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瀬戸大也:東京五輪は「日本で、日本人同士が金メダルを争う戦い」になるか

瀬戸大也

ライバルを追いかけ、超えていく

2016年リオ五輪の400メートル個人メドレーで銅メダルを獲得し、同種目で金メダルの萩野公介とともにダブル表彰台を成し遂げた瀬戸大也。萩野は少年時代からのライバルでもあり、ともに日本の男子競泳界に並び立つ存在として世界に知られている。リオ五輪後も持ち前の勝負強さと、トレーニングへのストイックさで、力を増してきた。2020年東京五輪は、世界の強豪を相手にした戦いというよりも、萩野と金メダルを争う「地元日本での、日本人同士の戦い」になるのかもしれない。

個人メドレーとバタフライで世界に存在感

瀬戸が初出場にして、400メートル個人メドレーで、銅メダルを獲得した2016年リオ五輪。その前後2013~2018年のオリンピック以外の主要な国際大会で手にしたメダルは、世界選手権で4個(金2銅2)、パンパシフィック水泳選手権で4個(金2銅2)、アジア競技大会5個(金4銅1)、世界短水路選手権で10個(金3銀3銅4)と、圧倒的な戦績を残している。

瀬戸は個人メドレーでの活躍もさることながら、バタフライでの注目度が高い。特に2014年はその印象を強く知らしめることになった。アジア大会、日本選手権、ジャパンオープン、パンパシフィック選手権大会といった、国内外の主要大会の200メートルバタフライで、金メダルを総ナメする。2018年8月に行われたパンパシフィック選手権でも200メートルバタフライで金、続いて行われたアジア大会でも同種目で金を取った。

パンパシフィック水泳選手権2018 200mバタフライで金メダルを獲得

ライバルの奮闘で立ち上がる

1994年5月21日生まれ、埼玉県毛呂山町出身。5歳から地元のスクールで水泳を始め、小学校に入学するころには4つの泳法をマスターしていたという。全国大会に出場し、個人メドレー・バタフライ・自由形・平泳ぎ・背泳ぎと、すべての泳法で優勝を経験するという金字塔を小学生で打ち立ててしまう。

萩野とはこのころからライバル関係にあった。初めて泳ぎを見たときは「雲の上の存在」と圧倒されたものの、すぐに「絶対に勝ってやる」と闘志に変えた。中学2年で臨んだJOC(ジュニアオリンピック)では、400メートル個人メドレーで、中学新記録を打ち立て優勝。初めて萩野に勝った。この後は、勝ったり負けたりを繰り返している。

もとよりポジティブな性格だが、挫折を味わうことも。2012年ロンドン五輪の代表選考を兼ねた日本選手権では、周囲の期待をよそに、まさかの敗北を喫する。一方の萩野はロンドン五輪出場を決め、ショックで練習に身が入らなくなってしまった。そんなとき、瀬戸を奮い立たせたのは、ほかでもない萩野だった。400メートル個人メドレーで、萩野が銅メダルを獲得するのを見てこう思ったそうだ。「日本人でもメドレーでメダルが取れることをライバルが教えてくれた。こんなところで落ち込んでいる場合じゃない」と。

悔しさを力に変える

自分が立てなかった舞台で、ライバルが活躍するという、ともすれば嫉妬で、やさぐれかねないような状況をも力に変えた。それが瀬戸の強さなのだろう。その年に行われた国民体育大会で4冠を達成、さらに年末にトルコ・イスタンブールで行われた世界短水路選手権の400メートル個人メドレーで日本新記録を叩き出して優勝。200メートル個人メドレーでは準優勝だったが、タイムは同じく日本新記録だった。

早稲田大学進学後、2013年スペイン・バルセロナで行われた世界水泳選手権大会の400メートル個人メドレーで萩野を破り、同種目では日本人初となる世界水泳選手権大会の金メダルを手にすることとなった。 さらに2015年の世界水泳選手権大会でも、400メートル個人メドレーで優勝し、悲願の2016年リオ五輪への切符を手にした。

そして、2016年リオ五輪決勝という大舞台で、再びライバルとの対決を迎える。400メートル個人メドレーで萩野は金メダル、瀬戸自身は銅メダルを獲得し、60年ぶりに競泳でのダブル表彰台となった。ダブル表彰台は日本水泳にとってめでたい快挙だが、瀬戸個人にとってはライバルに敗北を喫したことを意味する。しかし、ロンドン五輪のときに味わったような失意の様子も見せず、世界の大会に積極的に出場するとともに、さまざまなトレーニングに打ち込んできた。メンタルのタフさも成長しているのだろう。

幼少期からライバルの萩野公介(右)と瀬戸大也(左)

「パパでも金」に向かって

リオ五輪後は公私ともに大きな変化があった。2017年に早稲田大学を卒業し、ANAと所属契約。さらに2017年には元飛び込み選手の馬淵優佳と入籍、水泳選手同士のビッグカップルとなった。2018年には第一子となる女児が誕生。8月のパンパシ200メートルバタフライで連覇を達成したのは、出産にも立ち会い、「頑張る姿を見せてもらったので、次は自分の番」という強い意気込みがあったからだ。

元柔道選手の谷亮子は「田村(旧姓)でも金、谷でも金、ママでも金」という言葉を残した。果たして瀬戸は東京五輪で「パパでも金」を成し遂げられるか。また、オリンピックの舞台で敗れたライバル萩野に、同じ舞台で借りを返せるのか。彼の活躍から目が離せない。