日本の「お家芸」である体操と柔道、新時代を築きつつある陸上の短距離走と水泳は、東京五輪でのメダルラッシュも十分に可能

体操の内村航平は「運命だ」と感じ、現役続行を決意
体操と柔道、陸上の短距離走と水泳は東京五輪での活躍が見込まれる
体操と柔道、陸上の短距離走と水泳は東京五輪での活躍が見込まれる体操と柔道、陸上の短距離走と水泳は東京五輪での活躍が見込まれる

これまでのオリンピックにおいて、日本勢は体操と柔道で圧倒的な力を発揮し、表彰台の常連となってきた。陸上の短距離走と水泳では新戦力の躍進が目立ち、世界との差は確実に埋まりつつある。2020年、自国開催の東京五輪でメダルラッシュが期待される4競技に注目する。

内村航平はNHK杯の個人総合で前人未到の10連覇を達成。実力を見せつけた
内村航平はNHK杯の個人総合で前人未到の10連覇を達成。実力を見せつけた内村航平はNHK杯の個人総合で前人未到の10連覇を達成。実力を見せつけた

「キング」内村航平の3連覇なるか。白井健三はゆか運動での雪辱をめざす

体操は「日本のお家芸」として認識されている。オリンピックの金銀銅の合計では最多となる98個のメダルを獲得してきた。1984年のロサンゼルス五輪で金メダルを獲得した森末慎二による「モリスエ」や2016年のリオデジャネイロ五輪の団体総合の金メダル獲得に貢献した白井健三による「シライ」など、日本人選手の名がついた技が多いことからも、選手層の厚さと技術力の高さがうかがえる。

団体総合では1956年のメルボルン五輪で初めて銀メダルを手にして以降、表彰台の常連国となり、アテネで金メダル、北京とロンドンでは銀メダル、リオでは再び金メダルと華々しい成績を収めている。

個人総合でも金銀銅の獲得メダル数は15に至る。東京五輪にむけて大きな注目が集まるのは内村航平だ。ロンドン五輪とリオデジャネイロ五輪の個人総合で連覇を達成。日本体操界初のプロ選手となった。世界的にも「キング」「スーパーマン」として実力を高く評価されている。東京五輪時には31歳という年齢になるめ、リオデジャネイロ五輪での引退を考えていたというが、東京五輪の開催が決定した際に「運命だ」と感じ、現役続行を決意した。2018年5月に行われた世界選手権代表選考会兼NHK杯の個人総合では前人未到の10連覇を達成し、その実力が健在であることを示した。

リオデジャネイロ五輪では跳馬で銅メダルを獲得した「ひねり王子」こと白井健三は、得意のゆか運動で4位に終わった悔しさを晴らすべく、リベンジに燃えている。実際、2018年12月に行われた豊田国際競技会のゆか運動では4連覇を果たし、実力を見せつけた。2018年4月に行われた世界選手権代表選考会兼全日本選手権を史上最年少の19歳で制覇した谷川翔(かける)、そしてその兄の航(わたる)といった新戦力の台頭も目を引く。

女子に目を向けてみると、「フェアリージャパン」の愛称で親しまれる新体操チームには63年ぶりのメダル獲得に期待が高まる。注目は、2017年夏の世界選手権種目別フープで2位に食い込み、日本人として同大会で42年ぶりとなるメダルを手にした皆川夏穂(かほ)だ。リオデジャネイロ五輪の個人総合では16位と涙をのんだが、東京五輪での表彰台を見据え留学先のロシアで過酷なトレーニングを積んでいる。

皆川夏穂は2017年夏の世界選手権種目別フープで2位に。日本人として同大会で42年ぶりとなるメダルを獲得
皆川夏穂は2017年夏の世界選手権種目別フープで2位に。日本人として同大会で42年ぶりとなるメダルを獲得皆川夏穂は2017年夏の世界選手権種目別フープで2位に。日本人として同大会で42年ぶりとなるメダルを獲得

井上康生監督のもと、2大会連続のメダル量産を狙う

1964年の東京五輪で正式採用された柔道は、日本発祥のスポーツだ。4分間という短い試合時間の中で「一本」を取るための激しい攻防が繰り広げられる。「一本」が取れない場合は「技あり」を狙うことになる。徹底して技の美しさにこだわるのか、あるいは勝敗を最重要視するのか。繊細な心理戦も、ある意味で注目ポイントとなる。

日本は「お家芸」と言われる柔道で、安定した成績を誇ってきた。これまでの累計獲得メダル数は84に上り、そのうち金メダルは39個を占める。日本の競技別獲得金メダル数では最多となる数字だ。ロンドン五輪の男子柔道では初の金メダルゼロという屈辱を味わったが、4年後のリオデジャネイロ五輪では井上康生監督がその手腕を発揮。データに基づき選手個別の戦術を立てる指導法が功を奏して、男子は7階級すべて、女子は5階級でメダルを奪った。男女合わせて金メダルを3個手にするなど、鮮やかに「柔道王国復活」をアピールしてみせた。

ベイカー茉秋はリオデジャネイロ五輪の90キロ級で金メダルに輝いた。2連覇に期待がかかる
ベイカー茉秋はリオデジャネイロ五輪の90キロ級で金メダルに輝いた。2連覇に期待がかかるベイカー茉秋はリオデジャネイロ五輪の90キロ級で金メダルに輝いた。2連覇に期待がかかる
阿部詩(右)は2018年7月に18歳になったばかり。直後の世界柔道選手権の52キロ級で優勝を果たしている
阿部詩(右)は2018年7月に18歳になったばかり。直後の世界柔道選手権の52キロ級で優勝を果たしている阿部詩(右)は2018年7月に18歳になったばかり。直後の世界柔道選手権の52キロ級で優勝を果たしている

