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田中亮明:夢に見たオリンピックの舞台に「先生ボクサー」として立つ【アスリートの原点】

2015年には国際大会で金メダルを獲得

文: オリンピックチャンネル編集部 ·

ボクサーとしては弟・恒成(こうせい)の方が知名度は高いかもしれない。プロとして3階級で世界王者に輝いている。一方、兄・亮明(りょうめい)は我が道を歩んできた。アマチュアボクサーにこだわってきたのは、空手からボクシングに転向した頃からの夢があるからだ。

右ジャブを効果的に使う左利きのボクサー。国体で連覇を重ねるなど、しっかりと結果を残してきた

空手からボクシングに転向

中京高校(岐阜県)の通信制課程で社会科の教諭を務める。文武両道を地で行く田中亮明は岐阜県多治見市の出身だ。1993年10月13日に生まれ、同市の市之倉町で育った。父は格闘家。柔道やアームレスリングをたしなんでいた。

亮明が5歳、恒成が3歳の時、自分たちの意思に関係なく父に空手を始めさせられた。当時は空手の練習が嫌で嫌でたまらなかった。友達の家にいても、父が車で迎えに来た。渋々1時間30分の練習に取り組んだ後は、強制的に居残り練習の日々。当時は逃げ出したいほど後ろ向きだったが、振り返ればこの時期に忍耐力がついたと感じていると話す。

空手からボクシングに転向したのは、弟・恒成の影響だ。自身が中学生になった時、弟が「ボクシングをやりたい」と言い、グローブをつけるようになった。キャリアをスタートさせたのは多治見市にあるボクシングジム・イトカワ。運営する糸川保二郎氏は、もともとは高校で教師をしながらボクシング部の顧問を務めていた。ボクシングに対して強い情熱を持つ指導者とめぐり合えたことは、幸運だった。

中学卒業後は中京高校に進学。スポーツにも力を入れる同校で、ボクシング部へ入部。元プロボクサーで、東洋太平洋スーパーフライ級王者に輝いた経歴を持つ石原英康先生から本格的な指導を受けることができた。

2015年、リオデジャネイロ五輪のプレ大会にあたるAquece リオ 国際ボクシングトーナメントで優勝を果たしている

井上尚弥に4戦4敗を喫した高校時代

高校時代、乗り越えられない壁があった。同学年の井上尚弥に、どうしても勝てなかった。のちに世界王者となる井上とは4戦4敗。それでも、同世代では屈指のボクサーとして知られた。ボクシング部キャプテンを務めた3年次には、弟・恒成も中京高校に入学。同じ部活動で汗を流している。

その後、同じボクシングを続けながらも、兄弟の道は異なっていく。兄・亮明は駒澤大学ボクシング部で腕を磨いた。国体4連覇や全日本ボクシング選手権フライ級の優勝、さらには2015年、リオデジャネイロ五輪のプレ大会にあたるAquece リオ 国際ボクシングトーナメントで金メダルを獲得した。一方の弟は高校時代にプロテストに合格。中京大学に通うかたわら、プロボクサーとして活躍し、2015年には国内最速プロ5戦目で世界王者に輝いた。

兄・亮明は、プロとして躍動する弟を見て焦ることはない。目指すゴールが異なるからだ。自身はボクシングを始めた頃から「オリンピックが目標」と言い続け、弟は「世界チャンピオンになりたい」と繰り返していた。駒澤大学を卒業後、教職の道を選んだ背景にはアマチュアボクサーとして頂点を極めたいという思いもあった。

その実力を認められ、2020年3月にTokyo 2020(東京五輪)出場が内定した。2020年10月に27歳になった「先生ボクサー」は、東京五輪を「アマチュア最後の試合」と位置づける。終幕を栄光で飾るべく、少年時代からの夢の舞台、オリンピックに臨む。

選手プロフィール

  • 田中亮明(たなか・りょうめい)
  • ボクシング選手 フライ級
  • 生年月日:1993年10月13日
  • 出身地:岐阜県多治見市
  • 身長/体重:170センチ/52キロ
  • 出身校:中京高(岐阜)→駒澤大(東京)
  • 所属:中京高等学校
  • オリンピックの経験:なし
  • ツイッター(Twitter):田中亮明 (@rmabc1013)

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