注目記事 | アーティスティックスイミング

水中の芸術では「シンデレラガール」の吉田萌に大きな期待

「マーメイドジャパン」は新たな強化策で迫力を増す

アーティスティックスイミングは、華麗に水面を舞うだけでなく、ダイナミックなジャンプやリフトをこなす力強さも求められるスポーツだ。日本水泳連盟の強化プランに基づいて選ばれた日本代表候補選手たちは、2020年の栄光をめざして切磋琢磨を続けている。

日本チームは「スケールの大きさ、ダイナミックさを有するチーム編成」などの強化策に取り組む

華やかな水中競技の起源は男子スポーツ

「アーティスティックスイミング」と聞いて、聞きなれないスポーツだと感じる人も多いかもしれない。かつては「シンクロナイズドスイミング」と呼ばれていた競技のことだ。曲に合わせてプールのなかでさまざまな動きや演技を披露し、技の完成度や表現力、構成などの得点を競う。2017年7月、国際水泳連盟が英語で「同調した」という意味の「シンクロナイズド」から「芸術的な」という意味の「アーティスティック」に名称を変更。ソロや混合種目も含め、同調性に加え芸術性が評価の大きな要素となることが決まった。

オリンピックでは、アーティスティックスイミングは女子のみの種目となっている。しかし、競技の起源を辿ると、最も古い大会が開催されたとされる1892年のイギリスでは男性が中心の競技だった。男性が行うスポーツとして「スタントスイミング」と呼ばれていた時期を経て、その後、「シンクロナイズドスイミング」として発展。1984年のロサンゼルス五輪で正式種目に採用された。次第にリフトやジャンプといったダイナミックな技も取り入れられるようになり、演技の幅は広がりを見せている。

東京五輪は開会式の10日後から

2020年の東京五輪で実施されるアーティスティックスイミングは、2人による「デュエット」と8人による「チーム」の2種目。それぞれ2分20秒から50秒の曲に決まった8つの動きを入れる「テクニカルルーティン」と、3分から4分の曲のなかで自由に技を見せる「フリールーティン」が行われる。

採点は1組5人から7人の審判員が2組で行う。「テクニカルルーティン」では、規定の技の完成度や、2人の演技の同調性が採点基準となる。一方、「フリールーティン」では技の完成度や難易度に加え、演技の構成や音楽の解釈、表現力や見栄えの良さなども採点される。各国の水着のデザインや音楽、演技構成にはその国の文化や民族性が表れており、チームごとに個性が溢れる点も見ごたえの一つだ。

東京五輪では、競泳の全種目が終わったあと、開会式から10日後の2020年8月3日(月)から8日(土)にかけて開催。競泳や飛び込みと同じ、2019年12月完成予定の「東京アクアティクスセンター」で行われる予定となっている。

日本は開催国枠として2種目とも1枠ずつ出場権を獲得している。日本水泳連盟は、アーティスティックスイミングにおけるオリンピックの出場資格を競技開催年の12月31日に15歳以上と定めており、対象年齢の有力選手たちが自国開催の五輪出場をめざし、日々厳しい練習を重ねている。

吉田萌は168センチの長身。スケールの大きさとダイナミックさが魅力だ

乾&吉田ペアが日本勢初の金メダルを狙う

2017年9月19日、日本水泳連盟シンクロ委員会は、2020年に向けた新たな選手強化策を発表した。毎年行っていた代表選手の選考会を中止。同委員会が指定した代表候補選手のなかから、大会ごとに代表選手を選定する仕組みに切り替えた。

その背景には、2017年にブダペストで開催された世界選手権において、9種目で銅メダル2個に終わったことがある。リオデジャネイロ五輪ではデュエット、チームの両種目で、ロシアと中国の2強に次ぐ銅メダルを獲得しているが、世界選手権では上位国との差を詰めるどころか、ブダペストではウクライナの台頭を許してしまった。

そこで日本水泳連盟シンクロ委員会は、東京五輪での銀メダル以上の獲得を目標に設定し、約3年にわたる長期強化プランを打ち立てた。海外選手との体格差から、演技のダイナミックさで見劣りしていた点を改善すべく、「スケールの大きさ、ダイナミックさを有するチーム編成」「身体改造と基礎能力の向上」「アクロバティック強化」などの強化方針を掲げた。

2018年アジア競技大会のデュエットは、乾友紀子・吉田萌(めぐむ)という新たなペアで臨んだ。オリンピックに2大会連続で出場している日本のエース乾の新たなパートナーとして抜擢された吉田は、168センチの長身。170センチの乾とのペアは欧米諸国に体格差で大きく劣ることはない。ペア結成から約2カ月で出場したアジア競技大会では、中国に次ぐ銀メダルを獲得した。

1984年のロサンゼルス五輪から、2012年のロンドン五輪を除いた全大会でメダルを獲得し続けている日本だが、金メダルだけは過去一度も手にしていない。2001年の世界選手権で金メダリストとなった立花美哉&武田美保ペアも、2004年のアテネ五輪は惜しくも銀メダルに終わっている。歴史を変えるべく臨む東京五輪。そのカギを握るのは、2017年秋の代表候補入りからシンデレラストーリーを歩み続ける吉田の成長だろう。

ロシアのスベトラーナ・コレスニチェンコとアレクサンドラ・パツケビッチはメダル候補の筆頭

ロシアと中国の2強崩しを狙う各国

世界に目を向けると、近年はロシアと中国の2強を他国が追う展開となっている。リオデジャネイロ五輪はデュエット、チームともにロシアが金、中国が銀、日本が銅メダルだった。

ロシアは、オリンピックで通算5個の金メダル獲得と栄誉をもたらしたナタリア・イーシェンコが2017年4月に現役引退を発表。しかし、それでもなお絶対的女王の座は揺るがない。2017年の世界選手権では、スベトラーナ・コレスニチェンコとアレクサンドラ・パツケビッチのデュエットとチームで4冠を果たし、表彰台の中央をキープしている。

自国開催の2008年北京五輪に際して強化を推し進めた中国も成長を続けている。2017年の世界選手権で銀、2018年のアジア競技大会で金メダルを手にした蔣婷婷(ジャン ・ティンティン)と蔣文文(ジャン ・ウェンウェン)双子姉妹は、かつて現日本代表ヘッドコーチの井村雅代の指導を受け、北京五輪で4位入賞という過去を持つ。

さらに、2012年のロンドン五輪でデュエット、チームともに表彰台に上ったスペインも実力を備えており、2017年の世界選手権の複数種目で表彰台に割って入ったウクライナの存在も脅威だろう。

「アーティスティックスイミング」に名称が変わってから初のオリンピックとなる東京五輪。2強を崩しを本気で狙う「マーメイドジャパン」の華麗で力強い演技に注目だ。

中国の蔣姉妹は双子ということもあり、絶妙なコンビネーションを見せる