイロ五輪50キロ競歩では、試合前半でトップをキープしながら、後半になって不調に陥り、何度も倒れながら、最後までゴール目指す姿が世界中の人々の胸を打った。女子は世界記録保持者(20キロ、1時間24分38秒=2015年)で中国の劉虹がいる。

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