柔道グランドスラム大阪2019レビュー | 女子78キロ超級の曽根輝が柔道五輪代表の第1号に! 男女ともに日本勢がメダルラッシュ

阿部詩のオリンピック内定は2020年2月以降に持ち越し

11月22日から24日の3日間にわたり、柔道のグランドスラム大阪2019が丸善インテックアリーナ大阪で開催された。毎年、世界選手権に次ぐ格付けの舞台として行われるグランドスラム大会の一つだ。2019年8月の世界柔道選手権を制したうえ、今大会でも優勝を決めれば、2020年の東京五輪内定がほぼ決定するため、例年以上に熱戦が繰り広げられた。

7月に19歳になったばかりの素根輝は、今夏の世界選手権に続き女子78キロ超級を制覇。東京五輪行きを内定させた
7月に19歳になったばかりの素根輝は、今夏の世界選手権に続き女子78キロ超級を制覇。東京五輪行きを内定させた7月に19歳になったばかりの素根輝は、今夏の世界選手権に続き女子78キロ超級を制覇。東京五輪行きを内定させた

リオ五輪の金メダリスト、ベイカー茉秋は3回戦敗退

初日に行われた男子60キロ級では、古賀玄暉が2回戦で敗退。青木大は準決勝で高藤直寿に敗れ、決勝戦は高藤と永山竜樹(りゅうじゅ)との対戦となった。延長戦の末に頂点に立ったのは2016年のリオ五輪で銅メダルを獲得した高藤。2年ぶり5度目の優勝を果たし、五輪代表入りに近づいた。

66キロ級では2017年、2018年と2年連続で世界一に輝いた阿部一二三(ひふみ)に注目が集まった。決勝の相手は、これまで3連敗を喫するなど苦手とする丸山城志郎となった。しかし、丸山の内股に支え釣り込み足を合わせて技ありを奪った阿部が、延長戦にもつれ込んだ7分27秒の激闘を制し、2年ぶり4度目の頂点に立った。

2日目の73キロ級は海老沼匡(まさし)の「男泣き」が観客の心をつかんだ。これまでのオリンピックでは66キロ級で2つの銅メダルを手にしてきたが、2017年夏に階級変更を決断。今大会は決勝戦で2017年世界選手権王者の橋本壮市を下し、見事10年ぶりの大会Vを成し遂げた。今大会を故障のため欠場した73キロ級の絶対王者・大野将平にしっかりと食らいつくという執念が見えた優勝だった。

81キロ級決勝は、東京五輪行きの切符を争う永瀬貴規と藤原崇太郎との直接対決に。リオ五輪で銅メダルを獲得した永瀬は2017年の右ひざの手術以降は苦しい時期が続いていたが、今回は見事に勝利をもぎ取り、代表の井上康生監督をして「(代表入りは)永瀬がリードしている」と言わしめた。

90キロ級では波乱が起こった。リオ五輪で世界一の座をつかんだベイカー茉秋(ましゅう)が、まさかの3回戦敗退。日本勢は決勝に進むことができず、優勝に輝いたのはベイカーを敗退に追い込んだベカ・グビニアシビリ(ジョージア)だった。

100キロ級ではリオ五輪で世界3位となったベテランの羽賀龍之介が、リオ五輪銀メダリストのエルマール・ガシモフ(アゼルバイジャン)を決勝で下して頂点に立っている。100キロ超級では太田彪雅(ひょうが)が決勝まで駒を進めたが、金メダルを首にかけたのはロシアのイナル・タソエフ(ロシア)だった。

阿部一二三(左から2人目)は丸山城志郎(左端)を決勝で下し金メダルを獲得した。同66キロ級では相田勇司(右から2人目)と西山祐貴(右端)が銅メダル
阿部一二三(左から2人目)は丸山城志郎(左端)を決勝で下し金メダルを獲得した。同66キロ級では相田勇司(右から2人目)と西山祐貴(右端)が銅メダル阿部一二三(左から2人目)は丸山城志郎(左端)を決勝で下し金メダルを獲得した。同66キロ級では相田勇司(右から2人目)と西山祐貴(右端)が銅メダル

