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成松大介:腕相撲で鍛えた右腕は「シオマネキ」|ボクシング最年長代表は熊本地震で死の恐怖に直面

ボクシングを始めて2年あまりで全国区の選手に 

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

2020年3月のアジア・オセアニア予選で初戦敗退と厳しい結果を突きつけられながら、成松大介は過去の実績により、二度目となるオリンピックの出場権をつかんだ。12月に31歳の誕生日を迎え、ボクシング代表内では最年長だが、1年の延期が決定しても「大好きな競技を1日でも長く続けられる」と前向きだ。その強さの原点に迫る。

進学先の熊本農業高校ボクシング部でキャリアをスタート。3年次にはインターハイで3位に食い込んだ

競技との出会いは熊本農業高校入学後

成松大介は1989年12月14日に熊本県熊本市で生まれた。31歳で2021年夏のTokyo 2020(東京五輪)を迎える。

もともと体を動かすことが好きで、5歳から小学4年生まではサッカー、小学校5、6年次にはバスケットボールとさまざまなスポーツに親しんできた。下益城城南中学校に入学後は軟式テニス部に入り、練習に励んでいたが、この時点ではまだボクシングとは出会っていない。しかし、さまざまなスポーツを経験することで、ボクシングにつながる素地を、知らず知らずのうちに作っていたのだろう。

また成松は「シオマネキ」の異名でも知られる。シオマネキは、熊本県の永浦島などに生息するカニの一種で、片方のハサミだけ大きいことが特徴だ。この異名の由来は中学時代、腕相撲で強くなるため、鉄アレイを使って右腕だけを鍛えた結果だという。腕相撲で強くなるために鍛えた右腕だったが、ボクシングを始めた成松は、右フックを最大の武器としている。

ボクシングと無縁だった成松が競技を始めたキッカケは、進学先の熊本農業高校にボクシング部があり、興味を持ったことだった。“たまたま”始めたボクシングだったが、これまでの素地、あるいは元来持っていた闘争心に火が付いたのか、才能を開花させることになる。

2016年のリオデジャネイロ五輪に出場。2度目のオリンピックとなる東京五輪での活躍をにらむ

大学時代に急成長、全日本選手権で6連覇

ボクシングを始めて2年あまり、高校3年次にはインターハイ(全国高等学校総合体育大会)で3位、さらに国民体育大会で頂点に立って自信を付けていく。ボクシングを始めた頃は大学進学を考えていなかったというが、大学リーグ戦の存在を知ってからは故郷を離れ、プロ王者も輩出している東京農業大学ボクシング部へ進むことを決めた。

大学1年次には全日本選手権への出場を逃したものの、翌2010年から2015年までは同選手権のライト級で6連覇を達成し、一気にその名は全国区へ。大学卒業後には自衛隊体育学校に所属して2013年、2015年に世界選手権でベスト16に入ると、2016年4月のリオデジャネイロ五輪アジア・オセアニア予選でライト級3位となって、念願のオリンピック出場権をつかんだ。

歓喜の瞬間だったが、その直後、精神面を大きく動揺させる出来事が起きる。オリンピック出場決定の吉報を届けるため、故郷であいさつ回りをしていた2016年4月16日未明、最大震度7を観測した熊本地震を経験した。実家の部屋中の家具が倒壊して死の恐怖を間近に感じ、避難所の小学校で夜を明かした。複雑な思いを抱えたまま迎えたリオデジャネイロ五輪では2回戦敗退に終わり、一時は引退の二文字も浮かんだ。

愛する故郷はいまだ地震から復興の最中にある。2020年は豪雨の被害も受けた。最高のパフォーマンスで、故郷に元気を与えたい。大会延期にも「準備期間が延びた」と前を向く。あるインタビューでは自身の強みとしてディフェンスを挙げ、コツコツと己自身を鍛え上げてきたことを印象づけた。あえて「挫折はない」と表現するその強靭なメンタルを武器に、強敵を打ちのめしていく。

選手プロフィール

  • 成松大介(なりまつ・だいすけ)
  • ボクシング ライト級選手
  • 生年月日:1989年12月14日
  • 出身地:熊本県熊本市
  • 身長/体重:172センチ/65キロ
  • 出身校:下益城城南中(熊本)→熊本農業高(熊本)→東京農業大(東京)
  • 所属:自衛隊体育学校
  • オリンピックの経験:リオデジャネイロ五輪 男子ボクシングライト級 2回戦敗退

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