東京五輪のマスコット大使は「ミライトワ」。「ゆるキャラ」は古くから続く日本の伝統

「ミライトワ」はどんな場所にも瞬間移動できる
2020年オリンピックのマスコット「ミライトワ」(左)とパラリンピックのマスコット「ソメイティ」(右)
2020年オリンピックのマスコット「ミライトワ」(左)とパラリンピックのマスコット「ソメイティ」(右)2020年オリンピックのマスコット「ミライトワ」(左)とパラリンピックのマスコット「ソメイティ」(右)

オリンピックを盛り上げるのはアスリートやスポーツファン、ボランティアの人々だけではない。開催地にちなんだマスコットたちも四年に一度の祭典の活気を支えてきた。2020年に向けて活躍中なのは「ミライトワ」と「ソメイティ」。「未来を決めていく」子どもたちが選んだマスコット大使が東京五輪をサポートする。

オリンピックとパラリンピックを支えてきたマスコットたち。左から北京の「フーニウラーラー」、ロンドンの「マンデヴィル」、モスクワの「ミーシャ」、ロンドンの「ウェンロック」、アテネの「アテナ」
オリンピックとパラリンピックを支えてきたマスコットたち。左から北京の「フーニウラーラー」、ロンドンの「マンデヴィル」、モスクワの「ミーシャ」、ロンドンの「ウェンロック」、アテネの「アテナ」オリンピックとパラリンピックを支えてきたマスコットたち。左から北京の「フーニウラーラー」、ロンドンの「マンデヴィル」、モスクワの「ミーシャ」、ロンドンの「ウェンロック」、アテネの「アテナ」

オリンピック初のマスコットは非公式

オリンピックの舞台に初めてマスコットが登場したのは、1968年にフランスのグルノーブルで行われた冬季五輪のこと。フランス語で「直滑降」を意味する「Schuss(シュス)」と呼ばれるキャラクターだ。実は国際オリンピック委員会(以下IOC)の公式マスコットではない。それでも、「シュス」をあしらった商品も販売され、大会を盛り上げた。

オリンピックの歴史上、最初に世界的な人気を得たのは1980年のモスクワ五輪の「ミーシャ」だと言われている。ソビエト連邦の象徴である熊をモチーフにしたもので、五輪のベルトを腰に巻いた可愛らしい小熊だ。生みの親である絵本画家のヴィクトル・チジコフは、他の画家たちとともに100枚ほどのスケッチ画を描いたという。デザインは、国中から集まった約4万5000のアイデアがベースになっている。

「ミーシャ」の採用は1977年8月に決まった。モスクワで行われた展示会で64案のミーシャが紹介されると、当時のIOC会長が絵を見て歩き、チジコフの絵の前で急に立ち止まって「これがいいじゃないか!」と即決したというエピソードが残されている。

「ミーシャ」が示すように、愛らしく優しさを感じさせるマスコットは、子どもたちにオリンピックやスポーツに興味を持ってもらうような役割を担っている。日本では1979年から1980年まで『こぐまのミーシャ』という子ども向けのテレビアニメも放送されている。

ソビエト連邦の象徴である熊をモチーフにした「ミーシャ」(左)。右はモスクワ五輪の開会式の模様
ソビエト連邦の象徴である熊をモチーフにした「ミーシャ」(左)。右はモスクワ五輪の開会式の模様ソビエト連邦の象徴である熊をモチーフにした「ミーシャ」(左)。右はモスクワ五輪の開会式の模様

平安時代には「ゆるキャラ」の原型が誕生

近年で言うと、2012年のロンドン五輪のマスコットは「ウェンロック」という一つ目のキャラクターだった。目は感動的な場面を収めるカメラのレンズとなっている。2016年のリオデジャネイロ五輪では「ヴィニシウス」が活躍。黄色いネコ科の動物のように見えるが、手は青、尻尾は緑、足はオレンジであり、さまざまな歴史を持ち、多民族が共存するブラジルならでは多様性を表現したマスコットとなっている。

ロンドン五輪やリオデジャネイロ五輪の例が示すように、多くのマスコットは擬人化という共通点を持つ。擬人化されたキャラクターは、ほとんどの日本人にとってなじみ深い存在だろう。熊本県PRマスコットキャラクターの「くまモン」や警視庁のマスコットキャラクター「ピーポくん」など、いわゆる「ゆるキャラ」が浸透して久しい。地域や企業、団体のPRを果たす「ゆるいマスコットキャラクター」は数え切れないほど存在する。