2020年の東京五輪の柔道は、開会式翌日の7月25日(土)から8日連続で行われる。

男子では連覇がかかるベイカー茉秋(ましゅう)と大野将平、オリンピック初出場をめざす阿部一二三(ひふみ)などによるメダルラッシュに期待がふくらむ。一方の女子では阿部一二三の妹の阿部詩(うた)と素根輝(そね・あきら)という十代コンビが飛躍的な成長を見せている。世界選手権で早くも圧倒的な強さを披露しており、東京五輪での活躍に注目が集まる。

日本の短距離界をけん引する桐生祥秀(右)とケンブリッジ飛鳥(左)。オリンピックの舞台で100メートル9秒台をたたき出せるか
日本の短距離界をけん引する桐生祥秀(右)とケンブリッジ飛鳥(左)。オリンピックの舞台で100メートル9秒台をたたき出せるか日本の短距離界をけん引する桐生祥秀(右)とケンブリッジ飛鳥(左)。オリンピックの舞台で100メートル9秒台をたたき出せるか

1932年五輪以来の100メートル決勝進出なるか

陸上競技は場内1周400メートルの走路で行われる「トラック」、そのトラックの内外で行われる走り高跳びや砲丸投げなどの「フィールド」、競歩やマラソンの「ロード」、そして究極のオールラウンダーを決める「混成」の4種類で構成される。

マラソンでは2000年のシドニー五輪で高橋尚子、4年後のアテネ五輪では野口みずきが金メダルを獲得。アテネ五輪ではハンマー投げの室伏広治も表彰台の頂点に立った。2008年の北京五輪では塚原直貴、末續慎吾、高平慎士、朝原宣治が4×100メートルリレーで銅メダルを勝ち取った。2018年12月に、金メダルのジャマイカのドーピングが認められたことにより銀メダルに繰り上がっている。リオデジャネイロ五輪でも山縣亮太(やまがた・りょうた)、飯塚翔太、桐生祥秀(きりゅう・よしひで)、ケンブリッジ飛鳥が同種目で銀メダルを獲得して2大会連続で表彰台に立った。50キロ競歩では荒井広宙(ひろおき)が銅メダルを首にかけた。

短距離走は依然としてジャマイカやアメリカなど強豪国との差があることは否めないものの、近年では若手選手の躍進が光っている。その筆頭が、2017年9月に9秒98と日本人初となる9秒台を記録した桐生だ。チームワークを強みに列強国と渡り合ってきた日本だが、個人記録でも「世界の仲間入り」を果たしたことになる。桐生は東京五輪に向けて着々とギアを上げており、リレーでの金、そして日本人としては1932年のロサンゼルス五輪以来となる100メートルでの決勝進出を目標に掲げている。

同年代のライバルたちも黙ってはいない。山縣やケンブリッジ飛鳥、サニブラウン・ハキーム、多田修平などが桐生の記録に続けと闘争心を燃やしている。ケンブリッジ飛鳥はアメリカのアリゾナで修行に励み、サニブラウンは同国のフロリダ大学でトレーニングを積む。着実に陸上界全体の底上げが図られている。

池江璃花子は高校1年生の時にリオデジャネイロ五輪に参加。7種目に出場し「オールラウンダー」ぶりを披露した
池江璃花子は高校1年生の時にリオデジャネイロ五輪に参加。7種目に出場し「オールラウンダー」ぶりを披露した池江璃花子は高校1年生の時にリオデジャネイロ五輪に参加。7種目に出場し「オールラウンダー」ぶりを披露した

「オールラウンダー」の 荻野公介と瀬戸大也、「日本新」連発の池江璃花子

オリンピックの水泳競技は「競泳」「飛び込み」「水球」「アーティスティックスイミング」から構成される。

なかでも競泳では、これまでに数々のメダリストと名場面が誕生してきた。北島康介はアテネ五輪と北京五輪の平泳ぎで日本人唯一となる2種目2連覇を達成するなど、歴史をつくった。リオデジャネイロ五輪では荻野公介が400メートル個人メドレーで同種目では日本人初となる世界一に輝き、200メートル個人メドレーでも銀を勝ち取った。バタフライの坂井聖人も表彰台の2位に立ったほか、競泳日本勢は銅メダルも3個手にした。

従来は一つの種目を極める職人タイプの選手が一般的だったが、近年では荻野や瀬戸大也のようなメドレーに強い「オールラウンダー」が存在感を発揮している。荻野と同い年の良きライバルとして切磋琢磨している瀬戸も複数のレースに出場すると見込まれており、初の金メダルに向け気合は十分だ。

女子では2018年夏に行われたパンパシフィック選手権で100メートルバタフライ、200メートル自由形で日本新記録をたたき出した池江璃花子(りかこ)のさらなるブレイクに期待がかかる。また、同大会で日本女子史上初となるメドレー2冠を達成した大橋悠依は、173センチという長身を生かしたダイナミックな泳ぎが特長だ。

新種目となる男女混合リレーは、男女2名ずつ計4人でチームを組むが、どの泳法をどの順番で誰が泳ぐかは自由に決めていい。各国の戦術が試される形で、白熱した試合展開が見どころとなる。

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