東晟良:キャリア1年半にして国際大会で優勝。姉の莉央とともに東京五輪の表彰台をめざす

日本女子フェンシング界を期待の新星が盛り上げている。2019年4月に日本体育大学体育学部の2年生になる東晟良(あずま・せら)だ。同じく、細くてしなやかな剣を使いこなすフルーレの選手として活躍する姉の莉央(りお)とともに、2020年東京五輪での活躍が期待されている。

2018年12月の全日本選手権で優勝。史上初となる高校生優勝に輝いた2017年大会に続く2連覇だった/時事
2018年12月の全日本選手権で優勝。史上初となる高校生優勝に輝いた2017年大会に続く2連覇だった/時事2018年12月の全日本選手権で優勝。史上初となる高校生優勝に輝いた2017年大会に続く2連覇だった/時事

キャリアスタートから1年半後に国際大会を制覇

日本女子フェンシングの歴史を変えるのは彼女かもしれない。1999年8月20日、和歌山県に生まれたティーンエイジャーは無限の可能性を秘めている。

東晟良(あずま・せら)は大急ぎで表舞台に飛び出した。10歳のころ、1つ年上の姉の莉央(りお)と一緒にフェンシングを始めた。剣を握り始めてたった1年半後の2011年、ドイツで行われた国際ケーニヒ杯の小学生の部で優勝を果たす。決勝で剣を交えたのは姉の莉央だった。

日本とヨーロッパ6カ国の同年代で行われた国際大会を制した後も、細くて柔軟で軽い剣を使いこなすフルーレの選手として、きっちりと結果を残した。2012年に開催された全国少年フェンシング大会の中学生の部では姉と決勝を戦い、準優勝。中学1年生での準優勝は大会最年少記録だった。

中学生時代の2013年にはその才能に注目が集まり、メディアでも取り上げられ始めた。毎日放送の「『アスリート・語り×~新天地の誓い~』2013年ブレイク必須!シンデレラアスリート」やNHK大阪 の「『おはよう関西』シリーズ“今年にかける”」、フジテレビの『ニュースJAPAN&すぽると!』2020TOKYO OLYMPIC COLLECTION」に出演し、日本女子フェンシング界の次代を担うアスリートとしてクローズアップされるようになった。

姉の莉央と元フェンシング選手の母とともに成長

1つ年上の姉の莉央とは、文字どおり切磋琢磨を続けてきた。

2011年の国際ケーニヒ杯や2012年の全国少年フェンシング大会に続き、2015年にルーマニアで行われたカデ国際大会では姉の莉央が優勝を果たし、妹の晟良は3位の成績を残した。2016年の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)では、2人で決勝の舞台に立っている。姉が優勝、妹が準優勝の成績を収め、東姉妹の存在は広く知れ渡るようになった。

2016年の女子フルーレシニアの国内ランキングでは晟良が1位、莉央が2位と姉妹の立場は逆転した。ただし、結果がどうであれ、順位がどうであれ、晟良にとって姉が最大のライバルであることに変わりはない。地元にある和北ジュニアクラブでフェンシングを始めてから、常に一歩先をいくのは姉だった。新しい技を使いこなせるようになるのも、駆け引きがうまくなるのも姉の莉央。1つ年上の姉に負けまいと剣を振り続けてきた。

意識してきたのは姉の存在だけではない。母の影響も小さくなかった。フェンシングを始めるきっかけをつくってくれた母は、信頼できるコーチでもあった。母自身もフェンシングの選手で、インターハイ出場や日本代表に選出された経験を持つ。クラブでの練習が終わった後、自宅でも的確な指導をしてくれた。

母はオリンピック出場を夢見ていたという。だが、事情があって道半ばで諦めざるを得なくなった。その事実を知ってから、晟良は「私がオリンピックに出る」という思いを強めていった。

東晟良の試合中の写真。怯むことなく果敢に仕掛けていく攻撃的なスタイルを特長とする
東晟良の試合中の写真。怯むことなく果敢に仕掛けていく攻撃的なスタイルを特長とする東晟良の試合中の写真。怯むことなく果敢に仕掛けていく攻撃的なスタイルを特長とする

前へ前へと仕掛ける攻撃的なスタイル

姉の莉央、つまり1つ年上のライバルが身近にいたからだろうか、晟良は攻撃的なスタイルを持ち味とする。「姉に負けまい」という思いを持ち続けてきたからだろうか、必勝という気持ちで前へ前へと仕掛けていく。フットワークも巧みで、抑揚のある剣さばきでポイントを稼いでいく。

一方、姉の莉央は対照的だ。守備型の選手と言われており、高い技術をベースに相手の攻撃をかわし、フェイントを活用しながら隙を突いて得点を積み重ねていく。冷静な判断力を持つ技巧派、というのが姉の莉央だ。

晟良がもうワンランク上の選手になるためには、姉の戦い方も参考になるはずだ。持ち前の攻撃性に加え、姉のような守備のうまさや冷静さを身につければ、戦い方に幅が出てくる。勝利の可能性も、ずっと高まってくる。

成長という点で言えば、晟良自身は2017年1月に女子フルーレ代表のヘッドコーチに就任したフランク・ボアダン氏の存在が大きいと感じている。このフランス人コーチから海外の選手との戦い方や、闘争心の保ち方などをたたき込まれたとい

2018年は金、銀、銅のメダルを獲得

東京五輪まで2年に迫った2018年は充実した一年だった。

2018年8月に行われたアジア競技大会の個人フルーレでは銅メダルを獲得。同時に、宮脇花綸(かりん)、辻すみれ、菊池小巻らと臨んだ女子フルーレ団体戦では、6連覇を狙う韓国を準決勝で退け、成長著しい中国を決勝で破り、金メダルを手繰り寄せた。同大会での団体での金メダルは、日本女子フルーレ史上初の快挙だった。

2018年11月にアルジェリアで開催されたフェンシングワールドカップでもしっかりと結果を残した。準決勝でリオデジャネイロ五輪の金メダリスト、インナ・デリグラゾワ(ロシア)に勝利。決勝でリオデジャネイロ五輪の銀メダリストのエリーザ・ディフランチェスカ(イタリア)に敗れたものの、銀メダルとともに確かな手応えを得た。

その勢いは止まることなく、2018年12月の全日本選手権でも優勝を果たしてみせた。史上初となる高校生優勝に輝いた2017年大会に続く2連覇で、強烈な存在感をあらためて感じさせた。2018年時点での女子フルーレシニアの国内ランキングでは、宮脇に次ぐ2位につける。

晟良はかつてメディアの取材に関して、「東京五輪には当然出場したい。ただ、まずはワールドカップでメダルを取ること」と話した。2019年1月にフランスと日本で行われるワールドカップが、2020年に向けた試金石となる。ともにフェンシングに打ち込んできた姉の莉央と一緒に、母が諦めざるを得なかったオリンピックの舞台に立ち、メダルを手にする――それ以上の成功物語は、おそらくない。

2018年のアジア競技大会では女子フルーレ団体の優勝に貢献。左から東晟良、辻すみれ、菊池小巻、宮脇花綸
2018年のアジア競技大会では女子フルーレ団体の優勝に貢献。左から東晟良、辻すみれ、菊池小巻、宮脇花綸2018年のアジア競技大会では女子フルーレ団体の優勝に貢献。左から東晟良、辻すみれ、菊池小巻、宮脇花綸

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