日本における「ゆるキャラ」の歴史は長い。古くは平安時代から鎌倉時代に制作されたとされる「鳥獣人物戯画(ちょうじゅうじんぶつげきが)」という絵巻物で、すでにカエルやウサギ、猿が人間のような動きで登場している。江戸時代になると、歌川国芳が「金魚づくし」で金魚たちが酒盛りをする様子を、円山応挙が「狗子図(くしず)」で柔らかい線で4匹の犬を描いている。歌川広重は「童遊ひ見立ほふづき」という作品で、ナス科のほおずきを人に見立て、手をつないで遊ぶ風景を表現した。

歴史が示すように、日本の文化とオリンピックのマスコットとの相性は良好だ。2020年東京五輪でも「ミライトワ」が人気を博すに違いない。

リオデジャネイロのヴィニシウス(左)はゲームやアニメなどのキャラクターからインスピレーションを得たデザイン
リオデジャネイロのヴィニシウス(左)はゲームやアニメなどのキャラクターからインスピレーションを得たデザインリオデジャネイロのヴィニシウス(左)はゲームやアニメなどのキャラクターからインスピレーションを得たデザイン

全国の小学生たちが選んだ「ミライトワ」

2020年のオリンピックの大使を務める「ミライトワ」は「未来+永遠(とわ)」が名前の由来だ。「素晴らしい未来が永遠に続くように」という願いが込められている。パラリンピックをサポートするマスコットの「ソメイティ」は、日本を代表する桜の「ソメイヨシノ」と「非常に力強い」を意味する英語の「so mighty」をかけ合わせている。

「ミライトワ」と「ソメイティ」を選んだのは全国の小学生たちだ。最終候補3案のなかから全国の小学校1万6769校、20万5755学級によるクラス投票により決定した。

マスコットについては2017年8月上旬にデザインを公募。計2042作品から、デザインチェック審査や、マスコット審査会メンバーによる1次審査と2次審査を通し、最終的に3案を選定した。2017年12月から2018年2月にかけて、各小学校でクラスごとに意見交換などを行い、福岡県在住のイラストレーターの谷口亮さんが手がけた「ミライトワ」と「ソメイティ」が10万9041票を得票し、1位に輝いた。

小学生に最終決定権を委ねたのは、すでに述べたとおり可愛らしいマスコットが子どもたちにオリンピックやスポーツに関心を寄せてもらう役割を持っているという理由もあるだろう。さらには、マスコット審査会で副座長を務めたファッションジャーナリストの生駒芳子さんが話したとおり、「未来を決めていくのは子どもたち」という思いも反映されている。

「ミライトワ」と「ソメイティ」を選んだのは全国の小学生たち。10万を超える票を集めた
「ミライトワ」と「ソメイティ」を選んだのは全国の小学生たち。10万を超える票を集めた「ミライトワ」と「ソメイティ」を選んだのは全国の小学生たち。10万を超える票を集めた

「ミライトワ」は大使として精力的に活動

「ミライトワ」と「ソメイティ」は「デジタルの世界に住んでいて、インターネットを使って、デジタル世界と現実の世界を自由に行き来する」という設定だ。

ともに大会エンブレムと同じ藍色の市松模様が体にあしらわれている。コンセプトは「温故知新」で、伝統を重んじる古風な一面と最先端の情報に詳しい感度の高さが特長。「ミライトワ」は正義感が強く、運動神経も抜群で、どんな場所にも瞬間移動できる。「ソメイティ」は超能力を使って石や風と話したり、見るだけで物を動かしたりすることもできる。

両者ともにオリンピックとパラリンピックの大使として精力的な活動を続けている。2018年10月には東京都の利島村立利島小中学校で行われた「利島村大運動会」や「東日本大震災復興支援 JOC『がんばれ!ニッポン!』プロジェクト」に参加。大会期間中の安全を守るセキュリティ対策について教わったり、秋田では小学生とともにトラック競技のスタート姿勢や足の動かし方などを学んだり、名古屋ではフェンシングに挑戦したりと、日本中を巡りながら、2020年の東京五輪に向けた盛り上げを後押ししている。

「未来を決めていく」子どもたちが選んだ「ミライトワ」と「ソメイティ」は、希望に満ちた未来を輝かせる役割を果たそうと奮闘している。2020年の東京五輪では日本人アスリートたちとともに世界中に日本の魅力をアピールしてくれるはずだ。

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