優勝候補の本命とされていた阿部詩は金メダルを逃す

女子の48キロ級は、直近の世界選手権で銀メダルを獲得した渡名喜風南(となき・ふうな)が存在感を示した。準決勝ではリオ五輪3位の近藤亜美に10分以上にわたる熱戦の末に勝利し、決勝ではフリア・フィゲロア(スペイン)を一本勝ちで見事撃破。東京五輪に向けて良好な視界を保っている。

タレント豊富で、熾烈な戦いが繰り広げられる52キロ級では、阿部一二三の妹である19歳の阿部詩(うた)が決勝まで駒を進めたものの、世界ランク1位に君臨するアマンディーヌ・ブシャール(フランス)に延長で技ありを取られて敗戦。8月の世界選手権で優勝し、あと一歩だった東京五輪内定はならず。準決勝ではライバルの志々目愛を撃破し、決勝までオール一本勝ちと好調ぶりを見せつけた阿部だったが、代表入りの結論は2020年2月以降の大会に持ち越された。

57キロ級は玉置桃が準決勝で、2019年の世界選手権で銀メダルを獲得したばかりの芳田司を下すと、決勝では連珍羚(レン・ツェンリン/チャイニーズタイペイ)との戦いを一本勝ちで制して優勝。一方の芳田は3位決定戦でも敗れ、悔しい5位となった。

63キロ級でも日本人対決が激しさを極めた。土井雅子が準決勝で今夏の世界選手権2位の田代未来(みく)を下して勝ち上がると、決勝では幸田奈々に横四方固めで一本勝ちし、2連覇を達成。田代と鍋倉那美は3位に入り、すべてのメダルを日本勢が手にした。

70キロ級では元世界女王の新井千鶴が外国人選手から研究されつくし、苦しい戦いを強いられた。準々決勝で敗退した新井だったが、3位決定戦では勝利をもぎ取り、増地克之監督からは「五輪に近い存在」と評価された。この階級を制したのは決勝でも見事な一本勝ちを披露した大野陽子で、2年ぶり2度目の優勝となった。

また、梅木真美は78キロ級で、今夏の世界選手権2位の濵田尚里(しょうり)を下して金メダルを獲得している。一本で勝負をつけ、逆転での代表入りに向けて前進した。

決勝までオール一本勝ちで進んだ阿部詩だが、兄の優勝から約20分後に行われた試合に敗れ無念の準優勝に終わった
決勝までオール一本勝ちで進んだ阿部詩だが、兄の優勝から約20分後に行われた試合に敗れ無念の準優勝に終わった決勝までオール一本勝ちで進んだ阿部詩だが、兄の優勝から約20分後に行われた試合に敗れ無念の準優勝に終わった

世界選手権とダブル優勝の素根輝が東京五輪出場内定

全日本柔道連盟は、今夏の世界選手権の覇者がグランドスラム大阪でも優勝し、なおかつ強化委員会で出席者の3分の2以上が賛成すれば東京五輪代表に内定するという選考基準を設定していた。そしてその座を見事に射止めたのが、女子78キロ超級の素根輝(そね・あきら)だ。

決勝では2012年のロンドン五輪金メダリストであるイダリス・オルティス(キューバ)と対戦。延長の末、大内刈りで技ありを奪って、表彰台の頂点に立った。素根は今春、環太平洋大学に入学したばかり。2000年7月9日生まれの19歳で、162センチと小柄ながら、持ち前の持久力とテクニックで結果を出し続けている。

男女を通じて日本柔道界の東京五輪内定第1号となった素根は、2020年の栄光を見据えている。試合後は内定の報告に安堵しながらも、「ここで終わりじゃない。支えてくれた方のためにも、東京五輪で絶対に金メダルを取る」と決意を新たにした。

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