清水希容:強く、美しい空手家が目指す、東京五輪での世界一

琉球王朝時代の沖縄から発祥した武術の空手は、1920年代から日本全国に広まり、第二次世界大戦以降は世界へと広まった。日本人にも馴染み深いこの武術が、2020年東京五輪の新種目として正式に追加された。昨今、多くの競技でメダル獲得が期待される有望な日本人選手が増えている。その中でも、ひときわ輝きを放つ選手がいる。それが清水希容(きよう)だ。国内では敵なしとまで言われる彼女は、昨年12月の全日本選手権で大会6連覇を達成した。その強さはお墨付きだが、CMに起用されるなど、メディアから注目されるもうひとつの理由は、彼女の美貌のせいだろう。「空手界の綾瀬はるか」との呼び声もある。強さと美しさを兼ね備えた唯一無二の存在なのだ。

清水は競技に入るとハッとするような凛々しい顔つきを見せる
清水は競技に入るとハッとするような凛々しい顔つきを見せる清水は競技に入るとハッとするような凛々しい顔つきを見せる

強いうえに“かわいすぎる空手家”

そもそも空手には、技を繰り出し、相手と戦う「組手」と、相手がいることを仮想して演武を行う「形」のふたつがある。清水希容は後者、「形」の選手だ。形では、攻撃や防御の技を組み合わせた演武で、繰り出す技の正確性、力強さ、スピードなどのキレを競い合い、採点で勝敗が決まる。

“かわいすぎる空手家”とメディアを賑わせてきた清水だが、いざ競技に入るとハッとするような凛々しい顔つきに変わる。彼女の演武の特徴は、強弱をつけた力強さとスピード感だろう。その堂々たる姿は見るものの目を奪う。自身が苦手とする部分は、「重厚感や見せ方など緩急のつけ方だ」と語る清水。苦手な部分を克服するために鍛錬を重ねる彼女は、今日も五輪へ向けて邁進中だ。

希望の目標を実現していった空手少女

1993年12月7日、清水は大阪府に生まれた。希容(きよう)という珍しい名前には「自分が希望した目標や夢を実現し、器の大きい人間になれるように」という思いが込められているという。兄が通う道場を訪れたことがきっかけで、小学3年生で空手競技を始めた。東大阪大敬愛高校進学後は、高校3年生でインターハイ優勝。関西大学に進学し、2014年FISU 世界大学空手道選手権で初出場ながら優勝を果たした。翌2015年 AKFアジアシニア空手道選手権でも金メダルを獲得するなど、 “絶対女王”の地位を築いてきた。

当時はまだ、空手とオリンピックは遠い存在だった。だから、清水も五輪出場を目指していたわけではなかった。ところが、2016年8月に東京五輪での空手種目実施が決定。世界中が注目する晴れ舞台で、自分の空手を披露できるかもしれないという事実に、清水は身が震えたという。そして、社会人となり、ミキハウスに所属すると、さまざまな大会でタイトルを総舐めにしていく。



技の正確性、力強さ、スピードなどのキレを競い合う「形」
技の正確性、力強さ、スピードなどのキレを競い合う「形」技の正確性、力強さ、スピードなどのキレを競い合う「形」

初めての黒星。その悔しさをバネに

しかし、絶対女王の清水が2018年11月、マドリードで開催された世界選手権で負けた。女子個人形決勝で、地元スペインのサンチェス選手に2−3で破れ、惜しくも世界選手権3連覇の記録を逃したのだ。

「もっと強くなって帰ってくる」これは敗戦後のインタビューで語った清水の言葉だ。勝ち続けなければならないというプレッシャーは、私たちの想像をはるかに超えたものだろう。しかし、清水は自分の弱さや勝つことへの重圧を克服し、2018年12月の全日本選手権で見事に優勝し、6連勝という大会記録を更新した。そして、約1年後に迫った東京五輪を見据えている。狙うのはもちろん金メダルだ

東京五輪の新ルールには「呼吸法」で対応

6連覇を達成した全日本選手権を圧巻の演舞で優勝した清水。ただ、常に完璧を求めるがゆえに、自身の技には納得がいかなかったらしい。今、課題としているのは、東京五輪で導入される新ルールへの対応だ。これまでは審判5人の旗判定が適用されていたが、新ルールでは、勝敗基準をわかりやすくする狙いもあり、技術点や出来栄えを判断する競技点で評価する採点方式に変更される。この新ルールに適応するためには、「技に合った呼吸法」が鍵になるという。改善することができれば、自身の持ち味が多いに発揮できる。もっと力強く、シンプルに技を出していくために、彼女は修行に励んでいる。

東京五輪に向けて導入される新ルールへの対応が求められる
東京五輪に向けて導入される新ルールへの対応が求められる東京五輪に向けて導入される新ルールへの対応が求められる

「敵は自分自身」と、向上心を忘れない絶対女王の品格

空手競技では、スペインやフランスなどヨーロッパの選手などが、着々と実力を伸ばしてきている。雑さや荒さはあるものの、彼らの思い切りの良さには、日本人選手も学ぶ面があると、清水は語っている。

「絶対女王の清水を超える」という目標を持つ海外選手はたくさんいる。一方の受けて立つ清水は、これまで勝ち続けてきただけに、目標が見えないことも少なくないようだ。彼女の敵は “自分”自身であり、自分を超えることが、メダル獲得の近道なのだ。

「今の足りないものは何か」を常に考える清水は、男子の技も見て「盗む」こともあるという。常に向上心を忘れない。強さと美しさだけではない絶対女王の品格。清水はどんなときも自分と向き合い、自分を超えるために高みを目指し続けている。

世界一になるための一歩

清水が所属するミキハウスの新春祝賀会が2019年1月11日、大阪市内のホテルで行われた。白い振袖をまとった清水は、「東京五輪で必ず世界一を」と力強く誓った。

東京五輪で金メダル獲得というプレッシャーは、「どうすれば五輪までにいい形を打てるのか」という考えに変化し、どれだけ楽しく、自分自身の良さを出して演武ができるかを考えているという。遠い目標はプレッシャーになるので、「目の前にある課題をどのように克服すればいいのかを大事に取り組んでいる」のだそうだ。

2019年1月25日から開催されるプレミアリーグ・パリ大会で、初めて新ルールが適用される。新ルールに適応するために、清水が鍛錬してきた「呼吸法」はうまく機能するのだろうか。強と弱、そして静と動。彼女の特徴であるメリハリの効いた演武を見せられるだろうか。ここでの結果が、東京五輪での金メダル獲得へ向けた大事な一歩になる。2019年は12の国際大会出場を予定しているという。清水希容にとって大切な1年が始まった。

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